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最弱種族に革命を!  作者: 滝原秋真
第一章 兎人族編
12/12

兎の番長

「カイセル君、今日も学校こないねぇー」


「……はい」


カイセルが捕まってから一日が経過していた。

あれ以降、ルルティナはカイセルと会っていない。

ボディーガードとしての仕事があるのだから、今日も早朝に屋敷で会うはずだと思っていたのだが、屋敷にはいなかった。

フレッシュ族に捕まっているのだから当然である。

そして事実を知っていたティファは、複雑な心境であった。


(私的にはライバルも減って嬉しいのだが……このことをルルティナ様がしればどれだけ悲しまれることか……。いや、もしかしたら私は嫌われてしまうかもしれない。なんとしても事実はバレないようにしなければ!)


「ティファはなんか知ってる?」


「――ふぇぇえ!?な、なにがですかー?」


明らかに動揺していたし、挙動も変だったのだが、天然のルルティナはもちろんそれに気づいてはいなかった。


「ボディーガード仲間として、なんか話聞いてない?カイセル君から」


「い、いえ……とくに……」


「そっかー。早く会いたいなぁー」


この日、ティファは初めてルルティナに嘘をついた。

しかしルルティナ本人がそれに気づくことは、もちろんなかった。


と、遠くでなにやら騒いでいる連中がいることにティファは気づいた。

ティファはロップイヤ族の者であり、視力が頭抜けていた。

そんなティファの視覚が捉えたのは、ある兎人三人組であった。

一人は学校の有名人、番長レンだ。

他の二人もわりと有名で、メーブルとブラゼンだ。

メーブルとブラゼンは従順なレンの側近として有名なのだが、どういうわけだかレンが二人をボコボコにしている。


「ティファー、どうかしたのー?」


ルルティナが私のすぐ側まで来ると、その騒ぎに気づいたようだった。

ちょうどルルティナが気づくと同時、あらかたボコボコにし尽くしたレンがこちらを向いた。

直後、レンの表情は明らかに朱色へと染まり、さっと視線を外すとその場を立ち去っていった。


「どど、どうしよーティファちゃん!!人が倒れてるよぅー」


あわわわ、と動揺するルルティナ。

対してティファは冷静に事態を認識していた。


(これは面倒なことになりそうだ……)


***


レンには何時も一緒の、兄弟同然の舎弟が二人いた。

メーブルとブラゼンである。

メーブルは身長二メートル越えと二年生にしては巨大であり、部族の特徴が色濃くでていることが伺える。

そう、彼はフレッシュ族の者であった。

フレッシュ族はワイズ率いるボーパル族への恨みが特に強い一族であった。

それが原因でメーブルは学校内にいるルルティナに対して嫌悪と恨みを感じていた。

一方でブラゼンはチンチラ族の者であり、彼らもボーパル族への不信感を少なからず抱く一族であった。


「アイツっ!ワイズの娘だ!」


「クソっ、暢気に授業受けにきやがってよ。少し痛い目合わすか」


「だな」


となると、自然とこうなるわけだが。

これにいち早く反応し制止を呼びかけたのは、意外にもレンであった。


「やめとけ、お前ら」


「「なんで止めんだよ兄貴!」」


「お前らが戦って敵う相手じゃない」


レンが呼び止めた理由は単に想い人を守るためであったが、事実としてルルティナの側にはティファがいた。

ティファの強さはレンやメーブル、ブラゼンも知っていた。


「ちっ!ボーパル族の犬がッ」


ボーパル族とロップイヤ族は非常に仲のいい部族関係を築いていた。

そのためティファはボーパル族を守るため幼少から鍛えられている。

これは兎人族にとって有名な話であり、それがティファという名の少女であることも伝え聞いていた。


「こっちは三人がかりっすよ!パワーだけなら学校一番のメーブルと、それと互角に渡り合えるレイ兄貴がいるんすよ!?それでも負けるというんすか?」


「……いいかお前ら。ティファだけじゃねぇ、ルルティナにも手を出すな。いや、違うな。ティファはぶっちゃけどうでもいいが、ルルティナには手を出すな」


「……それ、俺たちの境遇知ってて言ってるんすか?レン兄貴」


ブラゼンが挑戦的な声音でそうレンを睨む。

ブラゼンとメーブルは二人とも兄弟を人間たちに殺されていた。

それゆえに、その人間たちと交流のあるワイズとその一族を恨んでいるのだ。

だからこそ、それを知ってて何もするなと言うレンの指示には従いきれずにいた。


「さすがのレン兄貴でも、こればっかりは止めさせねぇっすよ」


両者ともにまったくレンへの言葉に耳を貸さない。

レンは沈黙を続けた後、静かに呟いた。


「じゃあ死ね」


***


時刻は学校が始まる以前の早朝六時まで遡る。

カイセルにとって、普段は訓練をする時間であった。

身体が覚えていたのだろうか、自然と意識が覚醒していく。

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