表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

72/84

『八咫烏(やたがらす)』?『秘密結社』?

やっと『ラスボス』の名前を出す事が出来ました。。

物語の展開を予想しながら話を読むと楽しいと思いますので。

まだ先は長いです。

彩佳の育った白山神社は俺が想像していたよりも大きく立派だった。

鳥居から社殿まで100メートルほどの参道が真っ直ぐ伸び、大木が空高く立ち並び荘厳(そうごん)なイメージを与えた。

横幅20メートルほどある本殿はどっしりと歴史を感じる建物で、手入れもしっかりされているようだった。

本殿左横に小さな社務所もあり、社務所自体は割と新しい感じだった。

領主に守られて、領民にも好かれているんだろう。

俺たちは彩佳に連れられて本殿裏の建物に案内された。

そこには彩佳の父親が生活する小さな家があった。

「父上、居ますか?」

「彩佳が帰りました!」

「大事な客人を案内しました。父上!」

彩佳は嬉しそうに大声で父を呼んだ。

彩佳の声に反応して奥から出てきた男は背が高く、宮司と言うより武将のイメージだった。


「父上、ご無沙汰していました」

「旦那様の丹羽長秀様をお連れしました」

「奥方の楓様と家老の五作さんです」

座敷に上がった俺たちを彩佳は父親に紹介した。

丹羽家は10人ほどの小さな家だが、五作が一番の年上なので家老という役職になってもらっている。

しかし、家来が500人になろうと1000人になろうと五作を家老から変えるつもりは無い。

「彩佳の父親の新蔵と言います」

新蔵は丁寧(ていねい)に俺たちに頭を下げた。

「織田家家臣、丹羽家と神子の楓様ですか」

「はるばる安祥においでくださり感謝致します」

「で、こちらには何用で?」

松平の三河に住む新蔵だが俺に対して優しく、にこやかに対応している。

新蔵の耳にも楓の名前が知れ渡っていた。

たぶん俺の名前は楓の主人の名前としか知られていないだろう。

いつもの事だけど。

「側室という形で申し訳ないが、彩佳さんをいただきたく今日は挨拶に参りました」

俺は深々と頭を下げた。

側室という言葉を聞いても新蔵の表情は変わらずににこやかに笑っている。

「神子である楓様の噂は聞いています」

「その丹羽様の側室であれば異存はございません」

「彩佳をよろしくお願いします」

新蔵はあっさり了承(りょうしょう)した。

え?いいの?

俺は新蔵の言葉を聞いても驚いた。

「元康様の側室になるはずだった彩佳さんを俺がもらってもよろしいと?」

三河の大名の元康と俺では釣り合いがとれないだろう。

怒られる覚悟をしてここに来たのだけれど……。

「元康様はまだ小さな領主ですが、日の本一の名君になるかもしれません」

「しかし元康様の側室で彩佳が苦労するのであれば、丹羽様の側室の方が彩佳には幸せでしよう」

「彩佳が京の都に行くのであれば、彩佳の顔を見るのは最後になるかもしれませんな」

「彩佳を連れて来てくださった丹羽様に感謝すれど不満など微塵(みじん)もございません」

新蔵の言った京の都という言葉に

「え?」

楓と五作が驚きの声を上げた。

ん?俺は楓、五作たちには信長様が京に向かうと話したかもしれないが、何故?

今は足利将軍義輝が京に居て三好家と(つな)がっている。

まだ史実で信長が上洛に使った足利義昭の名前は世に出てきていない。

美濃攻めすら始まったばかりなのに尾張一国の織田が京に上洛するなど誰も想像出来ないだろう。

新蔵は俺の策略を知っているのか?

「何故、彩佳が京に行くと?」

俺は彩佳から父親の話を聞いて、もしかして新蔵は未来が()えるかもと思っていた。

なら俺の策略が成功して、京に向かう織田の軍が()えたはずだ。

それならば新蔵に直接話を聞こう。

「織田の軍が京に向かうと?」

にこやかに笑っていた新蔵の表情が急に真剣な表情に変わった。

「京の都におられる天子様を()めるものではないですよ」

「信長様が軍を()きいて京の都に向かう景色を()ました」

「天子様を利用して」

天子様を()める?

新蔵や天皇に近い人から見たら俺の考えた策略は天皇を利用しているように見えるかもしれない。

しかし将軍、諸大名といい仏教勢力も天皇陛下を(ないがし)ろにしているんじゃないか?

俺も信長もこの時代の天皇陛下の(あつか)いに大いに不満がある。

日本を象徴する天皇陛下が生活に窮乏(きゅうぼう)しているなどあってはいけないと考えている。

「では今の状態の天子様で良いのですか?」

俺の問いに新蔵はにこやかな表情に戻った。

「その考えを丹羽様が持っているのであれば、あの方たちもお許しになるかもしれないですね」

あの方たち?

誰だ?公家たちのことか?

