014 鬼に翻弄されていますっ!
翌日。普段の倍以上厳しい修業が私を待っていた!
もう、丁寧な執事じゃないんだ。
被っていた仮面、ぜーんぶとっぱらった、本物の鬼がいた。
口調も俺様で、鬼。
しごく姿も、鬼。
鬼! 鬼! 鬼! とにかく、鬼!
弱音を吐こうとしたら、俺の言う事なんでも聞く約束だよな、と言われ、どうにもできない状況。
投げ出そうとすれば、やっぱお前には無理かぁー、根性たんねえな、って神経を逆なでするような台詞を吐かれる始末!
これ、完っっっ全に、鬼パワハラじゃん!!
略して鬼ハラ!
あ“――――っ。腹立つぅ――――!
こうなったら、訴えてやろうかしら!
そうだ! 訴えると言えば、何でも凄腕の探偵アルバイトの男がいるって噂があるの。浮気調査はお手のもので、難事件を解決したとかしないとか。なんか、頭のいい人みたい。
情報によると、彼は歌舞伎町にいるらしい。尋ねてみようかな、マジで。頭のキレる人らしいから、相談に乗ってもらえるかも! 鬼をやっつけて欲しい!
昼休み、そのアルバイト探偵がいるという事務所に早速電話を掛けてみた。ツーコールで女性事務員が出たので、噂の彼に相談に乗って欲しい旨を伝えると、今は外出中なんだって。
えーん。なんで今、いないのよー!
もう、マジついてなーい!
誰かアタイを修業地獄から助け出して!
そんな風に思いながら、窓の外で燦燦と輝く太陽を睨みつけていると、時間だぞ、と鬼が呼びに来た!
「わかっているわよ」
「なあ、美緒。もう少し普段から上品にできないか? これじゃあ、幾ら修業してもムダだぞ?」
「うるさい」
「何でも聞く約束だろ。まず、俺への口の利き方を改めて貰おうか」
「くっ・・・・!」
「ホントお前、悔しそうな顔するよな。ま、それが面白いんだけど」
言う通り、悔しいんだよ、コラ。
解ってんなら、止めろよ、コラ。鬼!
「そうだな、いっそのこと修業も兼ねて、俺好みの女になるよう、教育してやろうか」
「はあぁ?」
「お前、俺を堕とすんだろ。だったら本人にレクチャーされた方が早いじゃねーか」
「そりゃ・・・・そうだけど」
また訳の分からない展開に・・・・!
どうしてこう、次から次へとイベントが発生するのだ?
美緒の任侠物語は、イベント多発と見た!
しかしゴールは遠いようだ! 先が見えない。でも挫けない。何時か鬼をこの手で倒す!
・・・・でも、待てよ。
なんか終着点が、ニセカノからホンカノ(本物の彼女)に昇格になるという話が、どうやら鬼を討ち取り、姐さんに昇級という話になっているのはどうしてだろう?
私は悪くないわよっ。
「令嬢修業の後、三十分だけ特別レッスンで延長だからな。俺が直々にレッスン付けてやるよ。だったら、俺に勝てるんじゃねえの?」
「わかったわ」
どうせ断れないんでしょ。約束したからね!
あー、それにしても悔しい。
ナメられてるもんね。完全に。
でも、見ていなさい!
何時か・・・・絶対に私が倒す!
今は修業してレベルアップの時間なのよ。勇者が魔王を倒すかのように、末端の構成員が親分クラスのボスを討ち取るには、それ相当の時間と修業が必要なのだ!
私は絶対に、ぜーったいに負けない!
たとえ宇宙が滅びようとも!
鬼を、たおーす!
わー、姐さんかっきいー(カッコイイ)、と兄弟分(ほぼ身内というか、身内しかいない)が拍手喝采よ。ふん。どーだ、コラ。姐さんポジションを狙う女は、人望あるんだぞー。
「やけに素直だな」
意気込む私に向かって、鬼が一言。「素直な女は・・・・――好きだぞ」
ず・ぎ・ゃ―――ん!(撃たれて重体)
「美緒。俺に頬染めて遊んでる暇ねえぞ。ちゃっちゃと修業しろよ」
鬼ハラ受けているのに、鋭い目線とドスの利いた声で言われ、再ときめき。
くやしい――!
おのれーっ。私の心にずぎゃんずぎゃんと何発も銃弾を撃ち込みよって!
見てなさい!
こんな修業程度、姐さんクラス候補のアタイにはお茶のこさいさいなんだからねっ!
「かかってきな! この勝負、受けて立つ!」
「だからその言葉遣いをやめろって」呆れて言われた。
「そうでしたわ、おーほほ。ごめんあそばせ」
高笑いすると、鋭い目線を送っていた鬼が、表情筋を崩してぷっと吹き出し、笑ったの!
ぎゃをー!
だからずるいって、それ!
こっちを油断させておいてから、ずぎゃーん、ずぎゃーん、って、私を撃つの止めて欲しい!!
もうこれで何発目よ!?
何回瀕死状態にさせたら気が済むのよ!
こうなったら無になるわ!
これでどーだっ。
「早く指導して、中松様」
キリッと令嬢らしくお腹に力を入れて背筋を伸ばし、彼を睨みつけた。
私は無になるの。中松様にいちから手取り足取り教えてもらう、不出来な令嬢を演じるの!
「そんな怖い顔して睨むなよ」
くくっ、と笑われた。嫌味な笑いじゃなくて、ちょっとウケた時の軽い笑顔。
「ホント、美緒は飽きねーな」
ぽん、と頭を撫でて貰った。ううう・・・・鬼、時々飴。使い分けが上手いのなんの。
何枚も何枚も上手なんだなって思う。年上だし、元ヤ〇ザだし、勝てる要素がひとつもない。でも、頑張ればいつか努力が結ばれ、花開くときが来るだろう。
なーに、大丈夫。今のところライバルが皆無だと思われる(お姉ちゃんはもうポンコツ組長のものだし)から、後は私が頑張るだけ!
こーなりゃ、セクシー抗争なんかせずに、とっとと既成事実作っとけばよかった。
あの雰囲気にもう一度持っていくには、どうすればいい?
「美緒、また何か企んでるだろ。お前、顔に出すの止めろ」
「えっ? 顔に出ておりましたか、中松様」
キリっとした真顔を作って言ってやったら、また笑われた。
ぎゃをー。
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