雨の日 【雨宿り】
その日の学校の帰りは土砂降りだった、あまりにも急で傘も持ってはいなかった。
「ねぇ、あそこのバス停で雨宿りしてこうよ」
一緒に帰路にたっている、身なりのいい女の子が言う。
「うん、そうしようか」
僕はそう言って2人が座って丁度いい程の屋根の付いたバス停のベンチにその女の子と座る。
「この村、本当に何も無い、やになっちゃうわ」
「しょうがないよ、バスも1日二便だけ、隣町に続く道路は1本だけ、しかも2時間もかかる、そんな田舎だしね」
「はぁ、都会に行ってみたいわ、確か高さ600mを超える建物とか可愛くて美味しい食べ物もいっぱいあるみたいよ」
「確かに、こんな田舎より都会の方がいいよね、、、、、、でも君はここに居た方が何かと不自由は無いと思うけど、」
「ねぇ、それ、言わない約束よね」
「ご、ごめん」
「まぁいいわ、今回だけ許してあげる、その代わり一つだけ言うこと聞いてちょうだい」
「わかった」
「私とあと1時間後に来るバスに乗って、、、駆け落ちしない?」
「、、、、なんか、、あった?駆け落ちだなんて、、」
「私の家が裕福でそれなりに格式があるのは知ってるでしょ?」
「うん、そりゃ君の家の武家屋敷、見せてもらったもん、すごく豪華だった」
「私はあんな家大っ嫌いだけどね、、、、それでね、、この前ね、縁談があってね、、お父さんが勝手にOKしちゃってね、私は嫌だって、何回も言ったの、でもどうしてもダメだって、相手は凄い家系の人なんだぞって、、、、、私は、嫌だ、あの家の道具として使われるのも、好きでも無い人と結婚するのも、、、嫌、、、、ねぇ、お願い、私はあなたが好き、、、一緒に駆け落ちして」
「、、僕も君が好きだ、君が他の人に取られるくらいなら駆け落ちだってなんだってしてやるよ、」
「、、ありがとう、、好きだよ」
「あぁ、僕も好きだ」
その言葉と共に2人の影が重なっていく。
「ふふ、、私のファーストキス、好きな人にあげれてよかった」
「、、ぼ、僕もは、初めてで、、嬉しかった」
「あっ、顔赤くなってる、ふふ、」
「わ、悪いかよ」
「いや、同じ気持ちなんだなって、思ってさ」
「そ、そうかよ」
「バスに乗ったらどうしよっか?」
「都会に行くんじゃないのか?」
「そこまで行くお金ありませーん、せいぜい2つ先の町に行くのが精一杯かな」
「そうか、僕もそこまでお金を持ってるわけじゃないしな」
「そんなに心配しなくても大丈夫だよ、仕事してお金稼いで、それから都会に行けばいいんだから」
「でもまだ僕ら学生だよ、雇ってくれるかな」
「まぁ大丈夫でしょ、無理だったら野宿だね、私やった事ないから楽しみだな〜」
「野宿って、そんなに楽しいものじゃないと思うぞ」
「ふふん、君といれば楽しくなりそうって意味だよ」
「、、、、」
「黙り込んじゃった、」
「、、でも、やっぱり野宿はだめだ、、僕が君が野宿しないようにお金を稼ぐよ」
「、、、それは不意打ちすぎるよ」
「ご、ごめん」
「雨、強くなって来たね」
「だな」
「バス、まだかな〜」
「焦らなくても、あと少し待てば来るよ」
「ふふ、楽しみだね、駆け落ち」
「そうだね、、楽しみだね」
その日雨は止むことを知らぬかのように振り続け、観測史上最大の降水量を誇った。
そしてある田舎の村に続くひとつしかない道路が土砂崩れにより通行止めとなったという。