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イロナシ  作者: ミクロ大統領
12/27

緑に抱かれる

ハルカはミナキに連れられて学校の裏山に登った。


井野須木山。

標高500m程度のちっぽけな山だがリョウジは3mしかない山の話をしていたので、それに比べたら大きいのだろう。


二人は山頂から町を見下ろしていた。


「…ハルカ、ありがとう。本当に…ありがとう」


「…」


「私一人だったら、きっと思い止まってた」


その方が良かったんじゃないか。

ハルカの内心はそうだった。

だから何も言えなかった。


「私は間違ったことなんてしてないと思うの…。

いじめられて、それでも学校に行かなきゃいけない理由なんて…私には分からない」


ハルカは俯いた。

ただひたすら、ミナキに発言を許すしかない自分の弱さ。

誰かを救いたくて行動したのに、その責任すら取れなかった弱さ。


「ハルカは私を助けてくれた。

だから私と一緒に来てほしい…本当に不安で怖かった時間から、私を自由にしてほしい」


「……」


ミナキとハルカは顔を合わせる。

ミナキはハルカに期待し、ハルカは自罰的な感情に苦しむ。


それは表情として互いに伝わっていた。




…そんな空気を裂くかのように、突然の大声。


「ハルカっ!!」


ハルカは名前を呼ばれて反射的にその方向を向く。

立っていたのはリョウジ。

ハルカの父親、リョウジ。


「お前っ、ハァ……こんなところに…ハァ……!」


「パパ!何でここに…」


「先生から……連絡があったぞ!お前……お前が教室にいないからって!

そこの君もだよ…!

学校にいなかったから…近所の人たちに訊いて…ここに来たんだ!」


井野須木山と訊き、その山頂まで走ってきたらしい。

リョウジはハルカの頬を平手で叩いた。


「バカがっ!」


その平手は、ハルカにとってこの世のどんなモノより威力があった。

ただ肉体的な痛みよりも、精神的な痛みが強かった。


「初日から不登校なんて…お前……お前……!」


「……」


ハルカは何も言わなかった。

ミナキに対して何も言えなかったのとは違う。

意図して何も言わなかった。


リョウジはハルカの手をミナキと同じように引っ張り、学校に戻るように歩き出した。

そしてミナキの方を向き直り、


「………君もだ」


とだけ言った。

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