彩佳が奏で、鈴、雛が踊る。
「ただ今より公開練習を始めます」
五作が観客に向かって声を張り上げた。
どれだけの人が集まっているのか?
俺は本殿から境内を見渡した。
500人ぐらいか?いや、1000人以上いるぞ。
楓神子は尾張では知らない人が居ないぐらい有名だからな。
「わー!」「おおー!」「可愛いー!」
演奏する彩佳たちが現れるとざわついていた観客から一気に歓声が上がる。
彩佳はピンクの巫女服、玉恵たちはライトイエローの巫女服で統一させた。
ん!似合っていて可愛い。
観客のほとんどが暗い茶色やくすんだ緑色の地味は服を着ているので、彩佳たちがいかにもアイドルという感じになる。
どうだ!俺のガールズバンドはみんな可愛いだろう。
彩佳たちは予定の立ち位置に着いた。
琴も台を作り、立って演奏出来るようにした。
ガールズバンドと言っているのだから、床に座っての演奏はかっこ悪いと思ったからだ。
うん!サマになっている。
続いて楓、鈴、雛が現れる。
「楓神子様ー!」「鈴様ー!」「雛ちゃん〜大好き!」
ご近所に雛の親衛隊もいるのか?まぁ出来ても不思議はないけど。
何度目かの熱田神宮での公開練習になるのでリピーターも多く居て、歓声も慣れたものだ。
楓たちも落ち着いている。
彩佳の合図で演奏が始まり楓、鈴、雛が舞い始めた。
ゆっくりとした曲が神宮の境内に流れる。
観客は静かになり楓たちの巫女舞に魅入っている。
よし、今だ!
「拡大ヒール、発動!」
本殿から白く輝く光が広がり、俺の魔法が境内に居る観客を包む。
「うぉー!」「おおー!」「ありがたい!」
観客は一斉に手を合わせ、どよめきが響く。
観客のほとんどがコレを目当てに来ているのだから期待は裏切れないよね。
楓の神格化はまだ続けないと。
でも、今日はこれだけでは無いよ。
俺のアイドルたちをしっかり教えてやるよ。
「楓神子様ー!」「神子様ー!」
楓への歓声が終わらない。
巫女舞は神聖な舞なので普通は静かに観るものだが、仕方ない。
やはりというか、当然というかミスなく楓たちは巫女舞を終えた。
さあ、音楽の歴史が変わるぞ!
楓、鈴、雛が舞台から消え、彩佳たちだけの演奏が始まった。
俺の記憶と笛、琴、太鼓の和楽器での『Fー1』のテーマ曲。
テンポも遅く、オリジナルの凄さには程遠い出来だが、しょうがない。
「創造魔法、魅了小、拡大発動!」
俺は観客を盛り上げるために『魅了』の魔法を使った。
『ヒール』とは違い、光など発しない魔法だから使いやすい。
観客は誰も俺の魔法に気づいていない。
初めて聴く曲に戸惑って醒めない様に魔法を使った。
観客も慣れてくれば、この曲の楽しさ、凄さが分かるだろう。
美玖、ここで太鼓で強く、細かくビートを刻め!
さあ、彩佳。そこから前中央に出て来い!
この曲の見せ場だ!
お前の魅力、可愛さを観客に存分に見せつけろ!
彩佳の魅力を見せるために俺はこの曲を選んだのだから。
♪^~♪♪♪ う!美穂が音を外した。
気にするな。
どうせ観客は初めて聴く曲だ、誰も気づくはずがない。
ん?もしかしたら本殿裏の人は気づいたかも。
まぁ、いいか。
「すげえ!」「おもしろい!」歓声も上がってきた。
観客が曲に合わせて身体が揺れ始めた。
『魅了小』だから、このくらいなのかな?
彩佳たちの演奏が終わると観客から大きな拍手が上がった。
この曲の良さが分かったみたいだ。
さあ、ドンドン行くぞ!
