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ACT01 ストリートファイト

『ターゲットは、本当にアーカスシティに降りたのか?』

 通信機から流れてくる声は、どことなく無機質で感情が欠けていた。

「はっ、中継軌道ステーション内で、アーカスシティ行きの定期便シャトルに乗り換えるところが、五時間前に目撃されております。

 現在、アーカスシティ内の主要なポイントに、配下の人間を配置する手配をおこなっているところでございます。

 発見できしだい、監視に入る予定でございますが」

 グレンは、あらかじめ用意したメモを見ながら、状況を簡潔に報告した。

 無駄を嫌う相手だった。

 超空間を通しての超遠距離通信だが、返事が戻ってくるまでに若干のタイムラグがある。

『五時間前か……なぜ、もっと早く報告しなかった?』

 ごくわずかだが、男の声に感情があらわれた。それは、尊大で他人を見くだすような、毒をふくんだものだった。

「ははっ、大変申し訳ございません。

 手配書の本人かどうかという、身元確認に手間どりまして……」

 グレンは、平伏せんばかりだった。

 音声のみの通信だというのに、まるで目前に相手がいるような態度だった。

 画像が送られてこないのは、万が一の盗聴を恐れてのことだった。音声も、送信時に変調がかけられ、声の主の正体を探ることさえできない。そこまでして、自分の正体を隠したいのは、グレンではなく、通話先の男の方だった。

 男は"キーラー"というコードネームで呼ばれている。

 本名も知らなければ、素顔も知らない。

 他にわかっていることといえば、巨大な組織の代理人としてグレンとつながりがあるだけだった。

 アーカスシティのグレンといえば、惑星セルテゾールの暗黒街でも、その名はかなり知られている。辺境とはいえ、暗黒街では大物の方だった。凶暴さと狡猾さでのし上がった人間だけに、性格は傲慢で、他人に頭を下げることなどまずない。

 だが、キーラーと名乗る男が相手の場合、その態度は一変する。暗黒街の大物の貫禄など、どこにもない。

 もっとも、キーラーという男の恐さを少しでも知っていれば、誰だって言葉使いも丁寧になる。気まぐれにでも怒らせれば、グレンから全ての権力を奪い去ることなど簡単だった。

 アーカスシティの暗黒街を牛耳るボスといえども、それを上回る力の持主には屈伏せざるをえない。

 暗黒社会での力関係は、ストレートなものだった。

 戦争終結後のどさくさで、グレンが暗黒街のトップにのし上がることができたのも、強大な"力"の後押しがあったからだった。キーラーと名乗る男の、背後に見え隠れする"力"は、味方につければ頼もしいが、敵に回せば恐ろしい存在だった。

『まぁ、いいさ……まだ、居場所を突き止めてはいないんだな』

「はっ……現在、懸賞金付きの手配書を、末端まで回しております。

 居場所が判明するまで、そう時間はかからないと思いますが」

『結構だ……ターゲットの身柄を拘束する準備を進めておけ。

 発見したとしても、まだ拘束はするな……我々が到着するまで、泳がせておけばいい。

 いいか、無傷で捕らえるんだぞ……我々が、セルテゾールに到着するまでには、まだ間がある。こっちの到着に合わせて、拘束活動に入るんだ』

「直接、行動されるのですか?」

『貴様らの、働きによりけりさ……こちらとしても、無駄な行動をしたくない』

「ご期待にそえるよう、努力いたしますが……成功のあかつきには、お約束の件……」

『心配するな……アーカスシティへの密輸ルートを、貴様のところにくれてやる。

 闇物資から、麻薬、武器……全部、自由になる。

 アーカスシティどころか、セルテゾールの惑星全域を支配下におくことも夢ではなくなるんだぞ』

 キーラーは、グレンの欲望を巧みに刺激する。

 暗黒街の住人にとって、キーラーの提示する利権は魅力だった。キーラーの指示通りに動くことで、その利権が与えられる。これがあるからこそ、キーラーに頭を下げることも、グレンも我慢ができる。

