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犬山での攻防

「丹羽殿が私に何用ですかな?」

俺は楓と四郎を連れ、織田信清の家臣中島豊後守の居城、小口城に来ていた。

小口城は平城ながら広い堀に囲まれた、なかなか大きな城だった。

俺たちは直ぐに城の大広間に通され、中島豊後守に会うことが出来た。

「これほど犬山が騒がしくなるとは思わなかったので、挨拶に参りました」

「挨拶が遅れて申し訳ない」

俺は城主の中島に軽く頭を下げた。

「これはかたじけない」

「今、噂の信長様重臣丹羽殿が挨拶に来られるとは」

「豊後守、いたみいります」

中島はにこやかに答えた。

城主の中島は中年の物腰の柔らかい武将だった。

代々織田信清の一族に仕えてきた家老なんだろう。

河尻と違い、武将としての凄みは無かった。

「これから美濃に攻める時に中島殿に不快な気持ちでいられたら織田軍の戦意に響きますので」

「奥の楓を連れてきましたのて、家来に負傷している者がいればお役に立ちたいと思っています」

あれだけの騒ぎを起こしたのだから、中島にも楓神子の噂は耳に入っているだろう。

俺の事を知っているなら、楓神子の力も分かっているな。

「丹羽殿、それは助かる」

「針綱に行った者たちもいるだろうが、神社ではお金が掛かるからな」

「行けなかった者もいると思う」

「すまないが、直ぐに集める事が出来ないので、また明日に来てくれないか?」

中島はそう言って俺に頭を下げた。

「大丈夫です」

「では明日改めてお伺いに参ります」

城内にピリピリした雰囲気は感じられない。

これで良い!

特に中島は用心していない。

強く押せば落ちそうだ。

俺はニンマリしながら小口城を後にした。


「葵、黒田城の民衆が楓神子の噂をしているか調べろ」

「調べとは関係なしに楓神子が犬山の針綱神社で癒しを行い、人々を集めたとの噂を立てろ」

「とにかく騒ぎを起こせ」

「四郎、五作。鈴たちを警護して清洲の屋敷に戻れ」

「もう犬山は敵地と思い、十分に警戒しろ」

小口城から戻った俺は次々と命令を発した。

「『じんべぇ』犬山城に動きはないか?」

俺は脳内通信を使いカラスの『じんべぇ』に連絡を入れた。

『じんべぇ』には俺たちが犬山に入って来てから犬山城を監視させていた。

城の出入り口近くの木にカラス1羽が止まっていても誰も気にしないだろうと考え、『じんべぇ』を監視役に置いていた。

「ボス、少し前に美濃の人間らしき3人が城に入りました」

「先頭に若い細い男、後ろに中年の男が2人です」

「ボスの言う通り、左右を警戒し用心深く城に入りましたので間違いないと思います」

調略を掛ける者は必要以上に周りを警戒してしまうからな。

道三じじいの言う通り、斎藤が調略に来たか。

若い男は半兵衛かな?

半兵衛なら考え着きそうな策略だな。

言い出し本人のお出ましか。

「『じんべぇ』城の出口で待機を続けて」

「その3人組が出てきた様子を見ていてくれ」

「用心深く出てきたなら、直ぐに報告を頼む」

調略が成功すれば更に用心深く行動する。

分かり易いな。

「よし、各自行動を始めろ!」


「丹羽殿、来てくれて感謝する」

敵対心が無い事を昨日確認し、今日は俺と楓の2人で小口城に来ていた。

カラスの『じんべぇ』よりの報告で3人は用心深く出口から出て行ったと。

半兵衛は調略に成功したようだ。

まだ小口城には犬山城の寝返りの話は伝わって無いだろう。

「何か結構な人数が集められているみたいですね」

俺の索敵魔法に隣の部屋から大人数の人の気配が表される。

殺意は無い。

「では、直ぐにやりましょう」

部屋には30人ほどの負傷者が集まっていて、引退したような年寄りも居た。

先の戦さだけでなく尾張が昔から戦さが続いていた事が分かる。

手や目を失った者もおり、簡単な『ヒール』では対処出来ない者ばかりだった。

なるほどこれならお金が掛かるな。

「楓、頼むぞ」

楓は手を合わせ何かを念じ、時には怪我人の身体に手を添える。

楓の神子真似は慣れたものだな。

俺は魔法を使い次々に治療していった。

『ハイヒール!』『肢体復元!』『眼球復元!』

治療を終えた俺たちに中島は声を掛けた。

「丹羽殿、感謝する」

「楓殿も」

流石に家老ともなると感謝の順番は間違えないな。

中島の声に治療の終わった者も含め、小口城の家来全員が頭を下げた。

「同じ織田として戦う味方同士、出来るだけの事をするのは当然です」

「中島殿に感謝され、ここに来た甲斐がありました」

中島はにこやかに頷いた。

「ではせっかくなので、余興でも致しましょう」

「楓、頼む」

楓は打ち合わせ通りに天に祈る仕草をした。

(創造魔法、落雷発動!)

ドカーン!城内に大きな音が響いた。

俺は中庭の大木に雷を落とした。

小口城の武将たちは雷の音に腰を抜かし、その場に座り込んでいた。

楓は耳に塞ぎ、目を固く閉じていた。

楓、その表情も可愛いな。

大木は縦に真っ二つに裂け、炎が立ち昇っていた。

「丹羽殿、何をなさるのですか?」

中島の声は(わず)かながら震えていた。

「すまない。つい楓神子の力を自慢してしまいました」

「楓神子は怪我人を治すだけではないのですよ」

「楓神子の力が凄い事が分かってもらえたと思います」

「安心して下さい。楓神子は信長様のお味方です」

「楓神子がいる限り、斎藤など屁でもありません」

「この力で織田は京に上り、日の本の覇者になるでしょう」

雷に驚き、声を無くしていた小口城の武将たちに俺は強く言い放った。

あれ?反応がない?

誰も何も応えない?

「ウォー!」「オー!」

少し間が空き、小口城の武将たちが声を上げ、(ひざ)を叩いた。

「斎藤、恐れずに足らず!」

「楓神子様!織田に居てくれてありがたい」

中島は喜び、立ち上がり俺の両手を掴んだ。

「丹羽殿、織田は神軍になるんですね」

ん?そう!神軍になるんだ!

神軍????







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