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外へ出てみる

 カチャン


 その軽い音は、俺にとっては絶望という名の剣に刺された音だった。


 俺はその落ちたものを拾おうとするが、何回やってもすり抜ける。

 もう理解している。頭でも分かっている。ゲームである以上()()()()()()()()()()()は絶対的なものなのだと。




『あなたは武器を装備できません』






 くそ!くそ!くそ!くそ!くそがーーーー!



「はぁ、はぁ、はぁ」


 悪い夢だ。


「はは、何度起きても知らない天井だな」


 ベッドのすぐ横に小さい本棚があり、その上には一丁の拳銃がおいてある。

 雑士はそれを掴もうとするが、やはりすり抜けてしまう。そしていつものあのウィンドウが開く



『あなたは武器を装備できません』


「はぁ」


 雑士は深いため息を吐く。


 あの武器すり抜け騒動から二日がたった。俺は今の今まで自分の部屋で寝ていた。あの騒動があってから同じ夢、いや現実といった方がいいか。それを見てしまう。俺の心情は···









 ···絶望だ


 どうして俺なんだ?どうして()()()なんだ?こんな過酷な運命を背負うは。俺は何もしなかった。いや、何もできなかった。たとえ力を持っていても。

 そんな自分が情けなくなって、何かを成し遂げようともしなかった。なぜそんな俺がこんな運命になるんだ?


 神を信じてはいないが、今は神に聞いてみたかった。




『俺でいいのか?』と。





 いつもの冷静さは失った。

 この苛立ちを無くしたかった。特に意味もなくタンスをおもいっきり殴った。


 タンスはびくともせず只そこに俺を嘲笑うかのように立っている。その時ウィンドウが飛び出してきた。

 俺は『現段階ではインベントリに収納できませんでした』この文字がでてくると思った。




 しかし、出てきたものは全く別の文字であった。



『インベントリの収納条件を攻略しました。

 攻略条件 特定ウィンドウの表示

 表示内容 あなたは武器を装備できません

 インベントリ内容量 無限

 インベントリ特性 どのような形でも収納可。自分の指定した内容を取り出し可。収納したい内容に触れ「収納」と言うことで収納可』





 ···このタンスに触れて思うのは二度目になるな。





 びっくりした


 取り敢えず収納って言えば何でも収納出来ることしか理解してないんだけど。


 ···やってみるか?



「収納」


 そう言うとそのタンスは光を発しながら雑士の手のひらに吸い込まれていった。


 これが収納か。中々便利だ。先ほどの文章を思い出す限りこのスキルは俺しか使えないのかもしれない。あの場にいた全員武器を持っていた。つまり、あのウィンドウが表示されたのは俺ただ一人だけなのだ。このインベントリの収納条件の攻略にはあのウィンドウを表示させなければならないらしい。この事から必然的にこの能力は、俺しか持っていないという結論に至る。




 しかし、だな















 収納出来たところで武器が触れなきゃ意味ねぇんだよ!


 何でこんなクソスキルしかないんだ。大人しく勇者達の荷物持ちになれとでも言いたいのか?

 案外それがいいのかもしれない。RPGでも絶対に使えないキャラはいる。まだ荷物持ちができるぶん使えるキャラなのかもしれない。

 取り敢えず殴る蹴るはできる。使用人達の話を聞くとそれだけでも倒せるモンスターは沢山いるらしい。レベルも一般平均が10前後で、伝説の勇者は89だったそうだ。


 取り敢えず外に出てみるか他の皆は俺には目もくれず次の町へと、旅立っていった。親友である蟹田宇治正宏までもが。実際ついていこうと思えばついていける。かなりのお荷物となってだがな。結局正宏も俺に一言も声を掛けなかった。


 とても良い親友を持った。そう思う。


 昔俺が「慰めはいらない。慰めっていう行動は可哀想という感情からくるもんだ。そして可哀想という感情は自分よりも劣った者にしか抱かない」と言ったことがある。正宏はその意思を汲み取ってくれただけだ


 取り敢えず今後の目標は元の世界に帰ることだ。こんなクソゲーの異世界に住めるかっていうんだ。




 ……………

 …………………………



 さて、外に来てみたのだが見渡す限りの草原だ。そして目の前には翼が生えた蛙。





 うん、異世界だね!!なんだこいつ気持ちわるっ!異世界最初の敵が翼が生えた蛙とか運ねぇな。


 そう思い俺は翼が生えた蛙を踏みつける。グシャという効果音とともにリアルな感触が足裏に伝わる。


『エンジェルフロッグを倒しました。EXPが2000入ります。レベルが26上がり、レベル27となりました。

 スキル獲得条件を満たしたため、新スキルを覚えます。

 スキア、ミニバッグ、威嚇、潜伏、バックアタック、盗む』


 うわ、めちゃくちゃレベル上がった。あの蛙、レアモンスターだったのか。それにしても上がりすぎである。普通こんなゲームあったら、販売中止になるだろう。


 しかしながら、レベルアップか、ゲーマーとしてはステータスを確認したいところだ。さぁどの程度上がっているのか楽しみだ。


 雑士は期待に胸を踊らせ、その呪文を唱える。


「ステア!」


 日屋 雑士


 所持品 タンス

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