アイドルたちの休日。
「という事で楓と四郎を連れて美濃に行ってくる」
熱田に帰って皆に梅村の話を伝えた。
「葵さんがしっかり仕事をしてきたのですね」
「いよいよ美濃攻めが始まるのですか」
「松平で調略をしているので今回も上手くいくでしょう」
四郎、五作、鈴が口々に驚きを表す。
雛、彩佳、新しい巫女たちの反応は薄い。
まぁアイドルたちは男の血生臭い戦さと無関係なままでいて欲しいから良いけど。
「1週間ぐらいになると思うから。五作、鈴たちの事は頼んだ」
「すぐに葵が帰ると思うが鈴、五作を助け彩佳たちの面倒を見てくれ」
五作と鈴が頷く。
「加治田から熱田に帰ったら、お札の売り出しと公開練習を行う」
「彩佳、一通りの流れで演奏出来るようにまとめ上げてくれ」
「出来る限りでいい」
「公開練習で熱田での練習は切り上げにする」
「続きの練習は清洲で行う」
「みんな頼むぞ!」
「はい!」鈴、雛、彩佳たち全員が一斉に返事をした。
熱田で練習を始めてまだ間もないが全員が一つになっていた。
「『ファースト』聞こえるか?」
「しばらく俺は熱田から居なくなるが皆の警護を頼む」
脳内通信で『ドッグラン』たちにも今後の予定を伝えた。
「明後日に加治田に向かうから、明日は全員休日にする」
「皆に300文づつ渡すから門前通りで買い物でもしてくれば良い」
「行く時は四郎か五作と一緒に行くように」
「楽しい一日を過ごしてくれ」
俺の言葉に「わー!」とアイドルたちは喜びの声を上げた。
やっぱり美少女の笑顔は良い。
アイドルたちには気持ちよく仕事をして欲しい。
そして最高の笑顔を見せて輝いて欲しい。
丹羽家をブラックにするつもりはない。
他はどうか知らないが、とにかく俺は楽しくこの時代を生きたい。
明日は楓神子の癒しと佐々成政に会う。
悲しいが俺は明日も仕事だ。
side 彩佳と美玖
熱田神宮の門前通りは参拝客目当てのお土産などの珍しい物を売る出店が連なっている。
宿屋や飯屋も多い。
もちろん客は参拝客だけでなく、地元の人間もも多い。
「五作さん、前回もココへ来ているのですか?」
美玖は出店を覗きながら、五作に声をかけた。
彩佳と美玖、五作の3人組で門前通りに遊びに来ていた。
「前回も今回も熱田には仕事で来ているのですから、ここには私も始めてですよ」
「長秀様がこんなに優しさを見せるなんて、よほど機嫌が良いんでしょうね」
五作は休日と小遣いにビックリしている。
まぁ前回は長秀様はまだ決まった俸給を貰っていなかったが。
「たぶん彩佳さんのおかげですよ」
「長秀様は彩佳さんに優しいから」
美玖が彩佳に言う。
だからこそ彩佳には何かあってはいけないと五作は気を引き締める。
「美玖さん、これ見て!綺麗な首飾り」
彩佳がアクセサリーを売っている店の前で足を止め、声を上げた。
この時代も女性は装飾品が大好きだ。
「わー!面白いね」
美玖も彩佳が見つけた首飾りを見て声を上げる。
「首飾りですか?」
五作も覗き込む。
「お嬢さん、凄い目利きですね~」
「これは今、京の都で大人気の首飾りですよ」
店のおばちゃんという感じの女性が答えた。
「この首飾り、触っても良いですか?」
彩佳がおばちゃんの了解を得て、十字の形をした首飾りを持ち上げた。
木で出来た十字の部分に模様の彫り装飾がしてあった。
「この首飾りは悪霊除けの御守りなんですよ」
「この十字を見せると悪霊が逃げ出すと京では言われているんじゃ」
「安くしておくから1つどうだい?」
おばちゃんが彩佳に熱心に勧める。
「彩佳さん、似合いますよ」
美玖が目をキラキラさせて首飾りを見つめる。
「あ!これ私が使う訳ではないの」
「ご主人様への贈り物!」
彩佳が笑いながら答えた。
「え?彩佳さんや楓様ではなく長秀様ですか?」
美玖が不思議そうに聞いた。
「神子様なら悪霊除けの首飾りはいらないでしょう」
「だから私はご主人様に渡したいの」
彩佳さんは確か長秀様の正体を知っていたはずですよね、そう言う事ですか。
彩佳の言葉に五作はにこりと微笑んだ。
彩佳は少し考えたが、この首飾りを買った。
そして大事そうに懐に仕舞った。
「四郎、アイドルたちは何をしている?」
「休日を楽しんでいるか?」
巫女たちが頑張って慣れない楽器を練習していると彩佳から聞いたので、気分転換とご褒美の意味で俺は休日と小遣いを渡した。
「彩佳さんと美玖さんは五作さんと一緒に出掛けました」
「玉恵は千代さんの手伝いで、美穂は鈴さんたちと遊んでいます」
「操と香は小遣いを親に渡したいと実家に行っています」
四郎はスラスラと答えた。
「四郎、新しい巫女たちの中で何故美玖だけ『さん』をつけるんだ?」
「佐々の妹だからか?」
まぁ成政の妹なら四郎も気を使うか。
「新しい巫女たちの中で美玖さんが長秀様の1番のお気に入りでしょう?」
「みんなが言っていますよ」
「長秀様は美玖さんだけ扱いが違うと」
うっ、確かに俺の心の中で楓と彩佳の次に美玖が来ているよな。
みんなに気づかれているなんてマズいな。
また楓がヤキモチを焼くかな。
「成政の妹だからな。俺も少しは気を使う」
そういう事にしておく。
「操と香は実家か」
「実家は貧しいのか?」
俺の言葉に四郎が笑った。
「丹羽家が裕福、贅沢過ぎるのです」
「操と香の家は普通の農家ですけど、農家にとって500文は大金ですよ」
「だから操と香は長秀様より小遣いを貰った時、大変喜んでいました」
「親を助ける事が出来ると」
「2人とも良い子ですね」
「信長様と長秀様のおかげで尾張は戦さで苦しむ事が無くなりました」
「戦さは家や畑が焼かれ、兵が乱暴狼藉をします」
「これから皆が少しずつ幸せになれます。貧しい中でも」
四郎はとつとつと語った。
そういえば四郎は戦さで親を亡くしたんだな。
「そうだな、皆が幸せになれるように頑張るよ」




