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猿啄城攻めの策です。

俺と河尻は信長の屋敷の別室に移った。

誰にも聞かれないための配慮(はいりょ)

楓には部屋の外に居て警戒してもらっている。

楓にも話の内容は秘密という事だ。

「河尻殿、今からの話は家来には秘密にしてもらう」

「知る者は河尻殿と信長様と俺だけになります」

「今回の戦さ、信長様が攻める相手は美濃の斎藤ではなく、犬山城の信清様です」

俺はゆっくりした口調で河尻に話し出した。

「それはどういう事だ」

「信長様は斎藤を攻めると言っていたはずだが」

河尻は驚き、直ぐに反論した。

「俺が調べたところ、斎藤が信清様を調略し信清様はそれを受けた様です」

「信清様は謀叛(むほん)を起こします」

「まだ犬山城には不穏(ふおん)な動きが無いようなので、信清はギリギリまで家臣たちに謀叛(むほん)の意志を伝えないつもりのようです」

「だから信長様は(すき)を作り、信清に謀叛(むほん)を起こさせます」

「織田が斎藤を攻める背後で信清が謀叛(むほん)を起こし信長様の生命を(ねら)うでしょう」

俺の言葉に河尻の顔が(けわ)しくなった。

「それが分かっていて何故お主は猿啄城を攻めるんだ!」

「何故信長様の背後を守らない!」

河尻の声が大きくなる。

「秀隆、静かに俺の話を聞け!」

「誰にも聞かれる訳にいかないんだぞ!」

俺も大声を出してしまった。

俺に言われ河尻は落ち着いた。

「俺が急に信長様の背後で守れば、信清はおかしいと思うだろう」

思慮(しりょ)深い信清が謀叛(むほん)を起こさないかもしれない」

謀叛(むほん)が起きなければ、美濃攻めはこれから常に信清を注意しながらやる事になる」

「今回の戦さは謀叛(むほん)危惧(きぐ)を取り払う戦さになると知っておいてくれ」

「もちろん謀叛(むほん)の疑いだけで信清を攻める訳にはいかない」

「『疑い』というだけで攻める事などすると尾張がバラバラになる」

「特に(すね)に傷を持つ柴田殿などはどの様に思うか?」

河尻は考え込んだ。

柴田殿は信長様の弟の信行と共に信長様に反旗(はんき)をひるがえしている。

許されたとはいえ、『疑い』をかけられてもおかしくない。

そんな者たちが尾張には他にもいる。

だからこそ『疑い』だけでは動けない。

「信清にはしっかり謀叛(むほん)を起こしてもらう必要がある」

「河尻殿、心配しないでも(すで)に小口城と黒田城は(おさ)えて信清に協力しない様にしてあります」

「もしかすれば小口城の中島殿と黒田城の和田殿が信清を攻めてくれるかもしれません」

「期待はしていませんが……」

「河尻殿、今回の戦さの目的が分かってくれましたか?」

河尻はゆっくりと(うなず)いた。

「さて、では猿啄城攻めですが」

「俺たちは信長様の美濃攻め出陣の1日前に猿啄城攻めをを行います」

「1日前に猿啄城を攻め、1日で猿啄城を落とします」

俺は静かに河尻に話した。

「無理だ!」

「丹羽殿の凄さを知っているが、とても1日で落とせる訳が無い!」

河尻がまた大声を上げる。

「静かに!」

「俺には1日で猿啄城を落とす自信も有りますし、信長様も分かっておられる」

「俺と河尻殿なら出来ると」

「だからこそ信長様は俺たちに藤吉郎の手伝いを命ぜられた」

「伊木山砦から猿啄城に奇襲をかける」

「伊木山から猿啄城は近い」

「早朝、伊木山から猿啄城を攻めれば猿啄城の兵は油断している」

「鵜沼城を攻めている織田軍が猿啄城を攻めるとは思わない」

「だからこそ伊木山に行くのです」

河尻の顔が変わってきた。

「猿啄城を落とした翌日、丹羽隊は信長様の美濃攻めと同時に裏道を使い、井ノ口、稲葉山城を攻めます」

「斎藤の兵を戦さから撤退(てったい)させるために」

「斎藤は信清が信長様の背後から攻める事を知っていますから、信長様を()るつもりで全軍で出兵するでしょう」

「鵜沼城攻めと猿啄城攻めで織田の兵が分散している事を知ればさらに」

「まさか猿啄城が1日で落ちるとは思わないでしょう」

「猿啄城を落とした織田の兵が井ノ口に向かっていると斎藤が知れば(あわ)てて撤退します」

「目の前の斎藤が撤退したのを見て信長様は反転して、犬山城の信清を攻める事になっています」

「そして信清を討ちます」

「これが俺たちが城主になれる条件です」

「河尻殿、歴史に名を残す事になりますよ」

あれ?河尻殿の顔が浮かない。

「丹羽殿、井ノ口を攻めると言っても丹羽隊は100人ぐらいの兵力だろう」

「斎藤が兵を2つに分けて信長様を攻めたらどうするのだ?」

「やはり信長様は挟み撃ちになる」

さすが河尻、そこまで考えつくか。

やっぱり出来る奴だな。

「奇襲になるので斎藤は猿啄城を攻めている兵力を直ぐに知る事は出来ません」

「城攻めなので少なくとも500人ぐらいの兵力を予想するでしょう」

「楓神子が戦さで兵が負傷しても回復出来る事は斎藤にも伝わっていて、知っているでしょう」

「それを使います」

「猿啄城を攻めている兵と猿啄城を守っている兵が合わさって1000人ぐらいの兵が井ノ口に向かっていると斎藤が知れば………」

「竹中半兵衛の忍びを丹羽の仲間に引き入れてあります」

「その忍びが斎藤に間違った情報を伝えたならば………」

俺は杏を使う。

そして半兵衛に間違った情報を伝える。

兵の数が100人を1000人に変えて。

「織田の兵1000人が井ノ口に向かっている、河尻殿ならどうなさいます?」

俺はニヤリと笑った。

稲葉山城を確実に守ろうとすれば2500人?3000人?の兵が必要か?

それはほぼ斎藤の全軍だろうな。

「ただ万が一にも1日で猿啄城が落とせなければ、丹羽隊は戦列を離れて井ノ口に向かう事になりますので、河尻殿は少ない兵で猿啄城攻めを続けてもらうかもしれません」

「猿啄城を落としても丹羽隊が井ノ口に向かった後、猿啄城の残兵を抱えたまま城を守ってもらう事になります」

「1日2日で猿啄城に戻りますので、攻められる事は無いと思いますが………」

「どうです?信長様本隊より難しい戦さになりますが出来ますか?」

俺は河尻を見据(みす)えた。

「面白い!」

「良いだろう!やろうじゃないか!」

河尻は満面の笑みで答えた。

いつも冷静な河尻殿が今日一日中、興奮(こうふん)しっぱなしだ。

「河尻殿、落ち着いて。冷静に」

「猿啄城に佐々殿も連れて行きますが猿啄城が落ちるまで佐々殿にはこの話は秘密にします」

「今回の策は信長様、河尻殿、俺の3人だけの秘密である事をお忘れなく」

俺は笑顔で河尻殿に応えた。

さぁ忙しくなるぞ!



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