「警察はいかがいたします? 今回の仕事は、表社会に与える影響が大きいので……邪魔が入ると思いますが」

『警察とマスコミには、こちらで手を打っておく……我々としても、ターゲットの身柄を拘束するまでは、よけいな邪魔をされたくない』


       ◆


「馬鹿にするんじゃないよっ!」

 突然の大声に、レッドはウォルフと顔を見合わせた。

「?」

 レッドとウォルフはハンバーガーショップの混雑をすり抜け、カウンターにたどり着いたばかりだった。

 デルタクリッパーの整備が完了し、リンの監視から解放されたのは、ついさっきだった。部品交換などの大がかりなメンテナンスがない時には、ほとんどの作業を三人でこなさなくてはならない。自由貿易業者といえば聞こえはいいが、内実は零細企業だった。全ての作業が終ったときには、ハリケーンなどどこか遠くへ去ってしまっていた。リンが、新しい仕事を見つけ出さないうちに、レッドとウォルフは宇宙港から抜け出していた。食べそびれた昼飯をやっつけてから、夜の街で遊ぼうという算段だった。

 客席の方で、トラブルが起きたらしい。アーカスシテイのダウンタウンでは、よく見かける光景だった。

 もっとも、ハンバーガーショップの中でケンカをやらかすのは珍しい。

 レッドは、客席の方に視線を移して苦笑を浮かべる。どこの街でも見かける小さなトラブルだった。

 軍用のコートを羽織った男や、汗臭い革のジャンパーを着込んだ連中が、一人の娘を取り囲んでいる。肩で風を切る歩き方を見るまでもない。暗黒街の人間たちということぐらい、すぐにわかる。

「何だい、あの連中?」

 レッドが、小声でウォルフにささやいた。

「それにしても、汚ねぇ身なりだぜ」

 小声で吐き捨てたレッドは、ウォルフを見あげて片目を閉じて見せる。

「俺たち、宇宙船乗りは……飛びきり上品だからな」

 レッドの皮肉に、相棒のウォルフが返事のかわりに、口元をかすかに曲げて笑った。

 レッドも連中と、大差ない姿をしている。下手をすると、連中の方がシャレた格好かも知れなかった。

 レッドは、作業ズボンとTシャツの上から、使い込んだ降下兵用のジャケットを羽織っている。宇宙船の中だろうと、街中だろうとおかまいなしだった。

 ウォルフの方は、汎用のスペースジャケットを身につけている分だけ多少宇宙船乗りらしい姿だった。だが、シルバーメタリックのスペースジャケットも、使い古して相当くたびれている。

