楓さん、狩りに行きましょう。
楓さんに連れられ、屋敷のひと部屋に案内された。
途中誰にも出会わなかったが、先づ着替えをしないとね。
湯にも入りたいが、今夜は身体を拭くだけにしよう。
信長の屋敷といっても、湯殿が2つも3つも有るわけではないし。
湯の入った桶と着替えを用意してもらった。
「身体を拭くのは自分でしますので……」
裸を見られるのは恥ずかしい。
伽の許可があるとはいえ、今日会って直ぐには。
元の世界では、風俗の経験は有りますけど。
この先、何をすればいいんだろう?
まぁ、魔法が使えれば無敵だから何とかなりそうだけど。
とりあえずステータスを確認しよう。
「ステータス、オープン」
名前 ユージ・ヤマト
年齢 17
職業 魔法使い
レベル 182
HP 2550
MP 3870
特殊能力 創造魔法、自然回復、経験値×200、経験値パーティー内分与、脳内通信
魔法 火、水、風、土、光、闇、空間
スキル テイム、鍛治、料理
力 S
速さ S
知性 SS
精神 A
運 SS
能力はそのままになっている。
楓さんのステータスは?
俺に見つめられた楓さんはもじもじし始めた。
可愛い!
いや、そーゆうのはしないから。
とりあえず、まだ!
楓さんのステータスは………見えない。
リアルVR世界だからレベルとか無いのかな?
経験値のパーティー内分与は出来ないかな?
俺が魔法を使える状況なのだから、楓さんも経験値で成長する筈だ。
実験をするために、明日は狩りに行こう。
「寝ます。おやすみなさい」
俺は布団の中に入った。
「狩りに行きたいので、楓さん案内してください」
とにかく外の様子を見てみたい。
本当に戦国時代に召喚されたのか。
楓さんに信長から刀と弓を貰ってくるように頼んだ。
直ぐに楓さんは戻ってきた。
装備を整えて、俺達は屋敷を出ることにした。
信長の屋敷は天守閣の隣に建っていた。
屋敷の前には何も無いだだっ広い庭があり、ここに戦さの時には兵が集まるのだろう。
大きな門を通る時に槍を持った門番と目が合った。
門番は直ぐに目を逸らしたが、楓さんと一緒にいたせいだろうか?
通りを挟んで家が立ち並び、瓦屋根や茅葺き屋根もある。
10分も歩くと城下町を抜けた。
その先には畑に囲まれた家がぽつんぽつんと有るだけだった。
「ここから狸や猪がいる山には、さらに20分ほど掛かります」
俺は馬に乗れないから、歩いて行くしかないか。
「楓さんは馬に乗れるの?」
「馬に乗れるのは侍大将か国衆の主人ぐらいです」
「楓さんは信長様の近習では?」
「女性で馬に乗れる者はいません。たとえお市様でも」
良い馬が有ればテイムしようかな。
馬に乗らないと戦国時代らしくない。
「時間がもったないから、楓さん走りますよ」
楓さんに身体強化魔法を掛けた。
魔法が楓さんにすーっと入っていった。
「えっ?ええー?」
楓さんは自分の走る速さに驚いていた。
1分で山の入り口に着いてしまった。
「走るのが速くなる魔法を掛けました」
「魔法?」
「手のひらから炎が出たのを楓さんも見たでしょう」
「あれには驚きましたが、今のは何も出ませんでした」
魔法はものが出るものばかりではないのですが。
楓さんに強化魔法が使えるのなら、他の武将や足軽にも強化魔法は使える。
「楓さんは弓は出来るの?」
「上手ではないけど、練習はした事はあります」
「今日は弓を使って下さい」
能力が上がるか確かめるには弓が良いだろう。
「では、狩りを始めますか」
索敵魔法を動物をターゲットにして200mまで広げてみた。
たくさんの生き物の反応があった。
小さな反応は鳥だろう。ちょっと大きな反応は5つあった。
山の木々が邪魔して獲物を弓で射るのは少し手間だな
ちょうど人は居ない。
「楓さん、俺の背後に回って耳を塞いで下さい」
俺の取得経験値を楓さんに全振りして。
「創造魔法 サウンドバズーカ」
大音量とともに山の木々が大きくざわつき、多数の鳥が飛び去っていった。
野生の動物は音に敏感だから、ショック死か気絶しているだろう。
「キャー!」
振り返ると楓さんが両手を上げていた。
経験値 4〜5匹×200
2000以上の経験値がぶち込まれたか?
「楓さん、どうしたの?」
「急に突風のような何かが全身に」
自分のしている姿に気づき、とっさに両手を下げ、恥ずかしそうに俯いた。
成功した!
数値は見れないが能力は上がっているだろう。
「楓さんは少し休んでいて下さい」
楓さんをその場に座らせると、俺は木々の間を走り回った。
ショック死していた狸3匹と猪1匹を異空間収納に入れた。
俺の異空間収納は容量が無限大、時間停止でいつでも新鮮だ。
今夜は狸汁を作ってもらおう。
その後、楓さんに山鳥を弓で仕留めてもらって今日の狩りは終わりにした。
何故か弓が上手くなったと楓さんは首を捻っていた。
数日間狩りを続け、楓さんの能力は爆上げをしていた。
「能力が上がった事は誰にも言ってはいけない。信長様にも」
「お伝えしてはいけないのですか?」
「信じてもらえると思っているの?」
経験値×200を全振りしてるなど、普通信じてもらえないだろう。
「俺が直接信長様にお伝えします」
信長と2人だけで話が出来る機会を作ってもらえるよう、楓さんに依頼した。
予想より早く、2日後に一緒に会食をすることになった。
もちろん楓さんも一緒ですよ。