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声を出せ!

「もっと声を上げろ!」

「俺たちは橋を作っていると、美濃を攻める意志は無いと!」

「がんばれ!がんばれ!と」

俺は脳内通信で弥八たちを監督している四郎に命じた。

「長秀様、何故声を出すことばかり命じるのですか?」

四郎がたずねてきた。

「この橋は織田が斎藤を攻める橋だが、斎藤が織田を攻めることが出来る橋でもある」

「だが、それだけではない」

「木曽川に橋が出来れば、物が運ばれ塩や美味しい魚、人々が美濃に行く事になる」

「鵜沼の者たちにも損の無い橋だ」

「物流の橋であると分かれば鵜沼が攻める来る事はない」

「絶対だ!」

「こんな事で命の取り合いはしたくないだろう」

「だから、声を出して目立つようにしろ!」

そのために俺は五作を連れて美味しい魚を鵜沼に安く売ってきた。

鵜沼城のあの城主ならこの橋のメリットに気づくだろう。

又、美味しい魚が食べられると。

「本当に鵜沼が攻めて来ないのですか?」

「では何のための橋作りですか?」

四郎が更にたずねてきた。

「くどい!」

「終わってから訳はゆっくり話してやるから、手を休めるな!」

俺は四郎との通信を切った。


「倒れるぞー!」

俺は伊木山の下にいる弥八たちに大声を出した。

『風魔法、エアカッター!』

俺の腕から風の刃が飛んでいく。

伊木山の大木が根元からスパン!と切れた。

異世界魔法で大木を切るのは定番の『エアカッター』

やっぱりこれでしょう。

ゆっくりと大木が伊木山の下にいる弥八たちに向かって傾いていく。

ドサ!

ははは、簡単に大木が倒れた。

俺は大木を魔法で次々と切り倒していく。

ガサガサ!

ズルズル!

「さぁ、引っ張れ!」

「腹の底から声を出せ!」

「せーの!」

弥八たちが縄を大木に縛り付け、伊木山から木曽川の河原に大木を引きずり下ろす。

「気をつけろ!」

「大木の下敷きになるなよ」

「しっかり見張りはつけているか?」

俺は弥八たちに大声を出す。

魔法で風を吹かせ、南側の木曽川の方に大木を倒していく。

20人で伊木山の斜面をつかい木曽川に運ぶのはそれほど大変な事ではなかった。

よし、大丈夫だ。

弥八たちは次々と大木を運んでいく。

大木の運び出しには問題はない。

弥八たちを3組に分け、大木の運搬、大木の加工、大工の手伝いをさせていた。

藤吉郎から城作りで使っていた大工を借りて橋作りは任せている。

弥八たち1組は大木の枝を払い、大工に命じられた長さの丸太に加工している。

作業分担させたので、仕事は俺の予想以上に(はかど)っていた。


「俺たち、戦さをするために集まってきたんだろう?」

「最初の仕事が大工仕事なのか?」

ノコギリで大木を切っていた男が愚痴る。

「長秀様は何をお考えなのか分からんが、橋作りも美濃攻めの1つなんだろう」

「メシは美味いし、給金もいい」

「村で遊んでいるよりも、よっぽど良い」

枝を払っていた男が答える。

「木を運んで来たぞ!」

「さっさと枝を払え!」

「長秀様に俺たちの力を見せるんだ!」

男たちの大声が飛び交う。


大木が20本30本と倒され、運ばれ、加工され、橋としてつながっていく。

「五作、進んでいるか?」

大工たちの世話をしている五作に橋作りの状況を確認した。

「木が多すぎます!」

「長秀様、橋作りが間に合いません!」

「材木が山の様に積み上がって!」

「大工たちから、不満の声が出始めています」

「どうしたら良いですか?」

五作から悲鳴のような返事が返ってきた。

「無理をしなくていい」

「大工の皆に伝えろ」

「ゆっくりで良い」

「怪我だけはするなと」

「そして声を出せ!」


side 鵜沼城

「大沢様、織田の者たちが木曽川に橋をかけています」

「いかがいたしましょう」

鵜沼城城主大沢治郎の部屋に物見櫓の兵が慌ててやってきた。

「橋?」

「橋を作っているだけなのか?」

「武装した兵は?」

「兵はどれだけいる?」

ワシの言葉に物見の兵は首を傾げた。

「そういえば武装している兵はいませんでした」

「ただ橋を作っていただけで」

「それも不思議な事に伊木山の木を切り、美濃から尾張に向かって橋を作っていました」

「何故でしょう?」

「普通なら尾張から美濃へ橋を作るのに?」

ワシに向かって物見の兵が質問を返してきた。

今まで織田が美濃を攻める時には橋を使わず、浅瀬を渡って進軍してきた。

橋など火をかければ一瞬で焼け落ちてしまう。

それが今、橋作り?

「分からん!」

「橋を作っているなら慌てる必要はないだろう」

「今日一日で橋が出来上がる事はないだろう?」

「捨ておけ!」

どんなに急いでも2~3日は掛かる筈だ。

「犬山城はどうだ?」

「何か動きはあるか?」

「犬山城を十分に注意し、何か動きがあれは直ぐに報告に来るように!」

ワシの命令に物見の兵は櫓に戻っていった。

信清殿からは何も連絡は無かった。

お互い無駄に争う必要がないと取り決めていた筈だが。

信長が信清の頭を越えて鵜沼に攻めて来るつもりなのか?

ありえない。

信清殿が許す筈がない。

ただ単に橋作りをしているだけなのか?

物の流れが良くなって………。

また美味い魚が食べられて、領民を喜ばせることが出来るが…………。

橋が出来ればワシにとって利益しかない。

織田の者達が何故?

分からん!

鵜沼城城主大沢治郎は頭をかかえた。



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