エピローグ 取り戻した記憶
先日記憶喪失の朝姫が戻って来たカフェ『Healing』では夕方にマスターや幸仁、桔平が店を飾り立ててパーティーが開かれると呆然としている朝姫に酒を飲んで酔った幸仁が、
「本っ当に朝姫ちゃんが生きててくれて、それに戻って来てくれて良かったよぉ! もう心配してたから……よかったぁ‼」
そう泣きながら叫んでいたので桔平が酒を取り上げてから、
「もう! 飲み過ぎだぞ、幸ちゃん‼ ほら、水飲んで‼」
と母親のように世話を焼いているとマスターが楽しそうに微笑みながら、
「幸仁君は酔うと泣き上戸になるんですね、初めて知りました」
そう言うと桔平が困ったような諦めたようにため息をつくと、
「泣き上戸の甘え上戸なんです……普段はここまで飲まないけど、こういう時は酔うほど飲んで記憶が飛ぶけどなぜか二日酔いがないんですよね……ホントにずるいです」
と言っていると幸仁が桔平に抱き着くと笑顔で、
「きっぺぇ、いつものうたってくれよぉ」
そう言うので桔平は顔を赤らめながら、
「き、今日はなし‼ ほら、部屋に戻るぞ!?」
と言うと幸仁は口を尖らせながら、
「えぇー‼」
そう不服を唱えると彼の腕を引き抱きしめると、
「やら!」
と子供のように駄々をこねるので桔平はため息をついてデコピンんをくらわせると、呆然とする彼を引きずりながら部屋へ戻しその間ずっと動画を撮っていたマスターの袖を引いて朝姫が、
「あの2人はとても仲が良いみたいですけど、昔からなんですか?」
そう2人を指差しながら尋ねると彼は動画を止めて遠くを見つめながら過去を思い返しながら、
「そうですね……彼らは5年前に出逢って共に学校へ行き、喧嘩をしながらも絆を深めていったんです、辛い事も全て彼らは2人で乗り越えていったからこそ今はとても幸せだと思います」
と朝姫に笑顔を向けて言うと彼女は2人が出て行ったドアを見つめながら小さな声で、
「私も……幸せになれるかな……?」
そう呟くとマスターは朝姫の頭を優しく撫でながら、
「なれますよ、あなたが心からそう願えば、きっと」
と力強く言うと彼女は照れて俯くと頷き小さな声で、
「ありがとう……ございます」
そう言っていたのでマスターは優しい笑顔を向け、
「どういたしまして」
と言いまた飲み進めて行くと朝姫が船を漕ぎ出したのでマスターが部屋に戻るよう促すと、それに従い部屋へ戻ったのでマスターは片づけを始めその後翌日の支度をしてから彼も部屋へ戻り眠った。
そして次の日早めに起きた朝姫は共同キッチンでパンとトースターで焼きながらフライパンで目玉焼きを焼いていると幸仁が入って来て、
「おはよう、相変わらず早いね」
そう笑顔で言っていると後ろから桔平が真っ青な顔で現れ、
「よぉ、幸仁君……お前は相変わらず調子が良さそうだな」
と怒りと嫌味を含めて言うと幸仁は振り返り元気な声で、
「おう、おはよう桔平! 昨日は飲み過ぎたのか? 気をつけろよ、二日酔いは辛いって聞くし」
そう言っていると桔平は意気消沈としながら、
「お前こそ相変わらずバカなのか? 誰のせいでこうなったと思ってんだ……⁈」
と言われ幸仁はキョトンとしてから首を傾げて、
「飲み過ぎは自分のせいだろ?」
そう言っていたので桔平は身体を震わせながら、
「お前な……もう酒を飲むんじゃねえぞ……?」
と怒気を込めて言われたので幸仁はショックを受けたように、
「なんでだよ⁈」
そう大声で尋ねると桔平は痛む頭を抱えながら、
「大声出すな……何でって、記憶が飛ぶ奴に飲ませたくないだけだよ……!」
と苦し気に言うと幸仁は食って掛かるように、
「そんなことは絶対な……」
そう言いかけた時後ろから、
『きっぺぇ、いつものうたってくれよぉ……き、今日はなし‼……えぇー!……やら!』
