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鈴と雛の新しい舞、そして鈴のこと。

部屋の中に葵も含め、全員が集まった。

葵は巫女舞の評判を調べに行ったのに、やけに仕事が早いな。

しかし、さっきから雛が目を輝かせて俺を見つめている。

話がしたくてウズウズしているのがわかる。

鈴と雛の新しい舞が出来たみたいだな。

「楓、留守番ありがとう」

「みんなが話をしたい事があるみたいだから、一緒に信長様に報告に行く時にゆっくり話を聞くね」

「では雛、鈴、新しい舞は出来たのか?」

先ず雛から話を聞かないとまずい様な気がする。

「はい!」

俺の言葉に反応して、鈴と雛が立ち上がり踊り始めた。

雛が唄い、鈴と雛が同じ動き、踊りをする。

お!歌詞も考えたのか、出来る奴らだな。

ても、舞があまりにも単調過ぎないか?

腰が動かない、ステップも無い、手だけの踊り。

まぁ、いいか。

「歌詞も入れたのか」

「凄い!俺が期待していた以上の事をやってくれた、ありがとう」

俺の言葉に雛は踊りを止め、満面の笑みで俺に抱きついてきた。

「凄いでしょう。これ、みんなで踊るのよ」

雛の褒めて褒めての眼差しが、まるでビームの様で痛い。

「ん?みんなで踊る?」

俺は雛の頭を撫でながら鈴に目をやった。

俺に抱きつきたくてウズウズしている鈴が立ち尽くしていた。

俺の視線に気づき、鈴はちょこんとその場に座った。

「雛がみんなを楽しませるなら、みんなで踊った方が楽しいと」

鈴は俺に怒られると思ったのか、小さな声で答えた。

盆踊りか?なるほど!だから単調な踊りなのか。

いいじゃないか!

「凄いぞ!鈴、雛」

「俺の考えの上を行っているぞ」

「これ以上の褒める言葉が見つからないほど、嬉しい!」

「しかし、鈴、雛聞いて欲しい」

「楓と3人一緒に踊っていると、どうしても見ている者は真ん中の楓のところに目がいってしまう」

「俺はそれが悔しかった」

「楓の両側に綺麗で可愛い天女の様な鈴と雛がいるんだよ、気づけよ言いたい」

「俺は見ている者に可愛い鈴と雛を見せつけたいんだ」

「だから楓のいない2人の舞を望んだ」

「みんなと一緒に踊っては、鈴と雛が見せつけられない」

「俺の望みだ!鈴、雛。みんなの前で輝いて欲しい」

抱きついていた雛がムクッと顔を上げ、俺を見つめて(つぶや)いた。

「誰より可愛い雛が旦那様の近くにいることを、見せつけます」

「私たち、天女になって可愛く輝きます」

やったー!ヒラヒラでエロ可愛いアイドルが作れるぞ!

俺の妄想は限りなく広がっていった。


「長秀様、よろしいでしょうか?」

勇太が俺に声をかけてきた。

「先日、河尻秀隆様が屋敷においでになり、長秀様の与力になったと申しておりました」

ん?河尻が?

俺は楓に目をやった。

楓は小さく頷き、勇太の言葉を肯定していた。

「で、それだけか?」

俺は勇太に目を戻し、次の言葉を(うなが)した。

「長秀様が戻られたら、また来ると」

「娘の鈴によろしくと」

勇太は何か言いたそうだが、躊躇(ためら)っている様子だった。

「鈴の事は知っている」

「秀隆殿と会っているからな」

みんなも知っているはずだ。

俺が鈴の父親に会いに行ったことは。

「何故、そんな偉いお方のお嬢様がここにいるのですか?」

勇太は(せき)を切ったかの様に聞いてきた。

「鈴は有能な俺の側室だ」

「それ以上の何が必要か?」

俺は勇太を(にら)みつけた。

「あの、旦那様、聞いてください」

鈴が口を開いた。

「父は信長様の命とはいえ、信長様の弟君の信勝様に直接手を下し、暗殺したのです」

「父は信長様の大切な方を奪ったのだから、自分も大切なものを失わなければならないと申して、私を信長様にお渡しになったのです」

「私は父に捨てられた娘なのです」

鈴は悲しそうな表情で俺を見つめた。

「鈴の父親の秀隆殿は頭が良いな」

鈴の表情に対応する様に俺は応えた。

「え?」鈴は驚いている。

「秀隆殿の立場なら鈴をいつ死ぬか分からない武将のところへ嫁がせるしかないが」

「理由をつけて信長様に渡せば、鈴の器量を考えれば、もしかしたら信長様の側室になれると考えたな」

「秀隆自身、信長様を支えていれば鈴を悲しませる事は起こらないからな」

「自分の娘を政略結婚させる父親より、よっぽど秀隆殿は鈴の事を大切に思っていたんだな」

俺は鈴を見つめる。

「でも、父は旦那様を認めなかった」

鈴は俺に強く言い放った。

「秀隆殿は俺を試したんだよ」

「大切な娘を託せる人物かどうか」

「そして俺は応えた」

俺は優しく鈴に微笑み、頷く。

「でも、旦那様のところへ戻る事を決めたのは私です!」

鈴は俺の言葉に納得はしていなかった。

「俺は鈴が秀隆殿のところへ戻っても良いかなと思っていた」

「雛もそうだが、俺の側室という中途半端な立場より、有力武将の正室になれる器量、可愛さは十分ある」

「自分の生き方は自分で決めて欲しい、まだ間に合うから」

俺は楓に向かって微笑んだ。

そう、まだ2人には手を出してないからね。

「で、秀隆殿は俺を認めたから、鈴を守るために俺の与力になったんだよ」

「良い父親じゃないか」

グスン、グスン。

鈴と楓と葵が泣き出した。

男たちは顔を伏せている。

「私は旦那様の側室で良い!」

「一生、旦那様について行きます」

そう言って雛がウルウルした目をして俺を見つめる。

えーと。多分だよ、この話は。

真実かあるか分からないけど。

これで俺の配下全員は、秀隆殿を尊敬するだろう。

河尻組と仲良くしていけそうだ!






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