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俺、『ヒール』のお札を作る。

「楓、清洲にもどるよ」

急に俺が声をかけたので驚いたが、すぐに楓は小さく(うなず)いた。

俺は楓を連れて、清洲に屋敷に転移した。

「旦那様、清洲に何か用事でも出来たのですか?」

楓が不思議そうに聞いてきた。

「誰にも邪魔されず、(ため)したい事があるんだ」

「熱田だと少しまずいかな」

「楓に手伝って欲しい」

時々俺は楓を連れて清洲に戻るが、戻るときは決まって俺の欲望を満たすときだ。

今日は俺の雰囲気が違うことを楓が感じ、不思議そうにしていたんだな。

俺は部屋に入り、床に宮司から(もら)った見本の『楓神子』のお札を置いた。


俺の創造魔法に出来ない事は無い。

創造魔法は『想像出来ること、考えること全てが可能になる』魔法だ。

隕石は落とせる、単に空から石を落とすだけだから。

津波も核爆発も出来る。

しかし、核爆弾は作れない。

作り方を知らない物を作る事は創造魔法で出来ない。

今から俺は創造魔法を4つ複合させる。

まず、この見本の『楓神子』のお札をコピーして新しいお札を作る。

コピーする時に『ヒール』の魔法を練り込ませるのだが、ある呪文を唱えることで『ヒール』を発動させ、発動した時にお札が燃えて無くなるようにする。

かなり混み入った複合魔法だが不可能で無いはずだ。

1枚作れば、次は魔法効力が有るお札をコピーすれば良い。

呪文は『ハブ、ネバ、ビー、メロ」

鈴と雛が2人で踊る時に途中で使う言葉。

俺は魔法を(とな)える。

「創造魔法、ヒール、呪文発動、消滅、コピー!」

魔法が発動して、俺の手のひらの上に1枚のお札が現れた。

成功か?

慣れてきているのか、最近は俺が何をやっても楓は驚かずにいる。

ちなみに何故、お札が燃えて無くなる様にしたのか?

単にその方がカッコいいからだ。

「この『楓神子』のお札に力を与えてみた」

「いろんな事が起こるが、驚かないでくれ」

楓は黙って俺に(うなず)いた。

「楓、このお札を右手で持ち、左腕を出してくれ」

楓は俺に従い、腕を差し出した。

俺は刀を抜き、優しく楓の腕に刀傷をつけた。

楓は俺の言葉に従い、驚かない。

俺に対する楓の全面的信用、可愛さだけでなく気持ちの優しさにも()れてしまうな。

楓は黙って俺を見つめ続けている。

「呪文を教えるから、それを(とな)えて」

「ハブ、ネバ、ビー、メロ」

楓は(うなず)き呪文を(とな)える。

「ハブ、ネバ、ビー、メロ」

お札が白い炎を上げて燃えたので、楓は驚いてお札を離した。

「旦那様、これは何ですか?」

お札が燃えたことに驚き、楓は腕の刀傷が消えた事に気づいていない。

「成功だ!」

「楓、刀傷が消えているだろう」

俺の言葉に楓は左腕を見つめた。

「え?え?」

楓は戸惑っていた。

「『楓神子』のお札に傷を治す力を与えた、誰でも使えるように」

「俺がいなくても癒しが出来る」

「怪我を治すお札が有ったなら楓も欲しいだろ」

俺は楓を見つめる。

「え?はい、欲しいです」

「このお札を熱田で売るのですか?」

俺は(うなず)く。

「20枚に1枚、この癒しのお札を混ぜて売ろうと思っている」

「つまり『当たり』が有るということだ」

「このお札が20枚の中に1枚混じっていたなら、楓ならどうする?」

「お金があったならば20枚まとめて買おうと思うだろう」

「20枚で40文。特別高いとは思わない」

「商人や武将が万が一の時、命が助かるかもしれないお札だ」

楓は俺の言葉に何回も(うなず)いていた。

「もちろん四郎や葵、みんなにはもっと力のあるお札を渡すつもりだ」

「そうななれば四郎や葵に安心して仕事が任せられる」

御守りとして売るつもりの木製の方はハズレなしのより高い値段にしょうと思っている。

噂が広まれば遠くからでも買いに来る。

お札を選ぶか御守りを選ぶかはお財布次第になるが。


俺は『ハイヒール』のお札20枚と『ヒール』のお札40枚を作り、熱田に戻った。

熱田では葵と玉恵が料理を始めていて、それ以外の者はまだ練習をしていた。

俺特製のお札を説明するために楓に葵の料理が終わり次第、部屋に全員を集めさせた。

もちろん新しい巫女たちも一緒だ。

「楓神子の力を与えたお札を作ってもらった」

そう言って俺は皆にお札の使い方を説明し『ハイヒール』のお札を(くば)った。

「くれぐれもお札を手に持って呪文を(とな)えないように」

「お札の無駄使いになるからな」

「売り物のお札と違い、そのお札は力が強いから、自分と自分に特別に親しい人にしか使ってはいけない」

「誰にも秘密にして使うように」

「無くなってもすぐに新しいお札を渡すから、気にせずどんどん使ってもいいぞ」

「このお札を作ってもらうのは難しくないから」

ん?美玖だったか?

何か言いたいのか、もぞもぞしていた。

「美玖、何か言いたいことでも有るのか?」

主従になって間もないから、俺に声を掛けずらいのだろう。

「あの長秀様、私の兄が先の戦さで大怪我をしてしまい………」

「ダメだ!」

俺は美玖の言葉を途中で強く(さえぎ)った。

楓や四郎、葵には俺の言葉が意外らしく驚いていた。

「わ!すみません!」

美玖は手を着いて頭を床に押しつけて(あやま)っていた。

「俺はこのお札を不慮の事故で怪我をした時に使って欲しいと思って渡した事を(おぼ)えておいてくれ」

「葵、美玖から話を聞いて美玖の兄を熱田に連れて来てくれ」

「もし、動けない怪我なら、こちらから出向く」

「他の者も、もし楓が必要なら葵に伝えてくれ」

「ここに居る者は皆、俺にとって特別な者だから」

「何でも言ってくれ。遠慮するな。出来るかぎり助ける」

新しい巫女たちと彩佳が手を着いて深々と頭を下げていた。

鈴や雛と違い、初々(ういうい)しいなぁ。






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