戦略の天才、竹中半兵衛が動く。
俺は道三じじいに今までの経緯とこれからの計画を話した。
あくまでも計画だ。
四郎には周りの人の気配に注意を払わせ、俺と道三じじいとの話を聞かせないようにした。
四郎も気づいているのか、一定の距離から俺たちに近づこうとせずウロウロしている。
今後の計画は極秘だ。
計画を聞いた四郎は先ず葵に話し、自慢するだろう。
『長秀様からの信頼は厚い』とか言いながら。
その計画が楓に伝わり、鈴に相談する事になるだろう。
楓にはとんでもなく重い役割が与えられるから。
これが彩佳や玉恵たちにも伝わり、秘密が秘密でなくなってしまう。
計画を話せるのは軍師で幽霊の道三じじいだけだ。
道三じじいには俺が何者であるかは話さず、先ず美濃攻略で今まで何をしてきたかを俺は話し出した。
話が長くなるので、松平元康の事は後で話す事にしよう。
楓を神子に仕立てアイドルを作り、尾張の民衆掌握をしてきたこと。
義龍を暗殺し、加治田を調略をしてあること。
これから魔法と犬たちを使い、どう美濃の城を攻めるつもりか。
美濃を攻略した後の上洛はどうするか。
俺は話は長くなっていた。
「なかなかやるでないか」
「なるほど、唄で信長を褒めているのか」
「ほぉ、面白いことを考えるな」
「神子はそこまで考えていたのか、驚きだな」
道三じじいは時に笑い、驚きながら俺の話を聞いていたが、所々で首を傾げ顔を歪めた。
「じじい、何か言いたそうだな」
「俺の行動、考えに失敗、間違えでも有るのか?」
俺は全てを話した後で道三じじいに尋ねた(たず)ねた。
道三じじいは苦笑いしながら
「信長のやつといい、おぬしといい、とんでもない考え方ををするな」
「しかし、神子だけで良いのに、そのアイドルとか言う少女たちの集まりは必要だったのか?」
「まぁ、良いが」
じじいはそう言ったがアイドルは俺の趣味?いや夢だからな。
楽しみが無ければ、こんな殺伐とした戦国時代などやっていられない。
俺は無理矢理にココへ送られて来たのだから。
「信長もそうだが、おぬしも少し甘い所があるな」
「何故か味方を信じすぎてしまう癖があるな」
「ワシなら………」
道三じじいは間を開け、俺を見つめる。
「犬山城主の信清を何故信じられる?」
「お前たちが稲葉山城を攻めた時に信清が犬山で織田の退路を塞ぎ、斎藤と挟み撃ちにすれば、信長は終わりだな」
「ワシなら全力で信清を調略するな」
道三じじいはニヤッと笑った。
俺はじじいの話す内容に寒気を感じていた。
side 稲葉山城
「半兵衛、信長を殺る策があると申すのか?」
竹中半兵衛は義父の安藤守就を連れて斎藤龍興の屋敷に来ていた。
父、竹中重元の隠居により、半兵衛は竹中の家督を継いでいた。
重元の隠居には丹羽長秀との出会いが影響を及ぼしていた。
長秀の威圧に恐れをなした事で、己が老いてしまったと考えてしまったからなのだ。
「はい、一気に織田軍を殲滅させ、上手くいけば信長を殺る事が出来るでしょう」
半兵衛は龍興に自信を持って答えた。
「犬山城主、織田信清を調略いたします」
「木曽川を越えて来た織田軍を背後から攻めさせ、織田軍の退路を断ちます」
「信長は義龍様の死で美濃がまだ混乱から立ち直っていないと思っていますので、近々織田全軍で稲葉山城攻めをしてくるでしょう」
「それを利用して東から大沢基康殿、多治見修理殿西から安藤守就殿、稲葉一鉄殿南から信清と三方から織田を囲み、全滅させます」
「時期はたぶん米の刈り入れが終わった頃、場所はここを真っ直ぐに向かって新加納辺りになるでしょう」
「米の刈り入れまであと2ヶ月」
「織田は準備を進めているでしょう」
「こちらも時期と場所が分かっていて準備をすれば織田全滅は容易いと思われます」
半兵衛は流れる様に話を続けた。
はん!と龍興は手を叩いた。
「半兵衛、良いぞ。よく思いついた」
「上手くいけば尾張も手に出来るかもしれぬな」
「で、信清を誰が調略する?」
半兵衛は龍興の目が『おぬしがやれ!』と命じていることを理解出来た。
龍興は熱く半兵衛を見つめていた。
これほどの大役、他の者に任せる事は出来ないと思われた。
「信清の調略には私が向かいます」
「では直ぐに取り掛かります」
半兵衛の言葉に龍興の顔に満面の笑みが溢れた。
「よし、半兵衛。任せた」
無敵だと思われた長秀が苦しめられる事になる最大の強敵。
戦略の天才、竹中半兵衛がついに動き出した。




