陰陽師、安倍晴親?
「五作、もう日が暮れる」
「途中だが橋作りを終えて弥八たちと清洲に戻れ!」
「鵜沼からの攻めは無いと思うが、くれぐれも注意するように」
「四郎は俺のところに来い!」
「最後の仕上げが残っている」
まだ日暮れには時間があるが橋作りはもう良い。
目的は達成している。
「さぁ、これからが俺の本当の役目だからな」
俺は気合いを入れた。
広さはこんなもんで十分だろう。
伊木山の山頂の大木が切り倒され、城を作りには十分な広さが出来ていた。
俺は切り株が点在している風景を眺めながら頷く。
「切り株と雑草が邪魔だな」
このままでは城が出来そうにない。
橋作りは鵜沼城の注目を引くためのもの。
真の目的は伊木山山頂の整地だ。
木を切るだけで鵜沼に見つかり、城作りの意図を悟られて兵が出てきたかもしれない。
どうやら鵜沼城から兵が来ないから上手く騙せたようだ。
四郎や五作も騙したみたいだが『敵を欺くなら、まず味方から』だ。
許せ四郎、五作。
『土魔法 開墾!』
魔法を発動させ、目の前の地面をフワフワに掘り起こした。
隆起し、大木の根が浮き出して切り株がゴロゴロとあちこちに転がった。
邪魔ですね、片付けますか。
『異空間収納 切り株回収!』
制限がない収納スペースだが見境いなく収納するとデカいゴミ箱になってしまうな。
前の世界では片付けが苦手だったので、机の上は乱雑にして仕事していた。
引き出しも無残な状況だったな。
そんな事を考えながらも切り株がポンポンと消えていく。
切り株を収納したがコレを何に使おうか?
後で細かく刻み、乾燥させて料理の燃料にしようか。
敵の城に落とす『切り株爆弾』にしてもいいか。
そんなバカな事を考えていたら、切り株が無くなっていた。
『土魔法 天地返し整地!』
俺は雑草が生えていた表面の汚い土とその下の綺麗な土の上下を入れ替え、そしてフワフワになった地面を平らに整地した。
フワフワした地面は重いローラーを掛けたように硬い地面に変わった。
うん、これなら家を建てるには十分だろう。
水はけの事は全く考えていないが、半年で美濃を攻略するつもりだから、家はそれまで保てばokだ。
俺は綺麗になった伊木山山頂を見渡した。
よし!次。
『異空間収納 屋敷、物見櫓、防護柵排出!』
何も無かった平らな土地にポンポンと家が現れる。
俺は清洲で作っておいた建物を次々と伊木山山頂に並べていった。
最後に物見櫓がドカンと立ち上がった。
ふぅ!『伊木山の1時間城』が完成。
いや、30分ぐらいかな。
鵜沼城は撤退している弥八たちを注意している筈だが、伊木山山頂に目立つ物見櫓が出来れば直ぐに見つかるだろう。
しかし、見つかるのは想定済み。
そろそろ藤吉郎たち伊木山城守備隊がここに来る頃だ。
俺は夕暮れに伊木山山頂へ来るよう藤吉郎に命じていた。
このまま城を藤吉郎たちに渡し、後の事は任せる。
そのあと鵜沼と戦いになろうが、犬山城の信清から文句を言われようが俺は関係ない。
伊木山城作りは藤吉郎が信長様に命じられた役目だ。
がんばれよ!藤吉郎、小一郎。
お前たちが早く偉くなってくれないと困るんだ。
織田には使える人間がまだ足りない。
明智光秀は?
どこにいるのか?
まだ出てこない。
「ん?」
「誰だ?隠れていないで出て来い!」
俺の索敵魔法が人の気配をキャッチした。
索敵は少し前まではキツネを表示していたが、何故か人の表示に変わっている。
あり得ない!すぐそばの大木の陰。
見られた?!
俺はその者の方向を見つめ、刀に手を置き、身構えた。
「凄いものを見せて貰いましたよ」
「驚きですね!」
「それと貴殿は気配を消している我に気づくのですか?」
「恐ろしいお方だ!」
木の陰から笑いながら男が現れた。
公家風の着物を着て、背の高い若い色白なイケメン男。
忍びには見えない。
伊木山山頂に現れるには違和感しかない格好をしている。
「我の名は安倍晴親。陰陽師である」
イケメン男はゆっくりと名乗った。
え?伊木山山頂に陰陽師が何故いるんだ?
おかしいだろう!
絶対におかしい!!