「それにしても……あのお嬢ちゃんも、ただ者じゃねぇな」

 ウォルフが、つぶやいた。

 男の子を思わせる娘だった。栗色のショートカットの髪も、軍用ジャケットとズボンという格好も、娘の活動的な性格をあらわしている。

 レッドと同い年ぐらいか……せいぜい、十八歳前後だろう。

 眉をつりあげ、男たちをにらみつける娘の表情は、怯えなどかけらもない堂々としたものだった。

「どこの誰だか知らないけど、ケンカなら買ってやるよッ!」

 痛烈な啖呵に、ウォルフが眉をしかめた。

 かわいい容姿と裏腹に、言葉使いはかなり荒っぽい。

 娘の態度も、かなりケンカ慣れしている。もっとも、そうでなければアーカスシティで生きて行くのは難しい。

 派手な物音とともに、絶叫が響き渡った。

 きゃしゃな外見に似合わず、娘は強かった。

 不用意につかみかかった男の腕を、あべこべに娘がねじりあげていた。

「店の中で、戦争を始めやがったぜ……あのお嬢ちゃんも、貴様の同類だな」

「だったらなおさら、放っておけねぇや」

 レッドは、意味ありげなウィンクをウォルフに送った。

「おい、レッド……」

 ウォルフの声に、レッドは笑顔を浮かべた。

 レッドが笑うと、いたずら小僧のようなあどけない笑顔になる。見た目は、穏やかで平和そのものの気さくな笑顔だった。

「見物して来よっと!」

「おい、ちょっと待て……このガキ!」

 ウォルフが止めるひまさえない。

 乱闘現場に向うレッドの足取りは軽快で、スキップでも踏みかねないものだった。身体の奥底から発散される強大な熱量が、レッドを動かしている。

 こうなると、もう誰にも止められない。

「あの馬鹿野郎……俺は関わらんぞ」

 背後から飛んできたウォルフの声に、レッドは了解とばかりに手を振った。

 ウォルフの小言など、いつでも聞ける。だが、ケンカの見物となると話は違う。タイミングを逃すと、見物する前に終ってしまう。

 今日のレッドは、運がよかった。

 娘の威勢のいい啖呵に男たちが挑発され、騒動が大きくなり始めたところだった。

「えいっ!」

 つかみかかってきた男の腕をかいくぐり、鋭い声とともに娘が腰を軽く沈めた。

「!」

 見事な背負い投げだった。

 大きく空中に弧を描いた男が、着地した先に軽合金製のテーブルがあった。ものすごい音が響き、テーブルがひっくり返る。

 腰をしたたかに打ちつけた男は、すぐには動けない。

「貴様!」

 男たちが、色めき立った。

 あっという間に二人も倒されては、冷静でいられるはずもない。

 一瞬、にらみ合いになった。

「さっさと、やっちまえよ……見てる方がじれてくらぁ」

「!」

 突然の部外者の声に、男たちは一瞬凍りついた。

 声をかけたのは、レッドだった。

 あっけにとられている男たちの間を、レッドは悠然とくぐり抜け、娘の方へ歩み寄る。あまりに自然で無造作な歩みに、誰もレッドを止めなかった。

「よっ、元気がいいな」

 この一言で、娘が我に返った。

「誰よ、あなたは?」

 娘に意味ありげなウィンクを送り、レッドが微笑んだ。

「交代しようや……見物しててくれ」

 レッドの言葉で、男たちは状況を悟った。

「誰だ、貴様!」

 怒気をはらんだ声に、レッドが肩をすくめた。

「傍観者に徹するつもり、だったんだけどね。

 面白そうだから、混ぜてもらおうと思ってさ」

 レッドが言い終わらないうちに、一番近い位置の男が背後から殴りかかってきた。

「!」

 くるりと、レッドの身体が反転する。

 背中に目があるような自然で柔らかい動きだった。

 目標を見失い、男の拳がレッドの右脇へ流れた。ヒュッと、笛のような鋭い呼気がレッドの喉からもれる。

 その動きを捉えられた人間はいなかった。

 男の拳を払いのけるのと同時に、バックハンドで飛んだレッドの拳が、男のこめかみをヒットしていた。

「せっかちな野郎だなぁ」

 声も立てずに昏倒した男をながめ、レッドが苦笑を浮かべる。

