043 パパ活とは
翌日。何故かウェディングドレスやタキシード等、専門に扱うお店に来ていた。しかも超高級店。というのもイチ君が店を貸し切りにしたから、来ないと迷惑が掛かると言い、半強制的に連れてこられたのだ。
「さあ、美緒。好きなのを選べ。見事中松を射止めたお前に、私からの祝儀だ」
意味不明な祝儀を貰えることになった。
「一矢様。折角ではございますが、美緒にはこちらできちんとドレスを選びますから、理由もなくこのような高価なものを頂くわけには・・・・」
「馬鹿者。三成家の執事ともあろうお前と、更に私の義妹の結婚式なのだぞ。ただの結婚式とはわけが違うのだ。盛大にやらなくてどうする。示しがつかんだろう」
押せ押せのイチ君に、今日は道弘さんの方がタジタジだ。
「金の心配は要らんぞ。私が用意する。祝儀と思ってくれたらいい」
「ですが・・・・」
「うるさい。つべこべ言わずに祝わせろ! お前と来たら欲が無いものだから、ボーナスも有休も要らんとか言うし、全く張り合いが無くて困っていたのだ。今までの貸しを返したい」
「一矢様には大変なご恩が御座います」
「お前も私が必要で、私もお前が必要だった。それだけでいいだろう。主従関係は健在だ。何処にも行くなよ? 中松。お前は一生、私のものだからな」
なにそれ! リアルBLじゃん!
受けはやっぱイチ君? それとも意表をついて道弘さ・・・・――
「美緒。何か邪な考えをしていないか?」
その時、道弘さんの鋭い視線が私に直撃!
「あああうううんん、べっつに――――っ! このドレス綺麗―って見てただけー」
アブナイ、アブナイ。私はすぐ思っている事が顔に出てしまうから、道弘さんに咎められる事が多い。イチ君と道弘さんのあんな××やこんな××を想像していたなんて知られたら、お仕置きどころの騒ぎではない。
「邪悪な気配を感じた気がしたが、気のせいという事にしておいてやろう」
ううっ。お見通し!
「気のせいよ。気・の・せ・い。わー、このドレス綺麗―。あ、こっちの可愛い方もいいなぁー」
わざと話を逸らせた。
「気に入ったのなら、試着すればいい。美緒が欲しいドレス、何枚でも買ってやるぞ」
「その言い方、パパ活しているみたいで嫌なんだけど。しかもお姉ちゃんの旦那に」
「パパ活? パパ活とは何だ」
イチ君が怪訝そうな顔で尋ねた。
「パパ活も知らないの? イチ君てば、遅れてるー」
「俗なものは知らん」
「俗っぽいっていうのは解るんだ」
「美緒の言い方から推測したまでだ。して、中松。パパ活とは何だ? 私に解るように説明しろ」
「パパ活とは、女性が男性と食事やデートをし、対価として金銭をもらう活動の事で御座います。時に肉体関係も生じるケースもあるようですから、一矢様には無縁かと」
的確にお答え頂き、ありがとうございますー!
「食事をするだけで、金銭を支払わなければいけないのか」
「まあ、利用する内情は様々ですね。特に年を老いた男性が、若く美しい女性と疑似デートできる事に悦びを感じる方もいらっしゃいます。また、若い女性は年上の――それこそ、自分の父親と変わらぬ年齢の男性と、デートしてお茶を飲んだり映画を見たり、食事をするだけで金銭が貰えるという美味い話という訳です。しかし、無理やり肉体関係を強要されるケースもありますから、楽して大金を手にするのは、かなりレアケースのようですよ」
「・・・・私も、伊織が居てくれなかったら、パパ活というものに手を出していたのかもしれんな。一生独り身だっただろうし」
何の話だ。今、ドレスを見に来たんじゃないのか?
パパ活なんかどーでもいいって!
それに、イチ君は昔からお姉ちゃんLOVEでしょーが!
お互い、初恋拗らせのメンドクサイ二人だったし。
「一矢様は放っておいても女性の方から寄ってきます。やはり無縁かと」
「そうか。まあ、今の説明でこの活動の内容がよく解った。あまりいいものではなさそうだ。金銭が絡むと関係もおかしくなる」
「そうでしょうとも。ご納得されたようで、何よりで御座います」
・・・・そうか。イチ君が道弘さんを全面的に信用し、彼をずっと傍に置いている理由が分かった。
道弘さんはイチ君が納得するまで討論に付き合うし、絶対に彼を『こんな事も知らないのか』みたいな態度で馬鹿にしたりしない。
そっか。お姉ちゃんが拾って、イチ君が飼う事にしてから、長い年月が経ったもんね。最初は怖い人だと思っていたけれど、知れば知る程優しくて情熱的で、その人となりを理解しようとしてくれる。
道弘さんは、改めて素敵な人だ、って思った。
私の目に狂いはない。道弘さんとなら、幸せな家庭を築いて行ける。
「ちょっと、パパ活の話よりドレスよ、ドレス! 主役を放っておくなんてどういうつもり?」
別に怒っていないけれど、こっちの世界に戻す為にわざと文句を言った。
リアルBLは、お仕事の時にでもやってちょーだい。
「はっ。そうだった。すまない、美緒。じっくり選ぶとしよう。さあ、中松。お前のタキシードも私が見繕ってやる。三成家の執事代表として、恥じぬ衣装を纏え」
「はい。身に余る光栄で御座います」
「よーし、そうと決まったら、片っ端から試着していくぞ!」
えーっ。それ絶対に今日中に決まらないパターン!
ま、イチ君があんなに張り切っているんだから、夫婦で付き合ってあげますかぁー!
数ある作品の中から、この作品を見つけ、お読み下さりありがとうございます。
評価・ブックマーク等で応援頂けると幸いですm(__)m
定期更新は、毎日16時の時間帯&ゲリラ更新となります。
固定は毎日16時の時間帯間で更新を必ず行います! よろしくお願いいたします。




