伊木山での攻防、その後
「何ですか、これは!?」
「いつの間に?」
「長秀様ぁ~!!」
大声を発しながら木の陰から四郎が現れた。
枝、葉に隠されて山頂に出るまで四郎には何も見えていなかった。
立ち並ぶ家屋を見て驚き、パニくっていた。
「あるぞー!城がある!」
「うおー、櫓もある!」
「おーい!みんな見てみろ。こりゃ凄いぞ!」
遠くから藤吉郎の声が聞こえた。
ざわざわと藤吉郎が連れてきた兵たちの騒ぐ音も聞こえた。
ふっと俺の両腕、両足を強く押さえていた力が抜けた。
身体の拘束が消えた。
四郎と藤吉郎の声が聞こえた瞬間、晴親の呪術がスッと解けた。
身体の力が抜け、不覚にも俺はその場にへたり込んでしまった。
助かった!
危機を脱した。
「流石、丹羽殿」
「本当に1日で城を作ってしまわれた」
「小一郎、見ろ!どうだ!」
「丹羽殿はお約束をしっかり守るお方だ!」
「藤吉郎、お約束通り兵500を連れ、日が落ちる前に伊木山山頂に到着致しましたぞ!」
「丹羽殿ぉー!!」
藤吉郎の声だけがやたら俺の耳に届く。
これも藤吉郎の利点か。
「あ、あ、あー!」
四郎が俺の前で口をパクパクさせていた。
へたり込んでいる俺を見て驚いたようだ。
「長秀様、大丈夫ですか?」
「相当無理をなされたのですね」
俺に駆け寄り、目の前に座り込んだ。
晴親に気づいていない様だ。
「敵に襲われた」
「あやうく殺されそうになった」
「四郎、ありがとう。助かった!」
俺は四郎に軽く頭を下げた。
「え、え、えー!」
「敵ですか?」
座ったまま慌てて周りをキョロキョロと見回した。
四郎には誰も見つからない。
座ったままとは危機感が薄くないか?
まぁ俺が動けば問題はないが……。
「もう逃げたみたいだ」
「四郎もご苦労様」
「橋作りはこの城作りの偽装だから」
「橋作りは今日で終了な」
「帰って美味い飯でも食べるか」
四郎がいる事で俺はお気楽モードに入っていた。
晴親は?
気配を消し、木の陰に身を潜めていた。
姿を隠しても俺の索敵魔法にはしっかり存在が確認出来た。
多勢に無勢。
また会う事になるだろうが、今回は晴親には諦めてもらおう。
それにしても四郎、藤吉郎。ナイスタイミング!
~~~~~~~~~~~~~~~
俺と藤吉郎は伊木山築城の報告で信長のところに訪れていた。
信長の目の前で俺は藤吉郎に藤吉郎に話しかけた。
「藤吉郎、いいか?」
「難しい話になるかもしれんが、とりあえず聞いていてくれ」
「もし藤吉郎が関白になるようなら今から聞く話は何かの役に立つかもしれん」
「もしもの話だ」
信長と藤吉郎は俺の言葉に驚いたが、信長は直ぐに納得した顔に変わった。
「信長様の面前でなにを!」
「丹羽殿、わしは信長様の家来で、そんな何を言っているのですか!?」
藤吉郎は日本語にならない声を上げた。
「いや2年後3年後には必要な話になるかもしれない」
「信長様の後ろに着いて行くなら、この話は知っておくべきだ」
「知らなくて済む話ではない」
俺は藤吉郎を見つめ、藤吉郎は厳しい顔で頷いた。
信長にも緊張が走った。
「長秀、何があった」
俺は信長の問いに一呼吸おいて答えた。
「本日、伊木山城築城終了の報告に上がりました」
「その築城の様子、陰陽師安倍晴親という者に見られてしまいました」
(すみません。魔法を使ったのがバレました)
「その陰陽師、『八咫烏』の命で俺を探っていた様です」
(もう『八咫烏』に目を付けられています)
信長は目を閉じて黙っている。
何かを考えているようだった。
「『八咫烏』と陰陽師か」
「厄介なものが出てきたもんだな」
「まぁわしは織田信長であるから、当然に日の本の歴史には詳しい」
(このVRで信長を選ぶぐらいだから、歴史オタクだ)
ニヤリと笑い
「気にするな」
「長秀なら出来るだろう」
俺に丸投げ?
次に晴親に会えば何とか出来るか。
晴親に出会ったら先に魔法をぶっ放す!かな。
「で、陰陽師はどうなった」
「うまい具合に藤吉郎の部隊が伊木山に到着しましたので、晴親は逃げました」
「油断してあやうく殺れそうになりましたが、助かりました」
「次はブッ飛ばします」
藤吉郎は俺が襲われた事を聞いて驚いていたが、何も言い出さなかった。
そんな事が伊木山であったと今知ったのに。
「陰陽師は逃げたか」
「さもあらん」
「陰陽師とはそういう奴らだからな」
信長は何故か納得していた。
「信長様は陰陽師をよく知っているのですか?」
俺の問いに信長は何度も頷き、口を開いた。
「そうだな、何から話そうか」