「あの方たちとは?」

俺は単純に疑問を口にした。

俺の問いに新蔵はチラッと五作を横目で見た。

「まぁ必ずしもあの方たちに会えるとは限りませんし」

「お腹が空いてきましたね」

「彩佳、料理は上手くなったかな?」

「何か作ってくれないか」

新蔵は俺の問いを上手くはぐらかした。

五作には聞かせたくない内容のようだ。

「はい、父上」

「旦那様、ここでゆっくり出来る時間はあるのでしょうか?」

「お願いです、今日はここに泊まっていって下さい」

彩佳は俺をじっと見てお願いをしてきた。

「もちろん、新蔵さんいや義父上(ちちうえ)(よろ)しいのであれば泊めてもらいたい」

俺の『義父上(ちちうえ)』の言葉に楓と五作が

「え?」の表情で俺の顔を見た。

新蔵も驚いていた。

何か言いたそうだな。

「五作、何かおかしいか?」

「彩佳は側室とはいえ、楓と同じ俺の大切な嫁だ」

「大切な嫁の父親に最大の礼儀(れいぎ)を持つのは常識だろう」

「楓は両親ともいないから挨拶に行けないからしょうがないが」

なんか少し腹が立ってきた。

「ぷっ!」楓が吹き出した。

「五作さん、旦那様は少し変わっているの」

「いつもの事でしょう」五作がやり返す。

「私と彩佳さんが嫁だから大切って言っているけれど、鈴さんも雛ちゃんも同じ」

「鈴さんたちを守るために必ず葵さん、四郎さん、五作さんの誰かがいるでしょう」

「旦那様は時間があれば多分、雛ちゃんや美穂ちゃんたちの家にも挨拶に行きますよ」

「旦那様の近いに居れば絶対に幸せになれますから」

いつになく今日の楓はおしゃべりだ。

楓の言葉に彩佳と五作が何回も(うなず)く。

「違うぞ!楓と彩佳は特別だ!」

「俺はそんなに凄い人間じゃないし、むしろズルい人間だと思っている」

「悪いが楓と彩佳が幸せになるために四郎、葵、五作たちにも幸せになってもらいたい」

「楓と彩佳が幸せになるために、人が殺し合う事の無い世の中を作りたいんだ」

「ぷっ!」今度は新蔵が吹き出した。

「面白い御仁(ごじん)ですな」

「それでは日の本の全ての人を幸せにするという意味ではないですか」

そうなるか?

俺的には楓と彩佳の幸せしか考えていないのだが………。


「旦那様、父上がお話しがあると境内で待っています」

食事を終え、客間でくつろいでいると料理の片付けをしていた彩佳が俺に声を掛けてきた。

ん?なんだろう?

俺は新蔵に呼び出され境内に向かった。

新蔵は本殿に上がる石段に座り、俺を待っていた。

大きな神社だが、今日は参拝に来ている者がいなかった。

参道を通ってくる風が気持ちいい。

俺も前の世界の時は初詣(はつもうで)とか祭りとか特別な事がない限り神社には行かなかったからな。

この時代もそんなものだろう。

義父上(ちちうえ)、お話しがあるとか?」

俺の足音に気づいて振り返った新蔵に俺は声を掛けた。

「まぁ座れ!」

そう言われて俺は新蔵の横に座った。

「丹羽様は『八咫烏(やたがらす)』を知っているかな?」

八咫烏(やたがらす)』?

新蔵は思いかけない言葉を口にした。

「確か初代天皇である神武天皇を助けたと言われている3本足のカラスでしたか………」

前の世界でサッカー日本代表が使っていたマークに『八咫烏(やたがらす)』が使われていたな。

そのぐらいの知識しかない。

妙な質問に俺はあやふやな答えしか出来なかった。

「ん~、普通はそう答えるよな」

新蔵の声のトーンが下がり、ため息を()くように(つぶや)いた。

違うのか?

「私の言う『八咫烏』とは天子様を裏で支える『集まり』の事だ」

「楓神子様は天照大神により力を与えられたと聞いているが……」

「であれば天照大神の御子孫であらせられる天子様がどうお考えになられるのか」

「『八咫烏』の者たちが何と考えるのか?」

新蔵の言った『あの方たち』とは『八咫烏』の事なのか。

『集まり』?………「秘密結社』?

そんなもの聞いた事がない!

新蔵の話は続いた。

「『八咫烏』の力がどれほどのものか私は知らないが……」

「ただ天子様の目となり耳となって天子様を裏で支えていると聞いた事がある」

天子様の間者という事か?

「あ!」

俺は驚きで声に出してしまった。

「丹羽様、何か心当たりでも?」

新蔵は心配そうにたずねてきた。

「いや、なんでもないです」

俺の中ではまっていなかったパズルの1つのピースが今、カチッとはまった。

織田でも松平でも竹中でも一向宗でもない忍び。

あの熱田神宮にいた5人目は『八咫烏』だったんだ!

もう京に俺の存在が知られている。

電話やメールなど情報を伝える物が何もないこの時代に。

俺は京に居る怪物たちの凄さに戸惑(とまど)いを感じた。





『八咫烏』ついてはあくまでも作者の想像です。

どのように考えるのかは読者にお任せします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