杏、丹羽家を堪能(たんのう)する。
side 杏
丹羽の屋敷の中は美少女たちがいっぱいいた。
可愛いかったり、綺麗だったりと清洲の美少女を選りすぐり集めました、というぐらい少女たちは物凄く可愛い子たちだった。
私は美少女ですと自信を持っていた事が恥ずかしかった。
少女たちは丹羽の命令でテキパキと料理を作っている。
賑やかに、楽しそうに。
屋敷の裏庭にカマドが作られ、見たこともない物が焼かれていく。
近くにいた娘に聞くとエビ、イカ、サザエという海の物だと教えてくれた。
私は海の物など食べた事がなかった。
清洲では見ることがない物だとその娘は言った。
私に名前は『美穂』だと言って、ニコニコと笑って優しく接してくれた。
「寂しいから彩佳、何か演奏してくれ」
丹羽の命令で『彩佳』さんが笛を吹き出した。
ピーヒョロ♪ピー♪
『彩佳』さんも凄く綺麗な人だ。
笛に合わせてみんなが唄い出した。
『天国、極楽~♪ えんやこらさ~♪ どっこいしょ~♪』
何なの?
丹羽は何も命じていないのに、何故みんな唄い出すの?
丹羽の者たちは唄いながら料理を作るの?
でも、みんな楽しそう。
え?ご飯が白い!
私は初めて白いご飯を食べた、美味しい!
米を食べる事があっていつも豆など穀物が混ざっていた。
美穂さんは皿にエビとサザエを乗せ、私に差し出しサザエの食べ方を教えてくれた。
「これはサザエの壺焼きて言うのよ」
と言って先の尖った箸でぐさっと刺して、クルクルと身を引っ張り出した。
丹羽の者たちでもサザエの壺焼きの食べ方を知らない娘がいた。
「私は海の近くで生まれたから、サザエの食べ方を知っているの」
美穂さんはふふっと笑った。
ここにいる娘は清洲の者だけでないみたいだ。
三河の娘もいるのかな?
丹羽は料理の仕方を教えながら、網の上のアワビを焼いていた。
少女たちがキャーキャーと騒ぎながらご飯を食べていても怒る様子は無い。
優しいの?それとも美少女に甘いの?
「お客さまの杏さんが来たから、今日は凄いご馳走になりました」
「こんなにたくさんのエビやアワビを食べた事は今まで無かったですよ」
「ありがとうね」
美穂さんが私にお礼を言ってきた。
私はお客さまでは無いんですけど。
美穂さんが言うには丹羽の食事は他より贅沢で美味しいらしい。
太らないように注意していると、羨ましい悩みを私に言った。
丹羽の少女たちはみんな綺麗で可愛く、凄く優しかった。
そして胸が大きい!
こんな楽しい所を私は知らない。
私も丹羽の仲間になりたい!
またここに来たい。
丹羽様は言ったよね、『友』だって!
丹羽家自慢の風呂にも入り、杏は丹羽の凄さ楽しさに驚き、堪能して美濃に帰って行った。
彩佳の父親に会うのが1日遅れたが、しょうがない。
伊賀と結ぶ者を見つけたのは大きい、まだ先の事になるが。
杏は半兵衛に何と伝えるだろうか?
小遣いをあげたから、上手く言ってくれるだろう。
俺はふたたび楓、彩佳、五作を連れて彩佳の実家に向かうことにした。
海鮮バーベキューが鈴たちアイドルにウケたので更に遠回りして海沿いを進み、海産物を買い集めていた。
「旦那様、早く父に会いに行きましょう」
俺が彩佳の育った安祥を通り過ぎて遠回りしている事を怒っていた。
早く父親に会いたいようだ。
彩佳の顔が急に曇って俺に向かって話し出した。
「父は変わり者なので心配なのですが……」
「色んな事を夢で見るとか」
「元康様が奥方を殺すとか」
「元康様が日の本一になるとか真面目に言うんですよ」
「信長様が能で転ぶとか」
「父が旦那様に変なことを言っても怒らないで下さいね」
「本当は父は真面目な普通の人ですから」
彩佳は心配しながらも父親の話が止まらない。
彩佳は父親のことが大好きみたいだ。
早くに父親を亡くした楓が気分を悪くしていないか気になったが、気にする様子もなくニコニコと彩佳の話を聞いていた。
五作は歩きながらずっと押し黙っていた。
秀隆が海産物を大量に買い付けている事を五作は考えていた。
小さな漁村は比較的平和である。
戦さは土地、米を取り合い、海に目を向けない。
魚介類は贅沢品と考えられていた。
川魚は普通に食べるが、海魚は特別な日にしか食べない。
民は米を欲していた。
穀物も欲しい、とにかくたくさん食べたいと。
米でないと腹一杯にならない。
魚介類ではお腹を満たす事が出来ない。
だから塩害で作物を作る事が難しい漁村に目を向けない、争わない。
長秀様は分かっているのに魚、干物を大量に買っている。
お金はたしかにある。
少女たちが魚介類を喜んで食べているのを私も見ている。
みんなを喜ばせるため。
ただ、それだけのため?
長秀様は何をしようと考えているのだろうか?
五作は歩きながら、その事をずっと考えていた。




