海で海鮮バーベキューをやります
「わー!綺麗ですね」
楓が海を見つめ大声で叫んだ。
夏の海は青く透き通っていた。
今日は天候が良く、風も穏やか、海の匂いも心地よい。
俺たちは岡崎に向かう途中に遠回りして海沿いを歩いていた。
波打ち際で楓と彩佳と遊び、水平線を眺め、砂浜で貝を取り、楽しい時間を過ごしていた。
この時代は乱獲されていないらしく、大粒のアサリが大量に取れた。
海岸沿いを通り、俺は漁村に立ち寄り海産物を大量買いをする事にした。
20軒ほどの家が海に沿って立ち並び、魚が所狭しと干してあった。
「五作を連れてきて正解だったな」
五作がここで活躍してくれた。
「長秀様が大量の魚を入れる特別の術があるから出来るのです」
「私はただ、むかしにしていた行商の様にしているだけですから」
五作は俺の役に立っていることを喜んでいた。
俺の異空間収納は時間が止まるから、腐敗が心配無い。
五作は漁から帰ってきた船からどんどん魚を買っている。
五作には食べられれば良いからと伝えて、魚の買い付けを任せていた。
五作も分かっているから、『大丈夫か?』と思う値段で買い叩いていた。
「大丈夫ですよ」
「今日は大漁だったみたいで捨てる予定、自分たちが食べる予定の外道もたくさんあるみたいですから」
外道とは獲る予定でない魚の事で、サバの群れの中に鯛が混じっていたらしい。
値段が高い鯛が取れた事で値段交渉が難しいと思われた。
しかし大漁だった事で漁師の機嫌も良く、トラブルなく値段が決まっていく。
エビ、イカが今が旬らしく、たくさんのエビ、イカも買うことが出来た。
高級食材の鯛、金目鯛も手に入った。
海からそれほど遠く離れていない清洲でも魚は生のまま食べる事が出来なかったので、鯛が刺身で食べられると思ったら嬉しい!
わさびは無いが、醤油はあるから。
アワビ、サザエの貝類も手に入った。
並んでいた干物も全て買い入れた。
今日は俺がここにある全ての魚を買っているみたいだ。
腐敗するから美濃辺りで食べる海産物はどうしても干物になる。
海産物は干物でも美濃では高級食材だ。
美濃で城を落とせば守備としてその城に留まる事になる。
時々兵たちが米と野菜ばかりではなく、魚が食べられるなら。
酒の肴に刺身が食べられるなら、兵の士気は上がるに違いない。
猪の肉、焼きエビ、サバの味噌煮、アサリの味噌汁。
丹羽隊の兵たちはなんて幸せなのだろう
俺は漁村にあった空き家を借りて海鮮バーベキューをやる事にした。
せっかくなので海を満喫します。
土魔法でカマドを作り、持って来た鉄板を乗せた。
薪の火を上手に調節しながら楓がテキパキとエビ、イカ、大アサリ、サザエを焼いていった。
ジュー!と音がして鉄板から醤油の焦げた匂いが立ちのぼり食欲をそそる。
もちろん肉、じゃがいも、椎茸なども焼いていく。
「こんなの初めて!」
彩佳が声を上げる。
「凄い贅沢ですね」
五作が応える。
「鈴ちゃんと雛ちゃんに怒られそうですね」
楓が俺に向かってニッコリと微笑む。
「時々はここに来るから、みんな遠慮せずにどんどん食べてくれ」
「食材はまだたくさん有るから」
俺の声に応え彩佳がエビにしゃぶりつく。
幸せそうな顔になる。
可愛い!
楓も五作も美味しそうに食べていた。
サザエの壺焼きは食べ方が分からなく、俺が教えるまで誰も手を出さなかった。
時々来ると言ったが、やっぱり海でやる海鮮バーベキューは贅沢だよな。
幸せそうに食べる楓と彩佳を見ていて、海岸沿いを遠回りして良かったと思った。
楓と彩佳は特別だからね。
信長は元の世界にいた人間だから、当然の如く醤油を作り出していた。
清洲では武将たちにも醤油は手に入る物になっている。
信長は醤油以外にも未来の知識を使い農地改革を行い、米の生産量も増やしていた。
米が増えた尾張では民が飢えて苦しむ事はない。
余った米を他国に出してもいる。
津島の港を栄えさせ、流通も整え、戦さも無く、人も集まり尾張は他国よりも豊かになり始めている。
しかし飢える事が無く、食べられるだけでは足りないと思う。
肉を食べ、魚を食べ、歌を聴いて、騒いで楽しんで実感する筈だ。
丹羽家は凄いのだと。
尾張は天国、極楽のようだと。