 相手が先に手を出したという口実が出来たのだから、レッドに異論があるはずがない。男たちをにらみつけ、軽く腰を落して身構える。

「準備体操は終りだ……さぁ、始めようぜ!」

 男たちの間に、動揺が走った。

 並の相手ではないことぐらい、今のレッドの素早い身のこなしでわかる。

 男たちがためらうのを見て、レッドは鼻を鳴らした。

「それとも……男が相手じゃ、手が出せねぇって言うのかい?」

 これは効果があった。こういったタイプの人間は、自尊心だけは妙に強い。挑発とわかっていても、乗ってしまう。

「野郎!」

 残っていた男たちが、いっせいにレッドに飛びかかってきた。

「ばーか!」

 それこそ、レッドの狙いだった。

 戦場で鍛えられたレッドの動きは、常人に追える早さではない。

 蹴ってきたところを、横に身体をスライドさせ、そのまま胸元につけ込む。

「!」

 男の脇腹に、レッドの強烈な肘打ちがめりこむ。向こう脛を蹴っとばし、つんのめったところを、膝蹴りで鼻を叩き折る。

 間違えても正義の味方ではない。どう見ても、レッドの方が悪役だった。

 一手で、相手を戦闘不能にさせる戦場の技は、街中のケンカとは残酷さが違う。白兵戦用の荒っぽいものばかりだった。

 かなわないと見てとった男の一人が、そっと乱闘の現場から離れてゆく。

 素早く逃げ出そうと駆け出した瞬間、誰かに足を払われて転倒する。

「何しやがる!」

 そう怒鳴った瞬間、襟首をつかまれた。

 強大な力で吊りあげられた男が見たのは、凶悪な人相のウォルフだった。ウォルフの青い瞳が、鋭い輝きを見せる。

「自分一人だけ戦場を離れちゃいかんな……敵前逃亡は、銃殺だぜ」

「違う……俺はただ……」

「仲間を加勢に呼びに行くつもり……かい?」

 ウォルフが、口元をゆがめて笑う。

 頬に走る一条の傷跡が、よけいに恐怖感をあおる。

「なおさらよくねぇな……てめぇらが売りつけたケンカだぜ。

 男なら男らしく、自力で始末しやがれ!」

 その言葉を言い終わるのと同時に、ウォルフの拳が男のアゴを打ち砕いていた。

 体重の乗った、最高のストレートブローだった。ウォルフも、元軍人……それも、荒っぽさで有名な強襲揚陸艦乗りあがりとくれば、ケンカが嫌いなはずがない。

 ただ、レッドより少しばかり分別があるだけだった。

 やはり、レッドの相棒に間違いがない。

 派手に弾き飛ばされた男が、大地に後頭部から着地するのと、レッドが最後の一人を始末するのがほとんど同時だった。

「潮時だぜ!」

 ウォルフの声に、レッドがうなずいた。

 ケンカは大好きだが、警察は大嫌いだった。下手に関わると、ろくなことにならない。

「さっさと逃げようぜ」

 レッドは、傍らで呆れたような表情で立っていた娘に笑いかける。

 いつもと同じレッドに戻っている。今の表情を見て、先ほどまで暴れていたレッドの姿をつなげるのは難しい。

 足元に置いていたバッグを手にした娘は、レッドにせかされるように、歩き出した。

 遠くから、ポリスカーのサイレンが近づいてくるのが聞こえる。

「こっちだ」

 先を早足で歩いていたウォルフが、薄暗い横道を示した。アーカスシティの裏道は複雑怪奇に曲がりくねり、土地勘のない人間では、まず間違いなく道に迷う。

 小走りで、レッドと娘がウォルフの後を追う。

 雑然とした裏通りを走り抜け、隣のブロックへ出る。

 眼の前は、旧市街区と新市街区を分ける、百メートル道路だった。幹線道路のため、様々な車が走っている。

 地表数十センチを浮上走行するエアカーから、通常のタイヤ駆動の車両まで雑多な種類が行き交っている。

「おっ、ラッキー!」

 歩道沿いの退避車線に、無人運行の電動コミューターが客待ちをしているのを見つけ、ウォルフが素早く乗り込んだ。

 コンソールのスロットにカードコインを挿し込み、コントロールパネルのタッチキーで行き先を指示する。オモチャのような四人乗りのコミューターは、主要ブロックを結ぶ、ちょっとした手軽な公共交通機関だった。

