衝動
「あっ…ぁ……く、ぅぅ…ぅ………」
ミナキは踏みつけられたまま、抵抗することも出来ずにいた。
力が入らない。
目眩。吐き気。
ナアヤはその様子を見て笑うだけ。
ミナキは察した。
このままだといつか殺される。
やるしかない。
やらなければ、此方がやられる。
でも、どうやって?
「………」
考えれば考えるほど増してゆく恐怖と絶望。
「あーあ、そろそろ授業始まっちゃう」
「……っ」
ナアヤはミナキを踏んでいた足をどかせ、さっさと教室に戻っていった。
尚も立ち上がれないミナキ。
何とか這いつくばって保健室へと急ぐ。
しかし、何と不運か。
ナアヤに蹂躙されている間、誰一人として現れなかった。
ナアヤもそれを知ってそうしたのだろうが、とにかく不運だ。
何とか力を振り絞って保健室のドアに手をかける。
そこでチャイムが鳴る。
もう、何もかもミナキの思惑に反してしまった。
ドアにかけたその手を、このまま放してしまおうか。
再び山に戻って、独りで死んでしまおうか。
保健室は少なくとも『死にたい』願望を持つ者のためにあるわけではないだろう。
ミナキはドアから手を放しかけた。
しかし、そこでドアが開き、ミナキの瞼に一人の大人の姿が映った。
「……あら、アナタどうしたの?」
「……せ………ん……せ…………ぃ…」