俺、家来を増やす。
「勇太槍隊10人対番犬20匹の戦闘模擬戦を行う」
熱田神宮から離れた河川敷に男たちと『ドッグラン』を集めた。
俺は四郎に勇太たちに槍の長さの棒を持たせるよう指示を出していた。
男たちは各々(おのおの)で棒を突いたり、振り回したりしていた。
楓、五作、鈴、雛の4人も立会人としてこの場に来させた。
「俺は『ドッグラン』を指揮する以外のことは何もしない」
「四郎はいつでも勇太組への助言を許す」
「さあ、かかってこい!」
俺の掛け声に男たちは背後の勇太の指揮で横1列に並び、槍ぶすまを組んだ。
四郎から話を聞いて策を考えてきたみたいだな。
『ボス、アイツらスゲー臭いぞ』
『まぁタヌキよりマシかな』
『ファースト』から脳内通信が送られてきた。
俺は邪魔されぬよう『ドッグラン』だけに通信を限定していた。
悪臭。勇太たちもキツいだろう。
俺の難問に鈴は答えを見つけたようだ。
鈴にとって難問だったか分からないが。
「『ドッグラン』たち、お前たちが戦場で相手をするのは目の前の長い棒を持った者になる」
「棒は突くか、上から振り下ろしてくるから、その時は逃げろ」
「右に避けろ」
「各自自由に避けるとぶつかって戦さにならない」
「突かれた時も右だ」
俺は『ドッグラン』に指示を出す。
「敵の左足首のアキレス腱を狙え!」
「1噛みしたならすぐに敵から離れろ」
「敵は刃物を持っているから、スピードで1手必勝がお前たちの戦い方だ」
「わかったな。1噛みでアキレス腱を切って、すぐ離脱だ」
しかし、勇太たち臭いぞ。
風上に居るからキツい匂いが俺のところにも届く。
『ボス、どうします?』
『ファースト』が俺に指示を仰いできた。
「よし、距離を半分に縮め、吠えて威嚇しろ」
「攻めるな。威嚇だけだ」
「前、後ろに動き、臭くてこれ以上近づけないという雰囲気を出すんだ」
「相手を動かして隙を作れ。行け!」
俺は右手を振り下げ、勇太たちを指さす。
遠目から俺が『ドッグラン』に攻めの指示を出した様に見せた。
勇太たちは動かず、1人1人の距離をさらに縮め守りを固めていた。
よし、四郎から伝わって負けない戦法をしているな。
吠え続ける犬たち。
一歩も動かず棒を構える勇太たち。
『ボス、敵は一歩も動かない。どうする?攻めるか?』
「いや、攻めるな」
「動かさないのも、お前たちの戦い方の1つだ」
俺には魔法があるし、カラスの『じんべぇ』もいて戦場の把握も出来る。
状況により回り込んでの奇襲もする。
それが俺が考える戦い方だ。
10分ほど両方の睨み合いが続いた。
『ドッグラン』の訓練には充分だから、そろそろ終わりにしょうか?
勇太たちには俺が居なくても負けない戦い方を考える武将になってもらわないと困る。
俺がいつも勇太たちの側に居るとは限らない。
「相手は何も出来ない!」
「槍隊、前進!」
「敵を押し返せ!」
勇太が大声で男たちに命令を出した。
え?何故攻める?
我慢が出来ないのか?
ドターン!!
勇太が1人の男に殴られて、ひっくり返っていた。
え?何で勇太が殴られる?
「こんなバカ大将と茶番に付き合えるか!」
「おい!みんな、村に帰ろうぜ!」
男は大声を出しながら俺を睨んできた。
おい、これが茶番なのが分かるのか?面白い奴だ。
「よし、模擬戦は終わりだ」
「お前、名は何と言う?」
勇太を殴った男に俺は問いかけた。
「弥八と言いますが、召し抱えて頂けるのですか?」
「オレら10人?」
コイツは模擬戦を潰しておいて、仲間たちを気づかうのか?
分からん奴だ。
「楓、皆を水浴びさせて、用意した服に着替えさせろ」
「臭くて堪らん」
「宿もあと2日分を支払っておいてくれ」
「四郎、楓を手伝って明日の朝、勇太と弥八を連れて俺のところに来い」
「終わりだ。解散!」
俺は『ドッグラン』を連れ、能力上げの狩りに向かった。
『ドッグラン』のスピードをさらに上げる。
普通の人間が反応出来ないスピードまで!
「勇太を河尻殿に預ける」
「河尻殿のところで戦術、人との付き合い、戦さ人の心得を学んで来い」
「期間は1年、河尻殿の許しが得られれば、丹羽家のために再度働いて欲しい」
勇太は何も言わず静かに頭を下げた。
四郎から説教を受けて、勇太自身にも反省はあるのだろう。
このまま何も罰せずでは示しがつかない。
今までずっと一緒にやってきたから、追放にはしたくない。
河尻殿のところで揉まれ、強くなってこい。
俺は勇太に熱田から出るように命令した。
「弥八、俺の家来にならないか?」
「正しくは2ヶ月後になるが」
俺は弥八に優しく声をかけた。
「オレだけですか?」
「仲間たちは?」
弥八は俺の問いに質問を返した。
「2ヶ月後に美濃に攻め入ろうと考えている」
「それまで村で待っていてくれ」
「仲間たちはその戦さの活躍次第だな?」
弥八は頷く。
半月でアイドルたちを仕上げてから、戦さの準備に入る。
下調べと戦さ準備で1ヶ月、1ヶ月半ぐらい掛かるだろう。
「弥八、2ヶ月でどれだけの兵が集められる?」
弥八は目を閉じて考え始めた。
「30人程度ならすぐに。それ以上は出来るだけとしか……」
「ただ数だけ集めても………」
切れの悪い返事が戻ってきた。
「そうだな。将来を考えて頭になれそうな者が2〜3人欲しいな」
「次の戦さで丹羽家が変わるだろう」
「弥八、頼むぞ!」