 レッドが、娘が乗り込むのに手を貸す。

「急げ!」

 ウォルフにせかされ、レッドが転がり込むのと、コミューターがモーターの唸りをあげて走り出すのが同時だった。

 反対車線を、赤と青の回転灯を明滅させながら、ポリスカーが通りすぎてゆく。

「連中は、どこの馬鹿だろうな?」

 レッドの問いに、ウォルフは肩をすくめた。

「どうせ、不良少年どもだろ?」

 渋みのある低いウォルフの声だった。百九十センチを上回る長身と、鍛え抜かれた頑丈な体格にふさわしい声をしている。

「どこの街にも、ああいった連中がくすぶってる」

 ウォルフの方は、まるで興味なさそうな冷めた態度だった。レッドもウォルフも、嫌というほど過酷な現実を見てきている。

 統合戦争が終結して、三年が経過していた。

 おびただしい数の失業軍人が、街中にあふれている。戦災孤児の数も、相当なものだろう。治安は乱れ、力こそ正義という時代が始まっていた。

 辺境のアーカスシティでも、それは同じだった。

 旧市街区のダウンタウンには、警察さえ滅多に入ってこない。

「助けて……くれたの?」

 やっと、娘が平静さを取り戻したらしい。猫族のような大きめの瞳が、興味深そうにレッドとウォルフを交互にながめている。

 いい表情だった。表情や身のこなしの節々に、伸びやかで活発な気性がうかがえる。

 深い青色の瞳が、何とも言えない魅力を持った娘だった。

 前のシートに腰を下ろしていたウォルフが、かすかに笑顔を浮かべる。もっとも、見慣れているレッドには笑顔に見えるが、ウォルフを知らない人間にとっては顔をしかめたぐらいにしか見えない。

「なりゆきってやつだな……この馬鹿者が、人助けなんて気のきいたことを考えつくはずがねぇ。

 ただ、誰かにケンカを売りたくてうずうずしていたところに、お嬢ちゃんがトラブルに巻き込まれていたってことさ」

 横に座ったレッドは、ウォルフを横目でにらんだ。

「人聞きが悪いぜ、おっさん」

「誰がおっさんだ……それより、お嬢ちゃんはどこへ行きたい?

 見たところ、旅行者らしいが……ついでだから、送ってやるぜ」

「人探しに来たのよ……探しあぐねてたところなんだけどさ。

 あなたたち、宇宙船乗りでしょ? この街に詳しい?」

 後ろのシートから身を乗り出し、娘が矢継ぎ早に尋ねてくる。

「一応、母港だからな……」

「だったら、スターエクスプレスのリン・リンファって女性を知らない?」

「!」

 レッドとウォルフは思わず、顔を見合わせる。

 スターエクスプレスは、宇宙船一隻だけの幽霊会社だった。税金の都合から船会社の登録をしているだけで、実体などないに等しい。そして、唯一の持ち船がデルタクリッパーだった。

「なんてこったい……船長のお客さんだぜ」

「助けてよかっただろ?」

 レッドの言葉に、ウォルフが小さく喉を鳴らして笑った。

「お客さんって……あなたたちは、リンの知合い?」

 驚いたようなセーラに、レッドはスターエクスプレスの身分証明書を見せた。レッドの名前と共に、デルタクリッパーの船員であることが記録されている。

「リン姐御は、知合いっていうか、商売仲間っていうか……俺たちの船の船長だよ。

 俺はレッド……レッド・ブラッドレー。

 こっちのごついおっさんは、ウォルフ・マーフィー……見かけは凶暴だけど、噛みついたりしない……痛ってぇなぁ!」

 無言のウォルフに脇腹を小突かれ、レッドが顔をしかめて抗議する。

「人のことを、怪物(バケモン)扱いするんじゃねぇ」

「フォローしてやっただろーが」

「あれのどこがフォローだ……それより、お嬢ちゃんの名前は?」

「あたしは、セーラ・シェラザート……セーラでいいわ」

「シェラザートだとぉ!」

 ウォルフの大声に、レッドが耳を押えた。

「メルイアのロッド・シェラザート少将の娘か?」

 両耳を押さえて無言で抗議するレッドを無視して、ウォルフが振向いてセーラを見つめる。

 驚いたのは、セーラの方も同じだろう。

「父さんを知ってるの?」

 セーラが、びっくりしたような表情でウォルフを見つめていた。

「知っているも何も……俺たちは、元メルイア宇宙軍の人間だぜ。

 メルイアの軍人あがりで、シェラザート提督を知らないはずがない……俺たちにとっては神に等しい英雄だったんだ」

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