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001 私、完璧執事のニセカノに立候補しました!

表紙イラスト・紗蔵蒼様

https://36707.mitemin.net/i588250/


 




「えーっ!? 中松さんがお見合いぃいぃいぃ――――!?」





 三成伊織となった、ついこの前結婚したばかりの私の姉――旧姓・緑竹伊織から、たった今、衝撃の事実を聞いた。


 何となんと、な・ん・と!


 現在、私の想い人――中松道弘なかまつみちひろさん、三十二歳、職業・姉の嫁ぎ先で大金持ちの屋敷執事が、お見合いするって聞いたの!!


 冗談じゃないっ!

 中松さんと恋に落ちるのは、この私!!


『だから、美緒には早く知らせておこうと思って。一矢が急にお見合い組んじゃうから。中松も嫌がっているのに・・・・』


「教えてくれてありがとう、お姉ちゃん! とりあえず、電話切るね! 対策立てる!!」


『了解。頑張ってね』


「うん、ありがとう!!」


 貴重な情報を提供してくれた姉に感謝しつつ、スマートフォンをタップして電話を切った。

 




 あ“――――ん。イチ君のバカヤロ――――!!





 私が中松さんの事を好きになった事を知っているクセに!!

 今度、屋敷に卸す野菜、全部ピーマンにしてやるっ!!


 イチ君――三成一矢みつなりいちやという名のお姉ちゃんの旦那様――は、大のピーマン嫌い。

 艶やかな濃アッシュグレーの美しい髪色に、リムレスフレームの細めの四角メガネに包まれた鋭い目。整った顔立ちは、まるで中世ヨーロッパの貴族の如く美しい・・・・と、まあ、そんな人。

 彼は、姉の幼馴染で、姉を溺愛している。グリーンバンブー(私の実家の洋食屋)に幼い頃から出入りしていたから、勝手知ったる我が家状態で、イチ君とはみんな仲がいいけれど!



 今回の件、絶対に赦すまじっ!!



 ごごっ、と怒りの黒いオーラが私を包んだ。

 というのも、かくいう私――緑竹美緒みどりたけみお・二十一歳で農業大学に通う学生――は、中松道弘さんに恋をしているから!

 もともと、中松さんの事は前から知っていた。もう十五年近く前になるのかな――小学生くらいだったお姉ちゃんとイチ君が、ボロ雑巾のようにイチ君の屋敷前で行き倒れの中松さんを拾い、家の執事に雇った事。

 中松さんは黒髪をきっちりオールバックにして、綺麗な顔立ちをしているんだけれど、目つきが鋭く、結構怖そうな雰囲気がある。でも、キリッとして寡黙だし、仕事テキパキできるし、完璧主義なのよね。見た目タイプだったから、前から彼の事はイイナーって思っていたの。



 でも、ある日――お姉ちゃんとイチ君の婚約お披露目パーティーで、お姉ちゃんがピンチになった時の中松さんったら・・・・!



 私、任侠映画が大好物で、ヤンチャしている人にときめく事が多い。

 で、中松さんってモロ『本気でそっち系(ヤ〇ザ)』の人だったって、その時解ったの。

 というのも、お姉ちゃんが悪い奴らに攫われたって事が判明した時、すんごい目つきとドスの効いた声で、フロントの人を締めあげていたから・・・・!




 それ見て、カッコイイ――!! って思っちゃったの!




 ホテルのフロントマンを、「伊織様に何かあったら、タダで済むと思うなよコラぁ」とか言うあの時の中松さんの顔!

「早く三成杏香(姉を酷い目に遭わせようと目論んでいた、イチ君のおねえさん)が宿泊している部屋番号を言え」と、うっつくしー顔が怒りの形相になる、あの姿!

 眉間の皺も血走った目も、ワイルドな男って感じでいいよねー!

