表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/84

桶狭間の戦い、どうするの?

「楓、ワシと深澤、いやユージ殿に酒を注いでくれ」

信長は湯呑みを楓に差し出した。

「今は17かもしれないが、昔は呑めたのだろう?」

顎をしゃくって、俺にも呑むように促した。

俺も湯呑みを差し出した。

美少女に酌をされるのは、良い気分になる。

あ!美少女というのではなく、綺麗な女性という意味ですよ。

湯呑みの中の酒は白く濁り、アルコールの匂いをぷんぷん漂わせた。

匂いからすると、かなり強い酒のようだ。

信長はぐいっと一息で酒を飲み干した。

「向こうの世界では普通に呑んでいましたが、この世界に来て呑んでいないので」

俺は遠慮して湯呑みを置いた。

信長には聞きたい事が山ほどある。

「酒など呑んでいる気分ではないか?」

信長は俺の顔を見て笑った。

「楓、ユージ殿は大切な御客人だ」

「今宵は2人だけの無礼講とする」

「ワシに誰一人取り次ぐことは許さん!」

「は!」

楓は幼女2人を連れて部屋から出ていった。

楓は戸のそばに控え、誰も入らないようにするだろう。

信長とすれば、今からする話は聞かれてはまずいのだろう。

「ユージ殿、何から説明すれば良いかな?」

「織田信長って、こっちの世界での設定ということで良いですよね」

「先ほどにも言ったが、ここはワシの仮想世界だ」

「この世界に来て6年ですよね」

「それなら歳は24~5ですか?」

俺は首を捻った。

「桶狭間の戦いにズレが生じたのですか?」

「いや、ズレは無い!」

「信長の青年期に桶狭間の戦いがあった様なイメージだが、実際は20代後半の出来事なのだ」

信長は苦々しく言った。

人生50年の設定で20代後半での桶狭間の戦い!

歴史を知っているから、本能寺の変は回避出来るが、仮想世界で織田信長の天下統一は難しいのではないか。

時間が足りない!


仮想世界は元の世界の4倍の速さで時間が流れる設定になっている。

つまり元の世界の1年が仮想世界の4年。

4秒毎の時計の針が進んでいる感じになる。

物理的に仮想世界だけを切り離して、時間を速くすることは不可能とされている。

「生まれた時から1日が6時間なら、それが普通として人生を過ごしてしまう」

という事なのだ。

介護施設としては50年も60年もVR介護でベットを使ってもらう事は出来ない。

12〜15年が限界なんだろう。

介護も商売なのだ。


「織田軍は弱い。弱過ぎるのだ!」

信長は手酌で湯呑みに酒を注ぎ、また一息に飲み干した。

「尾張は東国武士のようなプライドが無い、豪雪武士のような粘りも無い」

「撃たれ弱く、崩れ易いのだ」

信長は前のめりになって顔を近づけてきた。

うっ!酒くせー!

俺は黙って話を聞くしかなかった。

「ワシは今川義元に討たれる」

「え?確か歴史では奇襲をかけて、今川義元の首を取る筈では?」

「そう、史実では奇跡の逆転劇で織田信長の名は全国に轟く」

「そして今川義元亡き後、織田と松平は同盟を結び信長は京に向かう」

「史実では!」

何が違うのだろう。

織田軍は今川軍に負けるのか?

「奇襲が出来ないのだ」

徳利を掴み、湯呑みに酒を注いで。

「馬を急がせても、雑兵とともに陣形を組んでいれば、2時間で10kmが限界なんだ」

「疲れた状態で突撃しても、義元の首を取る前に日が落ちてしまう」

「あ!」

「日が落ちて暗くなれば義元を見つけることが出来ず、奇襲は失敗に終わる」

4倍の速さで時間が流れるからといって、馬や人間が4倍の速さで走ったり動いたり出来る訳ではない。

どうやっても大逆転劇の桶狭間の戦いは不可能なのだ。

そして弱い織田軍は今川軍に負け、信長は討ち取られるのか?




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