012 綺麗な鳥さんと褒めたら、鬼が笑った!
とりあえず通常修業をさせられ、夜。
寝室が舞台かと思いきや、鬼頭の背中を洗う事を命令された。
マイクロビキニは水着素材だから、温水プールに入るものだと思って着用。後は普通の下着素材だから、使えない。ムダ毛処理は既にチェック済で完璧オーケー二重マル。
組長が選んだものじゃないけど、まあ、いいよね。ダサイとか萎えるとか言われたら、ポンコツ組長のせいにしてやるんだから!
ビキニじゃなく、中身が悪いとか言われたら、××蹴っ飛ばして、キレて暴れる。
そして、鬼頭が本日一日の業務を終え、九時を過ぎた頃。しっぽり温泉――じゃなかった、セクシー抗争の舞台として、三成組のお風呂場を貸してもらえることになったのだ。これは、組長の計らいだ。
更に組長はこう言っていた。――美緒が襲われそうになったら、すかさず立ち入って、証拠写真を撮ってやる、お前が中に入ったら、すぐ風呂場の外で待機し、鬼頭を仕留める援護射撃をしてやるから、と。
完璧じゃん!
証拠写真ゲットで鬼頭の悪事、暴いたり!
言い逃れはさせないっ!!
いざゆかん。鬼頭退治へ。
その命貰ったり!!
ばばーん!(姐さんを奮い立たせる効果音)
とりあえずハンドタオルでブツ(鬼頭を悩殺するマイクロビキニ)は隠し、決闘の場へ向かった。
ヤツは既に中に居て、私の到着を待ちわびている。
ふっ・・・・この勝負、貰った!
敵に背を向けるなんて、油断しすぎじゃん。
後ろから命取ってやる・・・・――って、ぎゃをー!!
何と私を迎えてくれたのは、程よい筋肉が付いた美しい背中一面に描かれた見事な刺青だった。
思わず息を呑んだ。
やっぱ・・・・本物!!
「どうした、この背中が怖いか、美緒。降参するなら今のうちだぞ」
振り向きもせずに鬼頭が言った。
ああ・・・・鬼頭がお風呂場を指定したのって、こういう事。
私が背中の刺青に怖気づいて、尻尾巻いて逃げると、そう思っていたのね。
そうはいくもんですか!
残念でした――っ!!
「怖い? まさか」鼻で笑ってやった。「こんなに美しい背中、今まで見た事無いよ。感動してただけ」
素直に感想を述べた。本物の刺青ってもっと黒くて怖いものだと思っていたけれど、目の前のものは美しかった。色づいていて、まるで生きて、そこから飛び立つみたいだ。赤がメインで青や緑、様々な色が散りばめられている。激しくすべてを燃やし尽くすかのような、美しい鳥さんの絵――そんな、刺青だったから。
「感動? バカ言うな」
首だけをこちらに向けて後ろを振り返り、鋭い目線で私を睨むようにして鬼頭は言った。あー、そのドスの利いた声、目線、最高に好き。キュン死にしそう!
「今は足を洗って違うが、背中一面に刺青が入っている様なこんなワケあり男、普通じゃない。やめとけ」
「え? なんで刺青が入っていたら、やめなきゃいけないの?」
「何でって・・・・そ、そりゃ・・・・普通じゃないからさ・・・・。一般人は、引くだろ」
予想外の返しだったのか、鬼頭は言葉に詰まっている。
「えー、だって、凄く綺麗じゃん! この鳥さん、何て言うの?」
「と・・・・鳥さん・・・・?」
鬼頭が目を開き、震え出した。
「すっごくカラフルだね。超キレー! あ、もしかしてこの鳥さん、イケてるクジャクだったりして?」
それを聞いた途端、あっはっは、と鬼頭が声を上げて笑い出した。一体、何事!?
しかし今のはフイ打ちだ。油断していた。
ずぎゃーん、ずぎゃーん、ってスマイル拳銃で二、三発、ハートをブチ撃ち抜かれてしまったじゃないの!
あ”――、今のナシ! 今のナシ!!
くそぉ。聞いてない、聞いてない!!
いや、それより、激レアなんっすけど!
カメラ持って来ればよかった、っていうより、組長、シャッターチャンスですわよ!! 今すぐここへ、カモンプリーズ!
「鳥さん――か」
大声でひとしきり笑った後、鬼頭がとても優しい顔を見せた。「美緒にかかると、俺の過去とか常識とか、簡単にどうでもいいモンになるんだな」
「過去は過去。今は今。中松さんの過去なんて、そんなの関係無いよ。今、この時が全て! それが大事じゃん!」
「――そうか。お前の気持ちはよく分かった」
中松さんはさっきまでの優しい顔から、鋭い目線に切り替えた。ううー、その瞳、ゾクゾクする。早く私のものにしたい!
「じゃ、早速勝負をしようか、美緒。負けたらなんでも勝った方のいう事を聞く、間違いないな?」
「そうよ! 戦闘開始だからね!」
さっきのスマイル拳銃攻撃でハートがずぎゃーん、は戦闘開始前だから、無効でセーフ。鬼頭を仕留めるには、全力で行かせてもらうわよおおおー!
私はハンドタオルを投げ捨て、惜しみなくマイクロビキニを装備した美ボディー(自称)を曝け出した!
先制攻撃、先制攻撃! どーだ! マイクロビキニの殺傷能力!
メロメロビームだぞー!
うりゃー!
そしてセクシーポーズを決めた。ふっ。完璧!!
「遠くて色っぽさ加減が見えねーんだけど」
「は? そこからでも十分見えるでしょ」
「なんだ、折角のブツを装備しておいて、サービス無しかよ。もっと近くで見たいんだけど。俺を誘惑するんじゃなかったっけ? それじゃ、話にならねえな」
くるりと身体を反転させ、鬼頭が振り返った。マイクロビキニを装備した私をしっかり、鋭く見つめてくる。きゅーんってなる。好き。
あ、前は刺青無いのね。筋肉、キレー。雄々しい胸筋、逞しそうな腕。ああ、それに抱かれたーい!
ヨダレでそーう!
ていうか、惜しみなくセクシー上半身を晒しているのは、鬼頭の方じゃない? ちょっと・・・・分が悪い?
だったらお望み通り、近寄って誘惑してやるわよ!
この勝負、負けるわけにはいかないの!
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