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俺の彼女の前世が異世界の勇者だった件  作者: 赤佐田奈破魔矢
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告白

「あのね......達也」


 昼下がりの大学のキャンパス。

 暇を持て余した学生たちが、キャンパス内のベンチやカフェテリアに集まり、談笑に興じている。

 かくゆう、俺たちもその1人だ。

 俺は、横にいる、ロングヘアの黒髪の美少女、もとい自分の彼女(ここ重要!)に目を向けた。

 神妙な面持ちのまま彼女は、言葉を継ぐ。


「実は私......前世は、魔王と戦う、異世界の勇者だったの」


 一瞬、思考が停止した。

 というより、脳が理解を拒否した。

 俺は、目をつぶったまま、人差し指と中指を額に押し付け、空を仰いだ。

 そのまま、4秒ほど思考を巡らせ、なんとか返す言葉を絞り出す。


「そうか! それは、すごいな! ところで、これからタピオカミルクティーでも飲みに行くか?」 


 ひとまず、話題を変えることにした。

 続きも気になったが、これ以上深く突っ込むのは、本能的に危険だと感じた。


「ちょっと、達也! 今、私のことヤバい奴だと思ったでしょ!」


 珍しく彼女が、語気を荒上げて俺に迫る。

 

「思ってない、思ってない! これから、怪しい宗教の集会に連れて行かれて、バカ高いお守りとか仏壇を買わされるとか微塵も思ってない!」

「滅茶苦茶思ってるじゃない!」


 彼女は、さらに声を荒上げた。 

 そんなことを言われてもなぁ......

 後頭部を掻きながら、頭を悩ませる。

 まさか、(しずか)が電波少女だったとは──────

 俺は再び目をつぶり、静との出会いを思い返す。



 あれは、半年前のこと────────────




「テニスサークルでーす! 入りませんかー?」


 入学式が終わった後、大学のキャンパスでは、あちこちでサークルの勧誘が行われていた。

 サークルか......どこに入るかな。

 適当に辺りを見渡しながら、サークルを吟味する。

 なにしろ、どこのサークルに入るかで、今後の大学生活が左右されると言っても過言ではない。

 ここは、慎重に選ばなくては。


「......ん?」


 その時、自身の数メートル前方を誰かが横切るのが見え、俺はふと顔を上げた。

 数瞬遅れて、目を見開く。

 脳天に雷が落ちた様な気がした。

 一目惚れだった。

 人形の様に小さい顔と、そこから生える漆の如き、黒髪。女子にしては、背は少し高めで、髪の色と相反する白い肌と華奢な体つきが庇護欲を煽る。

 テレビの中でしか見たことのないような美少女がそこにはいた。


「すいません。入会したいんですけど」


 彼女は、すぐ近くで、勧誘をしていた野鳥観察サークルの上級生に声をかける。

 それからの行動は我ながら素早かった。


「すいません、俺も入ります!」


 ダッシュで上級生に駆け寄り、ほとんど叫ぶように俺は言った。

 こうして、俺の所属するサークルは決まった。

 ついでに言っておくと、野鳥観察には微塵も興味は無かった。

 




 そんなこんなで、静と同じサークルの新入生となった俺は、西校のチェリーボーイという高校時代のあだ名を払拭するほどに、積極的にアプローチを重ねた。

 ご飯に誘ったり、話題を弾ませるための野鳥の勉強も怠らなかった。

 なんせ、静は美人だ。その上人当たりもよく、頭も良かった。

 俺以外にも狙っている奴らは大勢いた。

 そのため、既に彼氏がいる可能性も十分にあったのだが、流石にそれは怖くて聞くことができなかった。

 そして、3回目のプライベートでのデートの時、


「す、好きです! 付き合ってください!」


 俺は静に告白した。

 できれば、もう少し親密になってからしたかったのだが、もし誰かほかの男に先を越されたらと思うと、これ以上先延ばしにすることはできなかった。

 

「え.....えっと、私なんかでいいなら......いいよ」

 

 告白しておいてなんだが、絶対に振られると思っていたし、正直今でもどうしてオーケーされたのかよく分かっていないが、とにかく、俺の告白は受け入れられた。

 それからは、人生の絶頂だったと思う。

 どこから漏れたのか。俺と静と付き合っているという事実が、大学内に広まると、いつの間にか、カバンやポケットの中に殺人予告が入れられていたり、椅子に座ろうとする度、そこに画鋲が撒かれるなどの嫌がらせがしばらく続いたが、そんなことはどうでもよくなってしまうくらい、毎日が幸せに満ち溢れていた。


 そして、現在──────



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