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008 若頭を討ち取る、最高のセクシー下着を探しに行こう!

 翌日。私は三成組長(イチ君)に土下座をしていた。この土下座のシーンより、美緒の任侠物語がスタートだ。


「中松さんの弱み、教えて下さい! 何でもやりますから!!」


 自宅から持ち出してきた、お姉ちゃんの秘蔵写真(高校生の時のセーラー服)をチラつかせ、三成組長に囁いた。「私の望みを叶えて下されば、この写真は貴方のものですよ、うっしっし」


「美緒。任侠映画の見過ぎではないのか? うっしっしという笑い方をする女性を私は初めて見たぞ。それに、土下座は止めろ」


 組長の美しい顔があきれ顔になっている。土下座で床にへばりついていた私を起こしてくれた。


「もう、何でもいいから教えて! この写真欲しくないの?」


「欲しい! 金なら幾らでも出す」


「いや、そういう取引じゃなくて。お金は要らないから、中松さんの弱点教えて!」


「私が美緒に聞きたいくらいだ。中松に弱点なんかあるのか?」


 あ“―、使えねーヤツ!

 思わず組長を心の中で罵った。

 

「はー。もう、組長の役立たず」


 思うだけじゃなくて、本音が声に出てしまった。私は素直なのだ。思わず組長を睨んでしまう始末。


「朝から二人きりで話がしたいと私を呼びつけておいて、役立たずとは何事だ。しかも組長なんて・・・・面白いな」


 イチ君はまんざらでもなさそうだ。


「仮にも組長(雇い主)なら、舎弟(中松さん)の弱点くらい知っておきなさいよ!」


「中松は特別だ。隙を見せない。舎弟というより、参謀クラス――いや、私の次の権力者になるわけだから、美緒の言う任侠世界で言うならば、若頭(実質No2)クラスだな。組長付きとかそういう方が執事という立ち位置は近いかもしれないが、実権があるから若頭と言っても過言ではない。そんな男が、弱点を人に晒すと思うか?」


 確かに・・・・それなら納得。組長が弱点知らなくても当然じゃん。

 でも、だったらどうすればいいの!?

 寝首をかくわけにはいかないし。


 

「でも! 中松さん、昨日私に言ったもん! セクシーな下着の方が好きだから、色気のない下着を着けるなって! ヒドくない? こんな事いう若頭、組長の教育が悪すぎるよ!! 組長の力で何とかしてっ」


 もう、こーなりゃゴリ押しで組長に責任を取らせよう。

 若頭の責任は、組長にアリ。


「中松がそんな事を言ったのか!?」


 私の言葉を聞いて、何故か組長の目が輝いた。「本当なのか?」


「ウソじゃないわよ。だから弱点無いかって聞いてんの!」


 わかんねーヤツだなコラ、って心の中で付け足しておいた。


「そんな面白い事を言われたのなら、何故それを先に言わないのだ!」組長は嬉々としてが勢いよく立ち上がった。「よーし。そうと決まれば、百貨店へ行こう! 中松をノックアウトできる(討ち取る)、最高のセクシー下着を探しに行こう!!」


「百貨店で売っている高価な下着なんかおいそれと買えないよ。・・・・そんなお金、持ってないし」


「安心しろ」三成組長が不敵な顔で笑った。「お前が持っている伊織の写真と交換だ。私が中松を瞬殺する、セクシー下着を美緒に用意してやろうじゃないか。――若頭の暴挙、組長として責任取ってやる」



 

 結果、組長の一声で本日のスケジュールが決まった。




 土曜日だからという理由を付け、朝の修業はお休みして、銀座のデパートへ行くことになったのだ。お姉ちゃんにも訳を話して付いて来て貰う事に。味方は多い方がいい。

 高級車を運転して、若頭を仕留める為の下着を買いに百貨店に出向くのに、肝心の本人を同行させるのは具合が悪いため、他の仕事を押し付け、組長の会社へ若頭だけを出勤させて追い払った。

 令嬢らしい私の振る舞いをチェックするために、デパートへ行くという事は伝えてある。ウソを言うと彼はすぐに見抜くらしい。まあ、言えてる。観察眼が鋭いし、欺く事は恐らく不可。なら、おおよそ本当の事を告げなければならないのは必須。


 とりあえず別の付き人に高級車を運転させ、銀座のデパートへやって来た。有言実行で、ちゃんと令嬢らしいドレスを着せられている。もう、汚さないか冷や冷やだ。


 お姉ちゃんから聞いていたけれど、組長はVIP顧客らしいから、別室に行くんだとか。そんなの聞いた事無い。百貨店はVIP専用ルームなんてある事を、今、初めて知った。

 何でも高級サロンまであるらしく、そんな所に立ち入った事のない庶民は、ただただ足を震わせるしかできないだろう。そんなところ、お化け屋敷に行くより怖そうなので、お姉ちゃんにも付いて来てもらった。私だけなら右往左往するだろうが、これで安心だ。同じ庶民がいれば、心強い。


「一矢。中松が好きそうな下着ってどんなものなの?」


 お姉ちゃんも解っていない様子だ。まあ、そりゃそうか。


「現物を見て決めようと思う。伊織、美緒の相談相手になってやれ」


「うん、解った」


 彼ら夫婦は非常に私に協力的だ。何とありがたい。今、まさに鬼若頭を討ち取るアイテムゲットみたいな感じよね、これ。RPG風に言うとこんな感じ?



――そなたにこれを授けよう。



 美緒はセクシー下着を受け取った!(テレレー)※イベント発生時の効果音



 よーしキタコレ。完璧じゃん!



 鬼頭(めんどいから若頭と鬼を合体させて略した)を私の魅力で瞬殺よ!

 ギャフンと言わせて『も、ももも、申し訳ありませんでした美緒様』とひれ伏せ、謝罪させるのよ!

 その土下座している頭をぐりぐり踏んづけて、『私を傷つけた罪は重いわよ、コラ。責任取れよ、あぁ?』と言い放って悔しそうな彼の顔を見て、高笑いするんだから!


 鬼頭の土下座をもぎ取るには、お姉ちゃんや組長が選んでくれる、セクシー下着に全てかかっているのよ!


 頑張って選んでちょーだい!!

 

数ある作品の中から、この作品を見つけ、お読み下さりありがとうございます。


評価・ブックマーク等で応援頂けると幸いですm(__)m


定期更新は、毎日16時の時間帯&ゲリラ更新となります。

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