図書館に行ってみる
図書館に着いた。
さて何から調べよう。まぁ決まってるけど
俺はその調べたいことが書いてそうな本を一つ手に取る。
『ギルガディア伝説』
この図書館の本には「ギルガディア」という文字があるタイトルが数多く存在している。この事から分かるのは、この国もしくは世界がギルガディアという国もしくは土地なのだろう。
俺が調べたいことは、この異世界の歴史だ。魔王がいるといったがそれは今回が初めてなのか、それともすでに何回も起こったことなのか。ゲームの中だけに設定は山ほどあるだろう先ずはそれを理解する。それが俺がゲームをやり始める前にすることだ。
で、この本を手に取ったのだが。
ぶ、分厚い···
軽く1000ページは越えている厚さだ。これは読めないな。軽くパラ読みしてみるか
パラパラパラパラパラパラパラパラパラパラパラパラパラパラパラパラパラパラパラパラパラパラパラパラパラパラ
よ、読める!読めるぞ!
今更だがこの異世界の文字は漢字と平仮名の日本語だ。自然すぎて気にしてなかった···って!そうじゃない!パラ読みするだけで本の内容が頭に入ってくる!なんだよこれ···
めちゃくちゃ便利だ。
今まで小説なんかを読んでたのがバカらしくなってくる。取り敢えず、この本にかいてあることを要約すると···
昔々あるところに勇者と魔王がいました。魔王は悪さを働いていたので勇者が懲らしめてやろうと各国の屈強な戦士を集め、魔王を倒す旅へと出発しました。
そして2年の歳月を費やして勇者は魔王を打ち倒しましたとさ。めでたしめでたし。
···いや、うん、シンプルイズベストって言葉があるし、まぁ良いんだろうけど···
それにしてもひどくない?
もっと凝った設定ぐらい思い付くだろ!親父達!
この分厚い本から分かったのって、このありきたりな設定と超速読が出来るってことぐらいじゃねぇか。
···はぁ、気になる本、片っ端から読んでいくか。一冊読み終わるの10秒もかからないし。
ー1時間後
こんなもんか、だいたい百冊ぐらいは読んだか。
この1時間で分かったのは先ず魔法が使えることだ!
「ステア」
そうつぶやくと無機質な声が聞こえ、目の前にステータス表が表示される。
『ステアLv 1起動します』
日屋 雑士
Lv 1
HP 521
MP 24
物攻 41
物守 52
力 112
魔攻 0
魔守 52
運 130
次EXP 51
次スキル スキア
オッホー良いね!さすがゲーム!親父達分かってんなー
ちなみに次EXPはつぎのレベルになるための必要経験値で、次スキルは次のレベルで覚えるスキル名だ。
「スキア」か···名前的には持っているスキルが分かるといったところか。確かにステアにはスキルが表示されていない。自分のスキルぐらいは分かっておきたい。
それとステータスの平均値はHPが500その他は50だそうだ。魔攻が0って絶望的なんじゃないか···でも、力と運は平均の2倍以上ある。力と運で戦う勇者···ダサすぎるだろ。魔法とか使ってみてぇよ
すると突然頭のなかに声が流れてくる
「勇者達よお前達に渡すものがあった。すまんがもう一度玉座の部屋まで集まってくれ」
おぉ、脳内に直接···すげぇ。
小学校3年生みたいな感想しか出てこなかった
「さて行くか」
……………
………………………
···迷った
俺は別に方向音痴ではない。一度来た道はほとんど忘れないし、地域の道は近道でさえ頭の地図に入っている。そんな俺が迷った。それすなわち、この王宮が広すぎるのだ。道が全部同じに見えるっていうか同じだ。
どうにかならないものか。
すると人影が廊下の向こう側に見えた。
大声で話し掛けたいが、まぁ陰キャの俺には難易度が高すぎる。ここは無難に走って行って声をそっとかけるとしよう。
そして俺は走った。走ったのだが追い付かない。
え、あの人歩いてないよね?まるでおれが足踏みしてるみたいなんだけど。
するとすっとその人影は消えた。
···は?ゆ、幽霊?
ま、まぁ異世界だからな!そんぐらいいても不思議じゃない!
···と、思いたい。
あ、あれ?玉座の部屋の前にいる。いつの間に?転移魔法でも使われたのだろうか?
···この数秒で元の世界で有り得ないことが3回ほど起こったのだが誰か説明してくれ!
もういいや。深く考えるのはやめよう。だって異世界だもん。しょうがない。
そうやって雑士は自分に言い聞かせた。
そろそろ玉座の間に入るか。中からわいわいがやがや聞こえてるし。
そう思って雑士は中に入る。そして、雑士の方に視線が集まる。
ですよねーー!
遅れてきたんだもん。視線、集めちゃうよねー!まじ恐いんだけどみんな武器持ってるし!
ん?武器?なんでみんなそんな物騒なもん持ってんの?
と、雑士が疑問に思っていると兵士が一人近寄ってきた。
「今、王が勇者の皆様に武器を配布しております。王の元で武器をお受け取りください」
「は、はい」
今、少しだが気になった点がある。それは兵士達の王の呼び方だ。普通圧倒的に立場が下なのだから敬称をつけて呼ばないのだろうか?それが異世界のルールならどうとは言わないが、しかし何故か気になってしまった。
そんな事を考えているうちに王の前まで来てしまった。
すると王は一丁の拳銃を取り出した。
···は?
この世界の武器って銃なの?確かにクラスメイトに持ってるやつもいたな
雑士は両手を出して拳銃を受け取ろうとした。
しかし、その拳銃は雑士の手をすり抜け床に落ちていった。
そしてウィンドウにこう表示された。
『あなたは武器を装備することができません』
···············は?
日屋 雑士
所持品 なし