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俺のいない間に、色んな事が起きていました。

side 葵

楓さんたちの巫女舞の評判を調べるように指示を長秀様より受けたけど……。

良いに決まっているよね!

長秀様は伊勢長島の一向一揆を心配しているけど?そんなに?

長秀様がいれば直ぐにでも何とかなりそうな気がするけど。

慎重な下準備があるから、簡単に見えるのかも。

桶狭間でも、岡崎でも。

巫女舞の練習をしていた熱田を離れて、まだ2ヶ月も経っていない。

色々あって遠い昔のような気がする。

熱田神宮は相変わらず参拝客が多かった。

楓さんたちの巫女舞の影響はあるのかなぁ。

懐かしいなぁ。この境内で楓さんたちが必死で巫女舞を覚えたんですよね。

あれ?巫女さんが多くない?

あ!巫女頭の千代さんがいる。

千代さんはいつもニコニコしていて綺麗なのは、神様の近くにいるからかな?

うふふ、五作さんは千代さんのことを気にしていたなぁ。

宮司の福本様のものなのに。

「こんにちは、千代さん。お久しぶりです」

テキパキと新しい巫女さんたちに指示していた千代さんが私に振り返った。

「あら!葵さん、お久しぶり」

私の顔を見て驚いていた千代さんの顔が満面の笑顔に変わった。

「楓神子様が熱田に来て下さるの?」

駆け寄って来た千代さんは嘆願するような目で私を見てきた。

「え?まぁ。長秀様がお忙しく、予定は無いの」

私の言葉に千代さんは

「はぁー」とため息をついた。

「千代さん、どうしたのですか?」

私の問いに答えず、急に私の腕を掴んできた。

「葵さん、ちょっと来て欲しい」

「宮司さんに会って話を聞いて!」

千代さんは強引に私を宮司さんの所に連れて行った。

え?どうしたの?


「宮司、楓神子様の葵さんがいらっしゃったので、お連れしました」

宮司さんは忙しそうな仕事の手を止め、にこやかに私を迎えた。

「葵さん、お久しぶりです」

「で、楓神子様はいつ、いらっしゃるのですか?」

え?宮司さんも?

予定が無いと伝えると、宮司さんもため息をついた。

「丹羽様抜きで楓神子様だけでも熱田に来てもらえないでしょうか?」

宮司さんが手を合わせ頼み込んできた。

「長秀様抜きで楓さんが神子をする事は無いです」

「それがたとえ信長様の頼みでも」

これは言い切って良いと思う。

「では、早急に楓神子様が熱田に来られるように丹羽様に頼んでもらえないでしょうか?」

「お願いします」

宮司さんが深々と頭を下げてきた。

「長秀様に伝えますが、一体どうしたのですか?」

長秀様は1ヶ月ほど居ないけど、時々屋敷に帰ってくると言っていたから、その時に宮司さんの話を伝えられると思う。

「楓神子様の噂を聞いて遠方からも参拝客が集まってしまって」

「宿が人であふれ、境内にも寝泊まりする人が出てきているのです」

「楓神子様に憧れて巫女になりたいと少女たちも殺到して」

「とりあえず今、丹羽様が喜びそうな10人の新しい巫女を入れています」

長秀様が喜びそうな巫女って………何、それ?

あ!それで急に巫女が増えていたんだ。

大変な事になっているなぁ。

「分かりました!」

「帰って長秀様に熱田の状況を伝えます」

巫女舞の評判を調べる事は後回しにして、私は清洲の屋敷に戻る事にした。


side 鈴と雛

「なら、みんなで踊れる方が良いよね」

「みんなで踊って、楽しんで」

雛のテンションが上がってきた。

「面白いよね」

「旦那様がどう考えるか分からないけど、私たちが積極的に行動するなら悪くても評価してくれると思う」

鈴も頷きながら応えた。

「歌詞も欲しいのかな?」

「勇太と一緒にお囃子も考えないといけないし」

「こりゃ、忙しくなるぞ!」

五作もやる気が出てきた。

「こんなのはどうかなぁ?」

急に雛が立ち上がり踊り始めた。

鈴は雛を見上げて頷く。

雛は鼻唄を歌いながら、手を交互に前に突き出し踊る

五作は軽く手を叩き、雛の踊りに拍子をつける。


「楓様は?」

「お客様がいらっしゃいました」

雛の踊りを邪魔するように勇太が早口で屋敷に入って来た。

「お客様?」

「旦那様は居ないし、どなた様ですか?」

雛の踊りに手拍子をしていた楓が勇太の声に応えた。

「あ!河尻様です」

「楓様と鈴ちゃんによろしくと伝えて下さいと」

勇太は全員の目が自分に集まっている事に気づいて、気を落ち着かせるように、一呼吸おいてゆっくり次の言葉を発した。

「長秀様が今、留守である事を河尻様に伝えました」

「河尻様が長秀様の与力となり、長秀様の命に従うと」

「長秀様にその事を伝えて欲しいと言われました」

勇太の言葉に驚き、誰も言葉を発しなかった。

大事なことを伝えたと安心して、勇太はまた早口になった。

「鈴ちゃん!鈴ちゃんは河尻様のお嬢様なの?」

「河尻様が娘の鈴によろしくと言ってたけど、どうなっているの?」

勇太は鈴を問い詰めた。

「ええ、それは……」

鈴が答えに困っていると、五作が助け舟を出した。

「勇太、その事は長秀様が帰った時にゆっくり鈴ちゃんに話してもらおう」

「で、河尻様はお帰りになったのか?」

五作は鈴ににっこりと頷き、合図した。

「あっ!すみません」

「河尻様はまた来ると言われ、帰られました」

勇太は屋敷に招き入れなかった失敗に気づいて、声のトーンを下げた。

「楓様、すみません」

「差し出がましい事をしました」

五作は楓に頭を下げた。

「そ、そうね。その話は旦那様が帰ってからにしましょうね」

楓は笑って五作に応えた。






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