「麻薬音楽」という考え。
俺は広間に楓、四郎、葵、五作、鈴、雛、彩佳と美玖たち全員を集めた。
皆が緊張し真剣な目で俺を見つめている中、鈴と雛がニコニコと生き生きしている。
俺の思いつきで命令する事に慣れたのだろう。
そう!また思いつきの命令です。
「まず、これからの予定だが………」
「俺と楓、彩佳、五作で三河に行ってくる」
「三河で楓神子を広げるのと、海産物の買い付けをしてくる」
「時間があれば彩佳の親に会ってくるつもりだ」
楓、彩佳、五作が頷く。
「次に四郎」
「弥八と繋ぎをつけ、兵が何人集まったか確認し、清洲での住処を準備しろ」
「清洲への移動は10日後ぐらいで、美濃を攻略すれば手に入れた城に住む事になるから清洲での住処は簡単なもので良い」
「必要であれば武具の調達も弥八と相談して進めるように」
「全員に槍を持ってもらうが、刀が欲しければ与えよ」
四郎が頷く。
「葵は残りの皆の警護と来客の対応だ」
「今回の事もあるから、訪問者には十分に注意してくれ」
「家事は鈴たちに交代でやらせろ」
「みんな一通りの家事を覚えて欲しいからな」
操と香が顔を見合わせた。
何かありそうだが、黙っているか。
葵は大きく頭を下げた。
相変わらず葵は礼儀正しい。
「さて、残りの者たちだが、みんなで踊る新しい曲を考えてくれ」
「少し難しい事を言うが、確実に理解しろ」
ニコニコしていた鈴と雛が真剣な目で俺を見てきた。
俺は左手で右手首を軽く掴み、脈を測るやり方を見せた。
「みんなも同じ様にしてくれ」
「指先でトクントクンと拍子を打つのが分かる筈だ」
楓、彩佳、五作までも右手首を握っている。
「脈と言い、人が生きていれば、ある一定の拍子を打っている」
美穂と香が上手く脈を見つけられず、焦って玉恵にやり方を聞いていた。
通常、人は1分間に70~80回の心拍数になる。
「この速さより少し早い拍子で曲を考えて欲しい」
「とん、とん、とん」
口で拍子を打つ。
俺は1分間に120回ぐらいになる様に拍子を打ってみた。
「この速さの拍子で曲を奏でれば、勝ってに曲を聴いた者が高揚していく筈だ」
緊張した時、軽い運動をした時、そして好きな異性に会った時の心拍数だ。
音楽で心拍数を上げてやる。
心拍数を上げて、自分が高揚していると錯覚させる。
「美玖、お前は太鼓だから重要になる」
「しっかり覚えてくれ。責任重大だ」
俺の言葉に美玖は涙目になった。
「美玖、難しく考えるな」
「直ぐに新しい曲を作れとは言わない」
「みんなと一緒にゆっくり作れば良い」
「時間はある」
「稲葉山城が信長様のものになった時に祝いの場で新しい曲を披露したい」
「しかし、のんびり考えるな」
「俺は早くて半年で信長様に稲葉山城を手に入れてもらうつもりだ」
「なら、練習の時間もそれ程長くないぞ」
皆が頷く。
音楽は一種の麻薬だと思っている。
『ロック』とか『サイケデリック』とかをこの時代にぶつけても、ただの雑音にしか聞こえない。
しかし、娯楽の無いこの時代の民衆は簡単に音楽によってハイな状態、トランス状態になる筈だ。
一度ハイな状態を手にすれば、俺たちの曲から離れられなくなる。
行き過ぎはダメだから、見極めが大切になる。
先ず、曲は8ビートで
「2曲を考えるなら、後の曲は更に少し拍子は上げる」
「拍子だけでなく、それに合う笛や琴の音色も大事だ」
「全部で3曲ぐらい欲しいな」
「みんなにとって手探りの曲作りになると思うが、楽器の練習のつもりで」
「楽器には関係ないが、鈴と雛の2人を中心に進めてくれ」
「俺の考えた曲を超える曲を作って欲しい」
何故か全員が頷いた。
え?楓と四郎、葵、五作は関係無いのだけど………。
丹羽家の中心になる施策だから全員で理解するのは良いか。
俺は犬山でアイドルライブをして気がついた。
魔法を使わなくても、鈴と雛が踊り出せば皆が勝ってに乗ってくれると。
まだ踊り始めには魔法の『高揚』が必要かもしれないが。
この時代の民衆はシャイだから少しは背中を押した方が良い。
犬山でのアイドルライブの盛り上がりは予想以上だった。
確かにこの時代に無理のない名曲を使っているし、鈴と雛の衣装もインパクトは十分だ。
神子の楓がセンターで、鈴と雛が脇を締める。
裏センターは彩佳だな。
ただ演奏するだけでは、もったいない。
曲の説明でもさせようかなぁ、MCとして。
美玖や美穂も捨てがたい。
十分にセンター、フロントに置ける美少女だから。
新しい曲は歌詞も欲しいから、歌唱力も必要になってくるな。
元の世界では地下アイドルとか地元アイドルとかいて、アイドルが低次元化して親しみ易いのは良いが乱立していた。
俺は一切真似を出来ないアイドルグループにする。
俺のアイドルたちは『女神』化して民衆の手の届かない位置に置く。
崇拝させて、大衆を『愚民』化させる。
愚民たちよ、俺のアイドルたちにひれ伏せ!