「創造魔法、魅了大、拡大発動!」
俺は鈴と雛の登場に合わせ魔法を放つ。
魔法を使わなくても鈴と雛は綺麗で可愛いから大丈夫だけど。
「わぁー!」「可愛いー!」
天女の衣装に変わった鈴と雛の登場で観客のボルテージは頂点に達した?
天女の衣装のインパクトは凄いみたいだ。
彩佳たちの演奏が始まる前に鈴と雛がスタンバイポーズをキメる。
う、カッコいい!
「雛ちゃん~!」
うるさいぐらいに観客は雛の名前を呼ぶ。
鈴には女性ファンも多いが、雛は圧倒的に男性ファンだ。
曲が始まり、彩佳の奏でる高音の笛の出だしが心地よい。
オリビア、ニュートン=ジョンの曲はやっぱり名曲だなぁ。
ゆっくりしたテンポで鈴と雛が優雅に踊り出した。
「ふうー」というため息が観客から漏れる。
羽衣を似せた布をはためかせ、腰でリズムを取る。
軽く腰を振るだけで着物の裾から白い短パンが見える。
う!どうしても踊りより鈴と雛の太ももに目がいってしまう。
白い短パンをチラチラ見せられると短パンだと分かっていても興奮する。
観客の男たちも興奮しているんだろな。
ん?この時代の男はパンチラを知らないかも?
いや、パンチラは世界の男たちの永遠の夢なのだ!
俺の夢をみんな理解してくれるだろう!
ミニスカ着物を着た鈴と雛はもはやコスプレアイドルにしか見えない。
よし!次の衣装はさらに過激にしよう。
メイド?ゴスロリ?俺の妄想が大きく膨らんでいく。
「ハブ、ネバ、ビー、メロ」
ワンフレーズだけ鈴と雛が唄う。
この言葉だけ強く印象付ける為に。
ワンフレーズだけでも鈴と雛の歌声に癒されるなぁ。
心が優しくなる。
鈴と雛の綺麗な歌声でこれだけではもったいないな。
いつかしっかり歌詞を付けて歌い踊れるようにしよう。
ぶりっ子ポーズが散りばめられていて、俺は鈴と雛の踊りを楽しんでいた。
顔の前に両こぶしを合わせるポーズをキメ、鈴と雛の踊りが終わった。
踊りが終わっても観客の拍手と歓声は終わらない。
ここまでウケるとは予想してなかったな。
「さあ、ここからみんなで踊りましょう」
鈴が観客に声をかける。
雛が踊りを教える。
手拍子と腕振りだけの簡単な踊りだ。
「足は前に一歩、戻って。後ろに一歩、戻って…………」
「簡単です、分かりますか?」
「私たちも一緒に踊りますので、マネをして下さい!」
「はーい!」
雛の声に観客がこたえる。
鈴の合図で彩佳たちが演奏を始める。
「創造魔法、高揚大、拡大発動!」
魔法で観客の気持ちを高揚させテンションをMAXにする。
この魔法は興奮剤?に近いがそんなもの関係ない。
後遺症はみんなで楽しんだ思い出のみ。
さあ、みんな踊れ!踊れ!
祭りの始まりだ!
「尾張良いとこ♪~ 織田様やさし♪~ 今年も豊作 天国極楽♪~」
「えんやこらサー♪~ どっこいしょ♪~」
「強く優しく♪~ 織田様勝利♪~ みんな笑顔で 天国極楽♪~」
「えんやこらサー♪~ どっこいしょ♪~」
鈴と雛の踊りをまねて、観客が唄に合わせて笑顔で踊り出していた。
みんなの顔が底抜けに明るい。
俺が求めていたのは、この顔かもしれない。
「鈴、雛、彩佳もう1回!」
今日、俺が初めて指示を出した。
一回ではもったいない。
俺の指示で踊りが2度3度と続けられた。
公開練習は最高に盛り上がり成功した。




