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前田利家に会いました。

「楓、大丈夫か?」

信長軍の陣地は血の匂いと男どもの汗臭い匂いと殺気が渦巻いていた。

日頃アイドルたちに囲まれていたから、俺もこの匂いはキツい。

桶狭間では直ぐに戦場を離れたから、初めての経験だった。

戦さが圧勝だったから、信長軍の雰囲気は明るい。

領地が増えたから皆、褒美を期待しているのだろう。

少し待たされたが、直ぐに信長に会う事が出来た。

「参陣に遅れて申し訳ございません」

俺は(ひざ)を着き、楓を後ろに立たせたまま、信長に頭を下げた。

「斎藤の(きょ)を突いての進軍だからな。配下で参加していない者も多い」

(とが)めるつもりは無い」

「楓しか連れていないのは、遅れる事が分かっていたからだろう」

屋敷で会っている時と違い、信長の目つきがキツい。

「戦さが終わっても私にはやる事が有りますので」

俺の答えに信長は軽く(うなず)いた。

「どれだけの人数になるか分かりませんので、有利武将から傷の癒しを楓に行わせますか?」

圧勝だから怪我人は少ないだろうけど。

「いや、出来るだけ早く皆を助けて欲しい」

「織田は皆平等に生命(いのち)は大切だ!」

「生命が助かれば、後はなんとでもなるのでないか?長秀!」

皆に聞こえるように大声で答えましたね。

流石、俺の振りに上手く対応してくれて、ありがとうございます。

これで手足の1本ぐらい失う事を怖がらない強兵が出来ますね。

「わかりました。楓に直ぐにやらせます」

俺も大声で答えた。

楓は神子として尾張中に知られているが、楓は俺の命令で動き、俺は信長の命令で動く。

上下関係をハッキリ分からせないと、勘違いしてくる者が出て来るからね。

「楓、いいか?」

俺は楓の背後に立ち、楓に合掌をさせその場で正座をさせた。

信長さん、お尻を向けますが許してください。

怪我人は信長さんの前方に居ますので

範囲は前方200mぐらいでいいかな?

『回復魔法、超拡大ヒール!』

優しい光が信長の陣営から部隊全体に拡がっていく。

「おおー!」あちこちで(どよ)めきが起こる。

刀傷(かたなきず)は無くても、疲労やすり傷ぐらいは有るから皆、楓の力を実感しているだろう。

重傷者も生命は助かる。

戦場での楓の存在価値は理解できたでしょう。

「長秀、ご苦労だった!」

「場所を用意させるから、引き続き治癒にあたってくれ」


「丹羽殿、入ってよろしいですか?」

幕内(まくない)に血まみれの兵が入ってきた。

一通りの治癒が終わるのを待っていたのか、俺と楓が一息付く(ひま)も与えてくれなかった。

「怪我をしている訳で無く……何用かな?」

武将とも雑兵とも分からない中途半端な武具を着けていた若者。

丹羽家の仕官の話かな?

ソロソロ兵を集めないといけないから、出来そうな者なら受け入れるかな。

「私の名は前田又左衛門利家と申します」

「藤吉郎から織田家で出世するなら、丹羽殿と(よし)みを結んだ方が良いとしつこく言うので挨拶に参りました」

「戦さで武功を挙げないと信長様から丹羽殿への面会の許しが出ませんので」

「今回、信長様より許しが出ましたので、この場で失礼します」

前田利家とはビックリだな。

利家と藤吉郎とは仲が良いのか。

「信長様の許しが無くても気軽に屋敷に来てくれれば前田殿なら歓迎致しますよ」

何故、信長の許しが必要なのだ?

「丹羽殿はほとんど清洲の屋敷に居ないという噂ですからね」

「丹羽殿と話が出来るのは凄い幸運らしいのですので」

確かに1ヵ月の2日3日ぐらいしか屋敷に居ないかも。

「信長様の命で屋敷を留守にする事が多く、申し訳けない」

「利家殿と仲良くなれるのなら嬉しい限りです」

「いつか藤吉郎殿と一緒に酒でも飲みましょう」

利家だから信長は俺との面談の許しを出したんだろう。


side 葵

「葵さん、お手伝いします」

夕食の準備を始めた葵に美玖と操が声をかけてきた。

「大丈夫?練習で疲れているのでしょう?」

振り向いて2人に答えるが葵の手は止まらない。

「少しでもお役に立ちたいです」

「琴も笛も出来ないし……」

「葵さんといろいろお話しがしたくて」

2人の目的は手伝いより話がしたいみたいだ。

「そうね。2人とも仲間になったのですから、良いですよ」

葵は2人の目的を受け入れた。

「葵さんは丹羽様の側室なのですか?」

美玖が直球の質問を葵にぶつけた。

「急に来たわね。でもいろいろと知りたいと思う事は分かりますよ」

「私は側室ではないのよ」

「楓が正室で、鈴と雛と、話を聞く限り彩佳さんも側室なのかな?」

「でも3人とも長秀様はお手をつけていませんね」

「信長様にお屋敷を頂いて、側室を押し付けられて、ふふふ」

「信長様のお屋敷で食事して寝てきた事もありますよ」

「長秀様は特別なお方です」

話しをしていても葵の手は野菜を切り続けていた。

「私たち丹羽様の側室になれるでしょうか?」

美玖は真剣な目で葵に(たず)ねた。

「あなたたちの目的はそっちなの?」

「まぁ正解だと思うわ」

「長秀様は強くてカッコいいからね」

「長秀様は直ぐに領地と城を持つようになるから、あと2〜3人ぐらいの側室は問題ないと思うけど」

「ただ綺麗、可愛いだけでは長秀様は興味を持たないでしょうね」

「頑張って能力を見せないと、鈴、雛、彩佳さんたちと並べないでしょう」

「頑張ってね!」

葵と美玖、操はおしゃべりを続けるが料理はどんどん出来てくる。

お手伝いと言ったのは間違いではなく、2人とも料理は得意だった。


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