河尻秀隆、与力になりました。
side 勇太
ヒューン!ヒューン!刀を振り下ろす。
戦術を学べ?どうやって?
とりあえず素振りをしたが………。
やめて野ウサギでも狩りに行こうか。
文字は読めないし、兵法書など高くて買えないし、清洲では売っていない!
長秀様は厳しいな。
「お!いい音を立てているでないか!」
後ろから男の声がした。
勇太が声の方を振り返ると武将が立っていた。
「丹羽殿はご在宅かな?」
男は優しく問いかけてきた。
あ!長秀様の客人。もしかして信長様の使い?
勇太はあわてて膝を着き、地面に刀を置き頭を下げた。
「どうしたんだ?立ってくれ!これでは話が出来ん!」
男はあわてて勇太に手を差し伸べた。
「長秀様はしばらく留守にすると言い、出かけております」
「楓様に取り次ぎますので、しばらくお待ち下さい」
立ち上がり屋敷に向かう勇太に、男は声をかけた。
「待て!ワシの名を聞かなくて良いのか?」
勇太は振り返り、驚きの顔を見せた。
「え?信長様の使いの方ではないのですか?」
「この屋敷に来る武将は木下様か、信長様の使いの方しか来ないもので」
勇太の言葉に男は驚いた。
「それだけしか来ないのか?」
「うむ?」
「ワシは信長様の使いではない」
「ワシは織田家組頭、河尻秀隆と申す」
「丹羽殿に会いに来たのだが留守であったか」
男は少し考え
「聞きたい事があるが、おぬし名は何と言う?」
ん?長秀様に会いに来て、オレの名前を聞くのか?
「丹羽長秀家来、勇太と言います」
勇太は秀隆に向かい合い、目を見つめ答えた。
「勇太殿、立ち話で悪いが幾つか聞いても良いか?」
勇太殿か。良い響きだ。
悪い人ではなさそうだ。
「全ては答えられませんが、大丈夫だと思います」
秀隆はオレの言葉に軽くうなずいた。
「丹羽殿は信長様から俸給1000貫を頂いたと聞いたが、それは本当か?」
え?これは答えて良いのか?
その話はつい最近だよな。
勇太が答えに躊躇していると
「答えなくていいぞ。否定しないなら、そういう事だな」
あ!心を読まれた。
「勇太殿、ワシのところに来ないか?」
「楓様のおかげで出世した丹羽家よりも、ワシの家来になった方が出世するぞ」
コイツ何を言うんだ。
勇太はイラついた。
「長秀様は功績を隠しているだけで、信長様の信頼は直参筆頭のお方です」
「オレは長秀様について行き、いつか城持ちになります!」
秀隆は陰湿な笑顔を見せた。
あ!謀られた。
「若いな」
「しかし、その若さが信長様、丹羽殿に必要なものかもしれない」
秀隆の陰湿な笑顔が柔和な笑顔に変わった。
「信長様の許しを得て、河尻秀隆。丹羽殿の与力として長秀殿の命に従う」
「と、長秀殿に伝えてくれ」
「勇太殿もよろしく頼む」
「あ!奥方様の楓様とワシの娘の鈴にもこの事を伝えておいてくれ」
え?今、娘の鈴と言ったよな。
鈴ちゃんが織田家組頭、河尻秀隆の娘?
「えええー!」




