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ダイアナヒョウモンの雫  作者: 桜本 結芽
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第4章 アカネグサの本部で

 朝姫の捕獲に失敗した準人と宏二は無表情で目の前に座するマフィアグループアカネグサのボス、倉智 優奈の前で青ざめながら跪いていてしばらくの沈黙の後優奈が静かな口調で、

 「ダイアナヒョウモンを捕縛し損なったようだな……幹部が2人もいながら情けない……それで、敗因はなんだ? 一応聞いてやる」

 と目を細めながら言うと準人が顔を上げ、

 「ありがとうございます、実は……裏切者の福元 幸仁がダイアナヒョウモンを匿っておりました、例のプロジェクト責任者の息子と共に」

 そう説明すると優奈は目を見開いてイスから乗り出し、

 「なに……? それは本当か?」

 と尋ねると準人は短く、

 「はい」

 そう答えたので彼女は小刻みに体を震わせてから大きな声で笑いだすので準人と宏二は恐怖の余り声を出せずただ頭を下げて震えていると優奈は笑う事をやめ小さな声で、

 「もうすぐなのかも知れないな……」

 と言ってからフッと笑い2人の後ろで縛られている数人の部下数人に向かい微笑むと、

 『燃えろ』

 そう言霊を使い炎を出すと彼等は苦悶の叫び声をあげながら吐血し絶命すると優奈が、

 「彼らはチャイロモズツグミのスパイだったんだ、我々の情報が洩れる前に始末出来て良かった」

 と落ち着いた口調で言い準人と宏二に視線を戻すと妖艶な笑みを浮かべ、

 「では次の任務まで待機していろ、だが次に失敗すれば……分かっているな?」

 そう言ってから部屋を出るように指示を出すと2人は頭を低く下げてから部屋を出ると、しばらく歩いてから宏二が膝から崩れ落ちるように座り込み涙を流しながら、

 「す、すみません、俺のせいで中島さんまで……次は失敗しないようにします……!」

 と震えながら言っていたので準人は彼の肩を掴むと壁に押し付け睨みながら、

 「当たり前だ、お前が悠長にあのガキ共で遊んでいたから逃げられたんだぞ、もっと真剣にしろ!次も同じ事をしたらその場で殺す、いいな?」

 そう怒気のこもった低い声で言うと宏二は何度も頷くので突き放すと歩いて行くので、それを見送ってから立ち上がり覚束ない足取りで自室に戻ると痛む左目を眼帯の上から押さえながら、

 「いてぇ……」

 と小さな声で言いながら涙を流していた。


 そして宏二と別れた準人も自室に戻り冷蔵庫から巨大な羊羹を取り出すとマグカップにココアと砂糖を山盛り3杯入れると湯を入れ、かき混ぜた後氷を8個足し冷たくするとソファーに崩れるように座り、羊羹を口に運ぶと激甘ココアで流し込むと一息ついて幸せそうな笑顔で、

 「うまい……やっぱりスイーツは手作りに限るな、甘さを調節できるし買ってるところを見られる心配もない、でももうすぐココアが切れるから買わねぇと……それに次の任務があるから作戦を考えねぇと、次こそはボスに殺される」

 そう独り言を呟いてから羊羹を食べ進め数分で完食すると立ち上がり、大きな本棚に囲まれ一枚板で創られた机に向き合いメガネをかけると作戦を考え始めた。


 その頃優奈も自室に戻るとため息をついて、

 「つかれた……」

 と呟くと風呂場に直行し服を脱いで身体と頭を洗ったあと髪にタオルを巻き、浴槽に浸かって一息つくと腕を伸ばしてストレッチをしてから数分程で上がると、バスタオルで身体を拭き部屋着を身に着け化粧水を顔にしみ込めせながらテレビをつけると、先日の学校襲撃をした件のニュースをしていたので見てみると、政治家や社会学者達がマフィアは一掃すべしと熱弁を振るっていたのだが優奈は鼻で笑ってから、

