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プロローグ
「こんなの、きいてないわよーー!」
魔王城の魔王陛下の執務室に私の絶叫が響き渡る。
だがその声は、かつて昔に聞いた懐かしい子供時代の私の声。
「な……」
魔王様を含め、部屋にいるものたちが、私の『この姿』を見下ろして、ぽかーんと口を開いている。
「あ、……薬の調合間違えた」
そう言ったのは、魔王陛下の配下の四天王の一人であり、宰相であるアドラメレク。
「……すみません。基本、若返りのエキスを入れるのが定番なので、抜き忘れ……ました」
アドラメレクは、額から冷や汗を垂らしている。
私は、山のように積み重なるドレスの布地をたくし上げる。サイズが合わない靴は放り投げた。そして、なんとか歩きながら、部屋にある姿見の前に立つ。
「……幼女」
そこにいたのは、濃いピンクの髪と、赤い瞳、そして、肩がずれ落ちたぶかぶかの豪奢なはずのドレス。
そして、かつて四歳程度だった頃の私が、くるりと丸いツノを二本生やして立っていた。