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ダイアナヒョウモンの雫  作者: 桜本 結芽
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第3章 幸仁の夢 

 マフィアとの戦いで言霊を使いすぎた幸仁は、夢の中で今は亡き義理の両親に幼い姿で会っていて、笑顔で二人の手を繋ぎ父を仰ぎ見ると彼も幸仁を見下ろし微笑むとしゃがみ、小さな身体の幸仁を高く持ち上げると楽しそうに笑うので父は優しく抱え、

 「そういえば、幸仁は将来何になりたいんだ?」

 と尋ねると彼は少し考えてから、

 「お父さんと同じ学校の先生!」

 そう元気に答えるので父は嬉しそうに笑うと、

 「そうか、なら沢山勉強をしないといけないな」

 と言われたので幸仁は不安そうな顔で、

 「勉強は苦手だなぁ」

 そう言うと父は幸仁を降ろして頭に右手を置き落ち着いた声で、

 「大丈夫、幸仁なら出来るさ! なんたって父さんの自慢の子だからな!」

 と頬ずりしながら言われた幸仁は嬉しそうに笑い、それを母は微笑ましい様子で眺めていたので幸仁は満面の笑みで再び両親の手を握り家へと帰り、その夜3人で夕食を取っていると玄関のチャイムが鳴ったので父が不思議そうに、

 「誰だろう……郵便かな?」

 そう言って椅子から立ち上がると玄関へ行きドアを開けると武装した黒いスーツの男達がなだれ込んできて、父を銃で撃ち殺害すると奥へ入って行き震えている母と幸仁を引きはがすと母を撃ち殺し、両親にすがって泣き叫ぶ彼の頭を殴って昏倒させるとどこかへ連れて行き幸彦が次に目を覚ますと、暗い部屋のイスに1人だけで座っていたので驚いて身動きするが両手を椅子の背中部分で縛られていたので、俯いて目に涙を溜めていると奥の方から誰かが近付いて来て静かな声で、

 「目を覚ましたか? 幸仁」

 と声がしたので顔を上げるとそこには女の子を連れた中年の男性が立っていたので幸仁は怯えて震える声で、

 「あなたは誰ですか? どうしてお父さんとお母さんを……殺したの?」

 そう尋ねると男性は不気味な笑みを浮かべ、

 「彼らはもう用済みになったからだよ、最初からそう決まっていた」

 と言ってから幸仁の前まで歩いて来ると平手で右頬を強く叩くと、

 「お前は今日から我がマフィア、アカネグサの一員だ……そしてマフィアにおいて光を見るその瞳はいらない、これからは闇を見るんだ……そして俺に貢献しろ、いいな?」

 深い闇を秘めた瞳でそう言われた幸仁は震えながら頷き、それから地獄の日々が始まった。


 そして幸仁が眠り続けて1週間が経ちずっと看病をしていた朝姫は、心配そうな面持ちで彼の額を濡らしたタオルで拭うと眉根を寄せ壁にかけてあるカレンダーを見上げため息をつくと、

 「幸仁さん……」

 と呟き彼の左手を両手で包むように握り憂いを帯びた顔で見つめていると玄関のチャイムが鳴ったので、慌てて出ると桔平がコンビニの袋を持ち上げて微笑み、

 「今日の食事を持って来たよ」

 そう言って部屋に入ると眠ったままの幸仁を見つめ、

 「幸ちゃんは相変わらず眠ってるんだね……」

 と険しい顔つきで言いながら彼の顔にかかった前髪を指で払っていると、幸仁は苦しそうにうなされながら寝返りを打つので、桔平は驚いて目を見張っていると朝姫が彼の手を握りながら、

 「時々こうやってうなされているんです、とても怖い夢を見ているのかもしれません……私もよく悪夢を見るから……」

 そう静かな口調で言うので桔平は幸仁を見つめながら、

 「朝姫ちゃんはどんな怖い夢を見るの?」

 と尋ねると彼女は少し間を開けてから、

 「黒いサングラスをかけた人達に囲まれて、必死に逃げるんですけど捕まって沢山の注射を打たれるんです、その時暴れないように縛られていて身動きが取れないから泣き叫ぶんですけどやめてくれない……そんな夢を見るんです」

 そう目に涙を溜めて言っていたので桔平は胸が締め付けられるような感覚になり、朝姫を抱きしめると彼女は一瞬驚いた顔をした後背中に手を回し声を殺して泣きじゃくり、しばらくして落ち着くと朝姫は赤くなった目もとを拭っていたので桔平は優しく微笑みながら、

 「大丈夫?」

 と尋ねると朝姫は頷くので彼はフッ笑い頭をなでると彼女は顔を赤らめていたので、桔平は慌てて手を離して気まずそうに、

 「ご、ごめんね! なんか朝姫ちゃんを見てると妹ってこんな感じかなって思ってつい……」

 そう言いながら頭を掻いていると朝姫が目を輝かせながら、

 「桔平さん、妹がいるんですか⁈」

 と勢い込んで聞かれたので彼はたじろぎながら、

 「昔はね……でも1歳の時に病気で天国に行ってしまったらしいし母さんとも離婚して今の家族は父さんだけなんだ」

 そう説明すると朝姫は驚いたように目を見開いた後申し訳なさそうに目を伏せ、

 「ご、ごめんなさい……」

 と謝ると桔平はいつもの笑顔で、

 「大丈夫、気にしてないよ! それに妹が亡くなったのは6歳の時でその時風を引いてたから全然覚えていないんだ、始めて妹の事を聞いたのは中学の時で未だに実感がわかないくらい……でも、もし生きていたら朝姫ちゃんと同じ年ごろだから余計に妹と重ねてしまうのかな」

 そう言い声に出して笑うので朝姫は嬉しそうな笑みを浮かべ、

 「私、父さんと母さんしか家族がいなかったから、今お兄ちゃんが2人も出来たみたいで嬉しいです!」

 などと言っていると幸仁が唸ってから目を覚まし辺りを見回してから、

 「ここ……どこ……?」

 と寝ぼけながら言っていたので桔平は安心して息をつくと、

 「僕の部屋だよ、寝坊助!」

 そう言って頭を軽く小突くと幸仁はまだ寝ぼけているのかボーっとした顔で桔平を見てから、その隣でうれし涙を流す朝姫を見て唐突に覚醒して飛び起きると、視界がグニャグニャと歪むのでまたゆっくりと横になると、

 「あいつら……マフィアはどうなったんだ?」

 と尋ねると桔平は真剣な表情で、

 「不利になったから煙幕を使って逃げたよ、きっとまた朝姫ちゃんをおそいにくるだろうし彼女が学校関係者の前で言霊を使ったからもう行く事は難しいとおもう」

 そう最後は悔しそうに言っていたので朝姫は落ち込んで俯くので幸仁が彼女の頬に触れながら、

 「ごめんね……俺が弱いせいで……」

 と申し訳なさそうに言うので朝姫は首を横に強く振ってから、

 「幸仁さんは悪くないです! 私が何も考えずに言霊を使ったから……」

 そう言うと桔平は朝姫の頭をなでながら優しい口調で、

 「2人が悪いわけじゃないよ、あれは生徒を巻き込んだマフィア達のせいだ、それに幸ちゃんも朝姫ちゃんも命がけであの子達を守ったんだ、むしろ胸を張ってもいい事だよ」

 と言って励ますと幸仁と朝姫が恥ずかしそうに、

 「ありがとう」

 そう礼を言うと3人で微笑み合った。

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