 まさに男の中の男だわ。


 最っっ高! キャー。


 フロントマンがガタガタ震えて何も喋れないのを尻目に、使えねえヤツ、と無情に吐き捨て、中松さんは悪者の宿泊先の部屋を聞き出すより先に、万が一の為にとお姉ちゃんに仕込んでおいたGPSで場所をチェック。締め上げた意味がないじゃん、って思ったけれど、それは言わないお約束。

 そりゃ、突然美形の執事が豹変して鬼ヤ〇ザみたいになっちゃったら、普通の人は喋れないよねぇー。怖いもん。

 締めあげられ損のホテルマンに同情しつつも、私の敬愛する萬田銀次郎様ばりの凄みと頭の回転の速さに、惚れ惚れしちゃった。


 結局お姉ちゃんの居場所は中松さんが早々に突き止めて、事なきを得たし。


 なーんか傍から見ていたら、中松さんはどうもお姉ちゃんに特別な感情を抱いている様な――早い話が、好きなんじゃないかって思ってみたり。


 でも、お姉ちゃんはずーっとずーっと昔から、バカみたいに幼馴染のイチ君一筋だったし、中松さんが入り込む隙は、残念ながら全く無かったというわけなの。


 だから、だからこそ、私にもチャンスがあると思っていたのに!!



 怒り心頭の私は、イチ君に電話を掛けた。

 

『はい』


 早速イチ君が電話に出た!



「イチ君のバカヤロ――――!! 何で中松さんにお見合い組んじゃうのっ!! 私のキモチ知っているクセにっ! もしお見合い成功したら、一生恨むから! 責任取ってもらうぞコラぁー」



 いけない。つい、コラぁー、とか語尾に付いちゃった。

 仮にもヒロインなのに。ヲホホ。

 でもこれは、任侠映画見すぎ、好きすぎが故だと思う。こういう言葉遣いがたまに出ちゃうのよ。そしたら、ふわふわ系女子みたいな私のお母さんに、「みおちゃんっっ、言葉遣い悪―い。えーん、お母さん泣いちゃうー」って、言われちゃう。そうなると、はぁ、うっせえわ、コラ、って思う悪循環。私の愛らしい見た目だけは、お母さんによく似ているんだけどねー。ここだけの話、性格は全然違うの。


『なんだ美緒。鼓膜が破れるかと思ったぞ!』


 イチ君に文句を言われた。


「当然じゃん! イチ君だって、私がお姉ちゃんのお見合い組んだりしたら、怒るでしょお――っ!!」


『まあ、そうだな。怒るかな』


「だったら――」


『まあ、聞け。この縁談は、中松の為じゃない。どちらかと言えば、美緒――お前の為だ』


「私の・・・・? どういう意味?」


『お前も伊織も、すぐ勘違いしてコトを進めるから、話がややこしくなるのだ。伊織が美緒に告げ口なんかするから。はあ、やれやれ』


 ふうー、と大きなため息を吐かれた。悪かったわね・・・・!


「あっそ。そんな事言うなら、こっちにだって考えがあるわ。イチ君の秘蔵写真、ツイッターで拡散して、お姉ちゃんの秘蔵写真だって――」


『おい。なんだ、その秘蔵写真というのは。しかも、私のものだけじゃなく、伊織の秘蔵写真とは?』


「おしえなーい」


 イチ君は大金持ちのお屋敷に住んでいるご子息だけれど、小さなころからお姉さまたちに意地悪をされて、家に帰り難かった過去があるから、よくこの狭い実家に遊びに来て、ご飯を食べていたの。家のアルバムに秘蔵写真なんか、ゴロゴロ転がっているわ。

 そんな経緯があるから、うちの家は誰もイチ君をお金持ちのお坊ちゃま扱いをしないのだ。そういえば、お金持ちだったね、という低認識。


『その秘蔵写真、美緒の言い値で買い取ろう』


 言っている傍から出た! お金持ち発言。庶民、ナメんなよ?

数ある作品の中から、この作品を見つけ、お読み下さりありがとうございます。


評価・ブックマーク等で応援頂けると幸いですm(__)m


定期更新は、毎日16時の時間帯&ゲリラ更新となります。

固定は毎日16時の時間帯間で更新を必ず行います! よろしくお願いいたします。

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