表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
イロナシ  作者: ミクロ大統領
11/27

灰色コンベヤ

二人は学校を出て、路地裏まで逃げていた。

ハルカはミナキに手を引っ張られて抵抗こそしなかったものの、これからどうするつもりなのかという不安があった。


「……ミナキ…ちゃん…」


「…ハルカちゃん、ナアヤと関わっちゃ駄目…。

ナアヤに何か言われても…ハルカちゃん、絶対反応しちゃ駄目だよ…」


「どうして?あんなの放っとけないよ!」


ハルカはミナキの真意が分からなかった。

ただただ負け犬のように全てを受け入れるべきだと言っているのか

それとも別の意図があるのか。


ミナキは俯いて小さな声で答えた。


「ナアヤの親は…地方の議員なんだって…。

だから、ナアヤが私達に何かしてきても、先生は何もしてくれない」


ハルカは否定しようとした。

そんなの間違っている、と。

しかしそこで、学校のチャイムが鳴った。

どうやら授業が始まってしまったらしい。


「ねえ、ハルカ……さっきは私を助けてくれたんだよね。

ありがとう…ハルカ」


「…困ってる人を助けるのは当然でしょ?」


「皆はその『当然』のことさえしてくれないもの…」


ミナキの言葉にハルカは何も返せなかった。

当然だと思っていたこと。

それを、誰も行わない。

そういう環境に置かれた少女に対して、ハルカがかけてあげられる言葉はもうなかった。


「ねえ、ハルカ。学校なんて行く意味あるのかな…。

道徳を勉強してもいじめはなくならない。先生は口だけで助けてくれない。

勉強さえ出来れば、誰かをいじめても褒められる。

歪んだことがあっても、誰も正そうとしないんだもの…。

学校なんて、消えてしまえば良いのにね…」


尚更。

尚更かける言葉がなくなってしまった。

同時にミナキの心の闇を晴らしたい、という気持ちもあった。

だが、もう戻れない。

ハルカは今になって後悔した。

あの時、無理矢理にでもミナキを制止しておくべきだったと。

そうすれば、自分がナアヤにいじめられるだけで済んだのだから。


「ごめんね…」


ハルカは消え入るような声で呟いた。

ミナキには、その声は届いていなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