などと昨日の様子がマスターのスマホから流れそれを見た幸仁が赤面しながら、
「え……これ、俺ですか?」
と尋ねるとマスターは笑顔で力強く頷くと、
「はい、昨日の幸仁君はとても面白かったですねぇ」
そう言うので彼は桔平の肩に手をのせ項垂れながら、
「その……ご、ごめん」
と謝ると桔平は胸を張りながら、
「学食のA定で許す‼」
そう言うと幸仁は半泣きになっていたが次に笑顔でピースをしてから、
「了解!」
と言って微笑むので桔平も微笑み返しその後全員で朝食を取ると幸仁と桔平は支度をして学校へ行き、朝姫はマスターの手伝いをするためカフェのホールに立ち忙しくしているとあっという間に夕方になっていて、最後の客が帰って朝姫が一息ついていると幸仁と桔平が帰って来て店のイスに座るとマスターが、
「お二人共疲れているようですし、何か飲みますか?」
そう尋ねると二人はコーヒーを頼んだのでマスターが頷いてから朝姫にも、
「朝姫さんも疲れたでしょう、座って休憩してください」
と言い座らせると朝日にオレンジジュースを出して彼女が飲もうとストローに口をつけた途端、コップが落ち震えだしたので3人が心配していると涙を流しだしたのでさらに驚いていると彼女は震える声で、
「ゆ、幸仁さん……桔平さん……私、想い出しました……皆のこと、私の事……今までの事‼」
そう涙を流しながら言っていたので2人は呆然としてから朝姫に近付き涙を浮かべながら、
「よかった……! 朝姫ちゃん、おかえりなさい‼」
と言い抱きしめ合うとしばらく3人で泣き続けその後眠ってしまったので、マスターはいつもの優しい笑みを浮かべて毛布を3人にかけると目元をそっと拭った。
それから4年後、朝姫はいつものようにカフェで手伝いをしていると幸仁がいつもより綺麗な服を着て入って来て朝姫の手を引くと、
「ちょ、ちょっといいかな? 朝姫ちゃんに話しがあるんだ!」
と言ってマスターに目配せをすると千里眼で全てを悟った彼は笑顔で、
「今は私一人でも大丈夫なので行ってください」
そう言われた朝姫は少し混乱しながらも頷き幸仁について行き近くの国立公園に行くと、彼はしばらく黙ったまま動かなかったので朝姫は緊張していると、幸仁が突然振り返り真っ赤な顔で片膝を立て彼女の手を取ると声を震わせながら、
「お、俺は……ヘタレだし、キレると言霊を使っちゃうし、バカだけど……誰よりも朝姫ちゃんを愛してる、だ、だから……俺と結婚してください……!」
と言って右ポケットから小さな箱を取り出し掲げるようにして開けると、中には綺麗なダイヤの指輪が入っていたので朝姫は一瞬固まった後目に涙を浮かべながら、
「わ、私も……幸仁さんを愛してます、よろしくお願いします!」
そう言うと幸仁もうれし涙を浮かべながら朝姫の左手薬指に箱から出した指輪をはめ立ち上がると抱きしめて大きな声で、
「ありがとう! 絶対に幸せにするから‼」
と叫んでいるといつの間にか来ていた桔平が彼の肩に腕を回しながら、
「かっこよかったよ、幸ちゃん! これからも僕の妹をよろしくな‼」
そう言ってから朝姫に向き直ると笑顔で、
「これからは幸せになってね!」
と言いカフェに先にカフェに戻ったので朝姫と幸仁も手を繋いでカフェに戻ると、マスターに改めて報告すると喜んでくれたので幸仁は今までの事に礼を言って感極まって涙を流していた。
そしてさらに2年の月日が経ち時期が来た2人は正式に夫婦となりカフェを出てマンションで暮らし始め、幸仁は念願だった小説家となり生計を立てられるまでなっていて朝姫がそれを見守り、それから3年が経つと2人の間には女の子と男の子の双子が誕生し忙しくも幸せな毎日を朝姫と幸仁は送っていた。
―完―