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怒声が鳴り響く一日。

三月下旬のとある日曜日、家に怒声が鳴り響いた。


「もみじー!?日曜日だからって何時まで寝てるんじゃないわよ!!」


ドアの向こうから聞こえる怒声にびっくりして、おれは目を覚ました。


「うるさいな………………って、もう昼過ぎか」


近くに置いてあったスマホで時間を確認すると既に正午は過ぎていた。さすがにやばい、春休みだから生活リズム緩んできている。


母さんには起きた起きた、と返事を返して、母さんは「なら、はやく降りてきなさいよ!」と言って下に降りていった。


部屋を出で、階段を降りて洗面所に向かった。


◇◇◇◇


洗面所で顔洗い、服を着替えてからリビングにやってきた。


入って直ぐに目に付いたのはソファーに座りながらテレビを観ている父さんだった。キッチンの方で水の音がするから母さんはそっちにいるようだ。


おれは喉が渇いていたので、冷蔵庫の方に飲み物を取りに行く。


冷蔵庫を開けて、お茶を取り出してコップにそそぐ。


「紅葉、ちょっと話があるから来なさい」


父さんが声をかけてきた。珍しい普段は自分から全く話しかけてこないのに。おれはお茶をそそいだコップ持って父さんがいるソファーの方に行く。


父さんの前の椅子に座る。


正直父さんと喋るのは苦手だ。昔から仕事優先の人で遊んでもらったのだって小さい頃に数回程度。小学校高学年くらいから父さんとはまともな会話は交わしたことがない。朝会えたら『おはよう』交わすぐらいで終わってしまう。家に帰ってくるのだって週に、2回あるか、ないかぐらいだし。苦手になるのも仕方ないと思う。

思わず全身に力が入ってしまう。


「なにかな?」


父さんは腕を組み顔を下に俯かせている。おれはお茶を飲みながら父さんが話を切り出すのを待った。


父さんがおれに話って何なんだろう……。ここ数年まともに話してないから余計に怖いんだけど。


そして、数分後父さんがやっと顔を上げた。


「紅葉。お前いま好きな子はいるか?」

「…………は?」


あんまりにも唐突すぎる質問に全身の力が抜けて間抜けな声がでてしまった。


父さんってこんな冗談を言う人だったけ……。いや、おれが知らないだけでもしかしたら言うのかもしれない。いや、ないわ。おれが知っている父さんは冗談でも日曜日の昼から好きな子を聞く様な人ではない。


「い、いないけど……」

「そうか。なら良かった。紅葉お前には許嫁がいる」


許嫁……?おれはその言葉を聞いて理解が出来なく、フリーズしてしまった


そんなおれを無視して父さんは話を進めた。


「昔な、桜木と約束してたんだよ。何処の馬の骨にやるぐらいなら、お互いの子供を結婚させようって」

「え……桜木?」


おれは、桜木と聞いてやっとフリーズした脳が再起動した。待ってくれ、桜木って……まさか……。


「と、父さん……まさか、その許嫁? ってのはお隣の……」

「ああ、そうだ。お前もよく知ってるだろ? 遥ちゃんだよ」

「はあぁぁぁぁあああ!?!?!?」


今度は家中もしくしたら外までにもおれの素っ頓狂な声が鳴り響いた。


それから落ち着きを取り戻すにはかなり時間がかかった。


いやだって……いきなり、許嫁と言われその相手が幼馴染の遥って言われれば……。


◇◇◇◇


「ふぅ………。で?何で今まで黙ってたの?」


あれから落ち着きを取り戻し、おれは父さんを問い詰めていた。少し、いや、大分怒っている。何故そんな大事な事を黙っていたんだ。


「いや……それは、、、そのだな……」

「なに?まさか、忘れてたの?」

「わ、忘れてた訳ないだろ!? 」

「じゃあ、なに?」


狼狽えてる父さん。これは忘れてたな。まあ別にいいんだけどさぁ……こういう事は前もって言っておいて欲しかったと言うか……なんと言うか………。


「あれだ、その話をした時は桜木と飲みに行ってた時で、お互いに結構飲んでたし、酔いに任せて言った事だったから、まさか……本気で言ってるとは思ってなくてな………すまない」

「……そか」


まあ、いまはその言い分を信じよう。否定できる証拠もないし。


その後も頭を下げてきたりして、もう大丈夫と言ったのに土下座までしようとしてきたのでその時はすごく焦った。



でも、もっと早く言って欲しかった……。何故ならおれは、中学の卒業式に遥に告白され、振ってしまったのだから。

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