旅は驚きがいっぱいです
俺達は日が昇らないうちに出発することにした。
「今から桶狭間まで一気に駆ける」
「食事は着いてからにする」
四郎と葵は少し驚いた様子だが、楓は解っているみたいだ。
走る前に。
「四郎!葵!」
パーティ内脳内通信を試してみた。
「はい!」「え?」
「聞こえるか?」
四郎と葵は目をパチクリさせていた。
「頭に直接言葉を伝える魔法だ!」
「魔法?」
「俺が使える特別な術だ」
「考えるな!受け入れろ!」
2人は見つめ合い、そして俺に向かって強く頷いた。
「これからは重要な事は直接頭に使える」
「時と場合によって多用することがある、慣れておくように」
脳内通信は成功のようだ
「一気に駆けるが遅れるようなら、これを使って俺に伝えろ」
楓、四郎、葵とも頷いた。
全員に身体強化魔法を掛ける。
四郎も葵も疾風の様に走れる筈だ。
この時間なら誰にも気づかれず桶狭間まで行ける。
「行くぞ、ついて来い!」
俺は駆け出した。
誰も遅れることなく桶狭間に着いた
もう日は昇りきっていた。
だいたい30分くらいか。
「葵、大丈夫か?」
「はい、大丈夫です」
一番心配だった葵は少し息を弾ませているが、問題は無いようだ。
四郎の方はケロリとしている。
「では、料理を作るか」
料理が出来そうな人目につかない開けた場所に移動する。
多分、ここら辺に義元が通る筈だ。
「四郎、鍋が掛けれそうな太目の枝を取ってきてくれ」
俺は異空間収納から事前に楓に用意させた薪、鍋、米、猪の肉、野菜、味噌を取り出した。
「葵、これで料理は作れるか?」
「水もある」
手のひらから水を溢れさせた。
もうどんな魔法を使おうと葵は驚くことは無かった。
「多目に作ってくれ」
「余りは次の食事に回す」
葵は手際良く料理を作り始めた。
「俺は散策してくる。楓、2人を頼んだ」
1万近い兵が移動するから、長く延びた陣形になる。
義元が居そう所から東に1kmぐらい離れた場所に転移のポイントを作っておく。
これだけ離れれば今川兵に見つかることはないだろう
3人の所に戻ると料理は出来ていた。
お椀と箸を4人分出して、一緒に食べることにする。
美味しい!料理アピールしただけの事はあるな、葵!
多目に作ったと思うけど、完食です。
四郎もよく食べるなぁ。
桶狭間から3日かかって夕暮れに駿府へ着いた。
強行軍だったが、みんな問題無く付いて来てくれた。
狩りも短い時間だが出来、四郎と葵の能力も少しアップした。
駿府の町は清洲に比べ人が多く、露店も賑わっていた。
「今日は宿に泊まり、明日元康の屋敷に行く」
2日間野宿だったので布団が欲しい。
宿代を弾んで贅沢に2部屋を取った。
久しぶりに楓との2人だけの夜になる。
「松平様は織田家のお味方になってくれるのでしょうか?」
楓が声を掛けてきた。
「元康と話が出来ればな」
「聡明な元康であれば、己の進む道が解る筈だ」
拒否しても味方にならざるえない状況を作るつもりですが。
「お館様は元康様を必要と思われているのでしょうか?」
「味方にしておきたい人物の2番目になると思うよ」
「もちろん1番目は俺だけどね」
楓は笑って頷いた。
可愛い!
俺は楓を見つめ、布団の中に右手を差し入れた。
右手は楓の両手で掴まれ、胸の位置に誘われた。
うーん、我慢出来ません!
俺は楓の布団に潜り込んで唇を合わせた。