自由を欲した少年
少年は自由になりたかった。
比較的裕福な親の元に生まれ、教養ある親の背中を見、十分な教育を施されて育った彼は幼少期から秀才天才の名を恣にし、敷かれたレールの上をただ強く速く進み続けた。それは同級生にも親にも教師にも褒められる何不自由ない生活であったはずであったが彼はなお自由を欲していた。
そんな彼が興味のままに講義をとり、バイトや遊びにと自由に生きられる人生の夏休みだと聞く大学に惹かれるのは必然であった。しかしリベラルアーツを謳う国内最高難易度の大学に難なく合格して一人暮らしを始めた彼を待っていたのは自由だった。授業を選ぶ自由、サークルを選ぶ自由、サークルに行く自由、行かない自由、バイトをする自由、好きな物を食べる自由、そして―進路を選ぶ自由。自由のその先を欲していなかったことに気づいた彼はかつて欲していたはずのものに押し潰されていった。
青年は不自由になりたかった。