橋を作ります
「小一郎、いつ終わるのだ?」
清洲での城作りは屋敷が7軒、物見櫓、防護柵が20個出来上がっていた。
「予定より住居が多くなりましたので、後2~3日は掛かると思います」
「河尻様、佐々様の兵たちが来るとなると、住居がもう少し必要かと」
「申し訳ないですが、皆様の住居は雨、風が凌げるだけの粗末なモノになってしまいますが」
「状況を考えると仮宿程度で良いと考えております」
小一郎が真剣な顔で答えた。
おい!俺の寝る家は粗末な家なのか?
小一郎はいつも俺を最高級にリスペクトしているのに、さらりと今回は扱いが雑になっている。
「分かった!」
「小一郎、こまめに報告、連絡をよこせ!」
「俺と藤吉郎との連携が大事になるし、それが成功するか、しないかの決め手となる」
「伊木山の城作りは藤吉郎が信長様に命じられた事だからな」
「粗末な家で寝る俺はあくまでも手伝いだ!」
「失敗は全て藤吉郎の責任になると覚えて置くように!」
俺は少し声を荒げて小一郎に命じた。
そして小一郎に背を向け、弥八たちの所に行く事にした。
「いえ!丹羽様にはしっかりした屋敷に………」
小一郎はあわてて言い訳を始めたが、俺は振り返らず片手をヒラヒラと振り、その場を去った。
弥八たちは2組に分かれ模擬戦をしていた。
丹羽の兵が訓練する場所はほぼ決まった所になっていた。
そういえばあの時、勇太がいたんだっな。
もう半年が過ぎたのか、早いな。
「ほう!集団訓練か?」
「流石に弥八、何も言わなくても俺が望む訓練をしてくれるな」
俺は弥八たちを見て呟いた。
2組とも上手く統制されていて、槍を使いながら押し合い、直ぐにどちらも崩れる様子がない。
士気もあり、なかなかのものだ。
「四郎、訓練をやめさせ、俺のところに集めろ!」
「弥八たちに話がある!」
訓練の監督をしていた四郎に俺は弥八たちの集合を命じた。
「俺がお前たちの命を預かる丹羽長秀だ!」
「よく丹羽の配下として集まってくれた、感謝する」
俺は弥八たち87人を地面に座らせて話し始めた。
30近い年の男たちも十数人いるようだが、弥八と同じ十代後半の青年がほとんどだ。
顔は浅黒く、農家の次男坊、三男坊というところか?
目がギラギラしていて、ヤル気が満ちていた。
良い面構えの男達が集まっている。
飯もしっかり食っているようだ。
「急がせて悪いが、2~3日中に美濃に向かう」
「まだ戦さになるか分からないが、とりあえず武具は用意しておけ!」
「武具の無い者は四郎から借りるように」
誰一人口を挟まず、真剣に俺の言葉を聞いていた。
「四郎、皆が動けるように葵と共に直ぐに準備に入ってくれ」
「1日で帰って来る予定だから、荷物はいらん!」
「人数分の弁当だけ有れば良いだろう」
「豪華な弁当を作ってやれ!」
弥八たちにヤル気が出るようにメシぐらいは贅沢にと思っている。
「かしこまりました」
四郎は深々と頭を下げた。
顔を上げた四郎は不思議そうに俺を見つめてきた。
「どうした?」
「俺が何かおかしい事を言ったか?」
俺は四郎にたずねた。
「長秀様、1日だけですか?」
「1日で終わるのですか?」
「美濃のどこを攻めるのですか?」
弥八が四郎の気持ちを察して俺に聞いてきた。
「ん?戦さになるか分からないが、まぁ戦さになったら直ぐに逃げるつもりだが……」
「お前たちには、とりあえず橋を作ってもらう。川に架ける橋を」
俺はニンマリ笑って答えた。
「橋?!」
四郎を含め88人の男たちが一斉に素っ頓狂な声を上げた。
うん!橋!
尾張と美濃の間の川に架ける橋。
そして弥八たち美濃攻めの一歩となる橋ですよ。