 「我々マフィアを消せばこの国は終わる事も気付かないなんて、バカしかいないのか……ん?」

 そう嘲っていると1人の男に目が留まりその顔を見た彼女はいきり立つと大きな声で、

 「な、なぜこいつがテレビに出ているんだ⁈」

 と言い滑らかな口調で言霊を使いを批判している中年で無精髭の男、井野 忠人を震えながら睨みつけて憎々し気に、

 「言霊使いを創り出しておきながらよく言えたものだ……! くそっ嫌なものを見てしまった」

 そう怒りで顔を歪めながら呟くとテレビを消しソファーに勢いよく座ると腕を組み、親指の爪を噛みながら言霊使いになった自分を本当の家族のように接してくれたあの忠人が、なぜ今批判などするのか訳が分からず苛立っていると玄関のチャイムが鳴ったので、彼女は怒りの表情を隠さずに出るとそこには食事当番の男が怯えながら、

 「き、今日のお食事です、ボス……」

 と言うと深く礼をして足早に立ち去ったので彼女は鼻で笑ってから、夕食が乗ったワゴンを部屋に入れるとテーブルに置き口に運ぶのだが、味が分からい優奈にとってはただ生きるだけの食事なので黙々と食べ進めて行くと内線電話が鳴ったので出ると宏二が慌てた声で、

 「ボス! チャイロモズツグミの加茂が……あの剣豪が1人で乗り込んで来ました!!」

 そう報告すると意表を突かれた彼女は目を見開き、

 「なにっ本当か⁈ ほかに奴の部下は⁈」

 と勢い込んで尋ねると宏二は震える声で、

 「いません……」

 そう言っていたので優奈は歯ぎしりをしてから宏二を鼓舞するように、

 「しっかりしろ、宏二! 幹部が弱気でどうする!! お前の言霊で少しでも足止めをしていろ、準人もいるんだろう⁈ 2人でかかれば陰気剣士など造作もないはずだ、私が行くまで何としてもくい止めろ、いいな!?」

 と言うと電話を切り急いで着替えると部屋を出て迎えに来た部下と共に慌てて現場へと向かい、優奈への報告を終えた宏二は準人の元へ戻ると肩を並べ、

 「ボスが到着するまで俺達で足止めをするようにとの事です!」

 そう伝え準人を見上げ頷くと彼も頷き、

 「宏二、奴の近くにある瓦礫を使って檻を創れ、それが壊されたときに俺が攻撃する!」

 と言われた彼は表情を引き締めると大きな声で、

 「はい!!」

 と返し走って敵に近付くと集中し、

 『強固な檻を創り閉じ込めろ!』

 そう言霊を使うと細身の刀をだらりと持つ剣士、加茂 達治の近くに散らばる瓦礫が浮き上がり、檻の形を成すと彼を囲みしばらく動かなかった彼はゆっくりと刀を構え、息を止めると目に見えない程の速さで檻を壊しにかかるが崩れずさらにスピードをあげると、宏二は創りだした檻の維持に限界がきたので気を失い後ろに倒れると部下が支え、それと同時に檻が壊れ達治は走り出そうとした途端準人回し蹴りがさく裂したので咄嗟に腕を上げるが飛ばされ、壁に激突して少し血を吐くがすぐに立ち上がると刀を構えまた走り出すと、炎が近付いて来たことに気付き後ろに跳躍して避けるとまた身体の力を抜き刀をだらりと構えると、炎を放った優奈を睨むように見やるとかなり小さな声で、

 「我らのボスから伝言だ……ダイアナヒョウモンには手をだすな、協定を軽んじれば長きに渡り続いたアカネグサに終わりを迎えさせる」

 と淡々とした口調で言うと姿が揺らぎ消えたので驚いた準人が駆け寄ろうとしたが、優奈に止められ振り向くと彼女は冷静な口調で、

 「まだ幻影の言霊使いがいるはずだ、下手に動けば同士討ちになりかねない……今は奴を逃がすしかないようだ」

 そう言い憤りで顔を歪ませてから深呼吸をしていつもの余裕のある無表情に戻すと、部下達に指示を出し事後処理をするとまた自室に戻り長い1日を終わらせた。

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