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006 俺を堕とす宣言した女が、俺に堕ちてどうするんだ?


「あ、わ、私は結構任侠映画とか、そういうの好きだから・・・・。別に、中松さんが怖いとか全く思わなかったし、寧ろ、お姉ちゃんを助ける中松さん、カッコイイなーって思って・・・・はい、まあ、そんな感じです」


「任侠映画好きねえ」


 なんか、興味あるような感じで見られた。視線、鋭い。ドキドキする。


「映画は本物とは全然違うけれど、それでもまあ、俺の本性知っても平気な女、伊織以外じゃ、美緒が初めてだな」


 おおおー・・・・これが噂の黒執事ってヤツですか?

 いや、鬼執事か。どっちでもいいけど。それより・・・・突然の呼び捨て!

 ハードル高い、ハードル高い!

 いかん。ドキる。(※ドキドキするの意味)


「お前、俺を堕とす気あんの?」


「・・・・あるって言ったら?」


 グイグイ来られて何となく引くのも悔しいから、間髪入れずにそんな風に言った。

 なんだ。中松さんって私に興味あるの?

 なら、話はやーい。


「面白いな、美緒。気が強い女は――好きだぞ」


 悪い、悪ぅ――い男の顔で、対面に座った中松さんが腕を組んで、ニヤリと笑ったの!




 ハートが、ずぎゃーん、ってなるじゃない、それ!




 見事にハートを、ブチ抜かれちゃったわよ、もうっ!!

 何でそんなにカッコイイのよ! ワイルドで声低いしイケメンだし、なんか・・・・鬼執事とか最高のコスプレしてるしさあっ!



 ああぁ――ん、もぉおぉ――!



 ドキドキしていると、耳を疑う台詞が耳に飛び込んで来た。


「言っとくけど、俺は容赦しないからな」


「は、はいいっ?」



 突然の容赦しない発言! 出た、鬼よ!!



「俺を堕とせるもんなら、堕としてみろ。お前の攻撃、楽しみにしていてやるから」


 エラソーな上から目線でカチンと来るのに、そんな中松さんをカッコイイとか思う自分、アホ。


「み、見てなさい! すんごい攻撃して、中松さんを絶対に私に惚れさせてやるんだから!」


 びしっと人差し指で彼を指し、高らかに宣言した。「私に惚れたら、土下座よ!」


「お前も伊織も、土下座好きだな」


 そして今度は、ははっ、と愉しそうに笑うの!

 ぎゃをー。そんなのずるいっ! 聞いてない!!


 落ち着け。早まるな心臓! なんか、早くも勝ち目なさそうな勝負よね・・・・。でも、負けないっ!!

 

「そ、それより、食事はどうなっているの? カトラリーも何もないけど?」


「そんなの必要ねえし」


「は? 何で――」


「美緒が作った野菜、ゴテゴテの料理にするより、こっちの方が美味いから」


 中松さんはさっと立ち上がり、部屋の奥へ消えて行った。そしてすぐに変な形の鍋を持って戻って来た。

 鍋敷きを敷いて、その上にスライムの形というか、とんがり帽子の形というか、不思議な形容の蓋が特徴の独特な鍋だ。田人鍋だろうか。


「鍋にはポン酢がいいよな」


 ささっと調味料も用意してくれた。


「食おうぜ。今日は田人鍋だ」


 まさかの田人鍋・・・・。中松さんが作ってくれたのかな?


「なんだ、イヤか?」


 怪訝そうな顔をしていたようで、食べるのが嫌なのかと聞かれた。そんな状態でも顔色一つ変えず、涼しい顔してらっしゃるわ。


「ううんっ。大好き! お野菜いっぱい摂れるもん」


 慌てて席に着くと、割り箸を差し出してくれた。受け取ると、中松さんが鍋の蓋を取ってくれた。湯気の中から出てきたのは、美味しそうなたっぷりの野菜に豚肉が乗っているもので、キャベツと玉葱とピーマン・・・・ほか!


 やーん。超美味しそうっっ!

 

「庶民的でがっかりしたか?」


「え?」


「俺は正直、一矢様が召し上がるような肩こり料理は好きじゃない。美緒が持ってきてくれる野菜は美味いから、加工するより炒めたり蒸したり、調理して食ってるんだ」


「それ、すっごく嬉しい! ありがとう! がっかりなんてしてないよ」


 私は思わず笑った。中松さんに一つでも認められたのだと思うと、何だか尊敬する親分に褒められた舎弟のような気分になる。・・・・って、私は舎弟じゃないし!


「良かった。美緒ならそう言ってくれると思った」


 ふ、と優しい笑顔を見せる中松さん。

 ちょ・・・・! それ反則!!


 顔を赤くしていると、どうした、と尋ねられた。


「俺を堕とす宣言した女が、俺に堕ちてどうするんだ?」


「堕ちてないしっ」


 誤魔化すようにして割り箸を真っ二つにして、はい、と手を出した。「入れてあげる」


「サンキュ。給仕が仕事だからする事について何とも思わなかったけれど、やって貰うと嬉しいもんだな」


 また・・・・!

 フイうちの笑顔は卑怯なり!!


 何時も鬼ってたらいいのに。なんで・・・・こんな時々優しい顔をするの?

 心がきゅーん、って、なるよ。


 

「はい、どうぞ」


 ポン酢の入ったお椀に蒸した野菜と肉を一通り入れ、中松さんに渡した。


「ん。サンキュ」


 受け渡すとき、当然手が触れる訳で、ドキっとした。


「物欲しそうな顔してんなぁ、美緒。そんなに欲しい?」


「はっ、はあっ? か、かか、勘違いしないで! べ、別に私は物欲しそうな顔してなんか・・・・!」


「何ムキになってんの。ほら、器貸せよ。野菜入れてやるから」


 ニヤニヤしながら言われた。


 こんの・・・・!

 絶対わざとだ!

 この男、正真正銘の鬼ドSだ!!

 でもそれにキュンキュンする私、アホ。



 あ“――っ!

 このままじゃ中松さんを私に惚れさせるなんて、夢のまた夢!



 悔しそうな顔を向けて彼を睨みつけていると、そんな怖い顔じゃ、俺は堕とせないぞ、って言われちゃった!!




 あ“あ“――――っ!!




 今の所、鬼執事には何一つ敵わないと感じる私だった。

 でも、負けない!

 今に見てろよ、コラ。

 絶対、『すみませんでした美緒様、数々の無礼をお赦し下さい、よよよ(泣)』って言わせてやるからぁ――っ!!




 

数ある作品の中から、この作品を見つけ、お読み下さりありがとうございます。


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定期更新は、毎日16時の時間帯&ゲリラ更新となります。

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