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インスパイアされた作品

夜が満ちる

作者: オリンポス

 ぴかぴかと赤色に発光する誘導棒を振っていると、夜があらわれた。それは朝でもなく、昼でもなく、まぎれもなく夜なのだ。朝の輝きも、昼の怠惰もなく、夜の静寂を身にまとっていた。


 夜は暗かった。

 朝は鮮明で、昼は明瞭で、夜は暗黒だ。


 夜は言った。

「この先はどこに続いてる?」

 私は実態のない暗い影のような存在に語りかける。

「朝です」

「朝と夜は同居できない。だから俺はまっすぐ行く」


 夜は右折をうながす私の誘導に従わずに、直進する。

 私はそれを咎める勇気もないので黙って見送った。

 夜は進んでいく。


「朝と夜は同居できない」と夜は言ったけど、朝でも夜が明けない極夜と夜でも朝が暮れない白夜は、どちらが朝でどちらが夜なのだろうと考えて、それなら本人に聞いた方が早いと思って、夜を追いかけた。


 夜は、静寂で暗黒で、悲しそうだった。

 夜も、朝や昼みたいに、子ども達の顔が見たいのかもしれない。

 だったらこの先に行かせるべきではない。


「夜さん、待って!」

 言ったけど、夜は落ちた。

 崖下に落ちて、そこには静寂と暗黒が満ちていた。

 私は、今が朝なのか昼なのか夜なのかわからなくて、足元に広がる無機質な光景に夜を感じた。

川上弘美さんの(第115回)芥川賞受賞作「蛇を踏む」に収録されている掌編小説集「惜夜記(あたらよき)」を読んでて、冒頭に「夜」というフレーズが入ると、ストーリーは相変わらず意味不明だけど、めちゃくちゃセンスあるなって思って、その幻想的な世界観に感銘を受けて書きました! 正確には書かずにいられませんでした!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 幻想的でとても好きです!! これは……ジャンルがむずかしいですね笑。 擬人化だけども幻想的でなんだか人間にも置き換えられそうな不思議なリアル感。比喩のようにもみえる作品。 これ、好きですね…
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