037 悪は成敗! 叩き斬るっ!(ばばばーんっ)
「お。もう昼時か。そろそろ飯にするか?」
「うんっ。実はお弁当作って来た!」
「気が利くな」
「あったりまえよー」
中松さんの好物と思しき『照り焼きハンバーグ』は押さえておりますわよおお。
お姉ちゃんはイチ君の胃袋を、早くからゲットしていたと思うの。だから私も見習って、何かしらチャンスがあれば、中松さんに私の作った食事を振舞おうと思っている。
「あっちで食べましょう」
屋外テーブルの一角に荷物を置き、持ってきたお弁当を広げた。洋食屋だからこそできる、スペシャルハンバーグ弁当。味はてりやき。そして素揚げのお野菜たち。私が大事に大事に育てた、超美味しい野菜よ。それから玉子焼き、冷めても美味しいガス釜で炊いたご飯はごましお付き。手作りのポテトサラダは、黒胡椒がアクセントでベーコンとリンゴ入り。
「美味そうだ」
「美味しいわよ」
「朝早くから、俺の為に作ってくれたんだな。ありがとう」
はい、お約束のずぎゃーん、いただきましたぁー。
甲斐甲斐しくお手拭きを渡し、お弁当タイムへ突入。
「うん、美味い」
よっしゃあ――!
早速お弁当に手を付けてくれた中松さんの感想を聞いて、心の中で盛大にガッツポーズを決めた。ふふふ。若頭の胃袋、召し取ったりいいい――!
「俺さ、から揚げも好きなんだよなー」
「へっ? から揚げ?」
「そ。から揚げ」
「意外にお子様メニューなんだね」
てりやきハンバーグに、から揚げが好物って、子供か!
「事務所でそんなメニュー食った事無かったし、大人になったらこんな容姿で、ガッツけないメニューだろ。だから、美緒が俺の為に作ってくれよ」
「え、ええ。いいわよ。沢山作ってあげる!」
「約束だぞ」
「モチロンよ。楽しみにしていて! 何なら来週でもまたデートしてあげてもよくってよ」
「一矢様への休暇の申請、美緒がやってくれるなら、デートしてやってもいいぞ」
「わ、わかったわ。申請する」
「よし、決まり。今日と同じな。また九時に迎えに行く。から揚げ、楽しみにしてるから」
そして笑顔。そして今日何度目か解らないずぎゃーんが訪れる。
こちらもずぎゃーん返しよ!
極上の笑みで、任せておいてと伝えた。
うっふっふ、腕が鳴るわ!
から揚げに合う野菜料理考えよーっと!
そんなやりとりをしているうちに中松さんは綺麗な所為で、あっという間にお弁当を食べてくれた。
照り焼きハンバーグ、また作って欲しいと言われたので、モチロンオーケーしておいた。
お弁当の容器はその場で捨てられるものにしてきたから、ごみを分別してきちんと片付けた。
「アイスでも食べるか?」
「えーっ。食べるー!」目が輝いた。
「他の女子なら、太るから止めておくねって、デート中にはあまり食べないって聞いたけど」
「なんで? 太るのは困るけど、美味しいものは好きな人と一緒に食べたいよ」
「美緒らしいな。何がいい? 弁当の礼にご馳走する。買ってくるよ」
「やったー! じゃあ、ストロベリーとバニラで!」
「ダブルか」
「うん。何なら映えアイスみたいな大きいの買って、中松さんと分けて食べるっていうのもアリだけど?」
「こんなオッサンが、アイスをシェアして食べてたらキモいだろ。だから、それは無いな。別に買ってくる。ちょっと待っててくれ」
優しい笑顔を残し、中松さんが去って行った。
入り口の方にある、美味しそうなアイスクリームの看板を私がじっと見ていたの、気が付いていたのね。だから、買ってきてくれるって・・・・やっさしー!!
あーん。もう、更に惚れる――!
中松さんが行ってしまったので更に後片付けをしていると、コラァー、どうしてくれるんだよー、とかいう謎の怒鳴り声が聞こえてきたの。
えーっ。遊園地に似つかわしくないー。辺りを見回したけれど、誰もいない。
弁償だろー、コラー、ってまた怒鳴り声。更に女の子のすすり泣く声まで!
ちょっと、コラ!
女の子にチンピラが絡んでいるのかしら!?
絶対やっつけなきゃ!
私は声のする方を、自分の勘を頼りに向かった。確かコッチの方・・・・
「ひっ、ご、ごめんなさっ・・・・」
「ごめんで済んだらケーサツ要らねえんだよぉー」
わー。お約束の台詞だわ。
「ちょっとアンタたち! 何やってんだ、やめな! 大の男がみっともない!」
私は姐さんになった気分で、文句を言ってやった。
「あぁ、なんだオメー」
二人のチンピラ風のガラの悪い男が、何と高校生くらいの女の子に絡んでいるではないか!
これは由々しき事態ですわよおおお!
悪は成敗! 叩き斬るっ!(ばばばーんっ)
この、姐さん・美緒に任せてちょーだい!!
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