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第二十三話 襲撃者との戦闘

 










「貴様ら、このお方が誰だかわからないのか?王位継承権もお持ちの王族、デボラ王女殿下だぞ!道を開けんか!!」


 アルフレッドさんが声を荒げます。

 本来であれば、別に横に控えて頭を下げる……なんてことはしなくてもいいです。


 ですが、王族の進む道を遮るように、複数人で道を塞いでいるのは、明らかに不敬で礼を失しています。

 下手をすれば、不敬罪で牢獄にぶち込まれるでしょう。


 オラース王子ならしないでしょうが、レイ王なら間違いなくします。

 さて、デボラ王女は……。


「絞首刑?斬首刑?……爆殺刑?」


 なるほどぉ……流石は私の見込んだ王女ですね。

 私も通せんぼをすれば、あれらのフルコースを味わうことができるのでしょうか。ふふふ。


「……おかしい。普通、王族だと分かれば……それも、『癇癪姫』だと分かればすぐに逃げるはずなのに」


 ミリヤムが隣で呟きます。

 確かに、彼女の言う通りです。


 恐怖政治に近い統治を行っているレイ王の治世下で、王族に逆らうことを企む者などいないでしょう。

 なまじ力のある貴族などならわかりませんが、道を塞いでいるのは見るからに山賊といった風貌の男たち。


 彼らも落伍者とはいえ、手を出してはいけない存在だということくらいは分かっているでしょう。

 それに、宝石などの財産と共に移動しているのであれば理解できますが、今の私たちにそのようなものは一切ありません。


 山賊からしても、襲う意味などまったくないはずです。

『癇癪姫』という悪名高いデボラ王女を狙っているというのも、何とも意味の分からない話です。


「お、そいつはデボラ王女であってんのか。聞く手間が省けたぜ」


 ニヤニヤと笑って言う、一際背の高い男。

 がっしりとした体格は、彼もまたかなりの実力を持つ者だと分かります。


 ふっ……是非ボコボコにしてもらいたいですね……。


「なに?貴様、いったい……」

「悪いな、王女様。あんたには、ここで死んでもらうぜ」


 男の言葉の後に、彼らは粗悪な剣を構える。

 おぉ……本当に王族に牙をむくつもりですか。


 明らかに自殺行為だと思うのですが……。


「これだけの数の差だ。無駄な抵抗をしねぇんだったら、王女以外は見逃してやってもいいぜ?」


 あちらの数を見ると……大体二十人くらいでしょうか。

 こちらは、警護対象であるデボラ王女と非戦闘員であるミリヤムを除けば数人。


 なるほど、確かに戦力差は明らかです……が。


「舐めるな、山賊風情が。ヴィレムセ王国の騎士は、賊などに屈しはせん」


 アルフレッドさんの言葉に従い、騎士たちも剣を抜き放ちます。

 こちらはしっかりと手入れがされているようで、鈍い光を放っています。


 確かに、数ではあちらの方が多いですが、それでもこちらが負けるのはなかなか想像ができません。

 あちらは所詮山賊です。騎士のように戦闘訓練を受けているというわけでもなく、一人一人の実力はアルフレッドさんたちより比べものにならないくらい低いでしょう。


 戦いは数とはいえども、一方的なものでもないですしねぇ……。


「くくくっ、騎士さんは言うことが恰好いいねぇっ!そういうところが嫌になったんだが……まあいい。おら、お前ら!あいつらを殺せぇっ!!」

『おぉっ!!』


 大男の掛け声に従い、一斉に山賊たちが襲い掛かってきた。

 ふっ……来ましたねっ!











 ◆



「ミリヤムはデボラ王女の隣にいてあげてください。私も戦います」

「そ、そんな……。エリクの身体、ボロボロなのに……!」


 笑って戦場に赴こうとするエリクを見て、ミリヤムの胸は締め付けられる。

 いくら自身の回復魔法によって傷を治せたといえども、失った体力は戻っていない。


 それなのに、連続して苦難が襲い掛かってくることに、神をも恨んでしまう。


「僕に刃向おうとはいい度胸だ!ぶっ殺してやる!!」

「いえ、デボラ王女も最悪の事態になるまでは後ろに控えていてください」


 やる気満々のデボラを押しとめるエリク。

 その理由は、もちろん彼女に危険な対人戦をやらせるわけにはいかないというものもあるが、デボラの戦闘方法が『爆発』という派手なスキルを多用することである。


 エリクならいつでも巻き込まれてもいいが、山賊と近接戦闘を繰り広げているアルフレッドたちは、巻き込まれたらたまらないだろう。

 かといって、『爆発』抜きで近接戦闘をするというのも、王女を守る立場の者からすれば絶対にしてほしくないことである。


「えー……」


 不満そうに頬を膨らませるデボラ王女に、エリクは苦笑するしかない。

 難事に飛び込みたいという気持ちは理解できるのだ。


 デボラは別にそういうつもりではないが。


「仕方ないかぁ。……僕の騎士なんだから、負けるのは許さないよ」

「もちろんです」


 デボラなりの応援を受けたエリクは、騎士と山賊の激しい戦闘が行われている場所を見る。

 やはり、彼の予想通り、アルフレッドたち騎士の練度は非常に高かった。


 数で圧倒的に劣っているのにもかかわらず、押されるどころか押し気味ですらあった。

 しかし、やはり囲まれてしまって手数も違うことがあって、押し切れないというのが現状であった。


「ちっ!案外硬いなぁ。これは、少しこいつらには荷が重いか」


 戦闘を後ろで見守っていた体格の良い男は、そう言って剣を抜いた。

 山賊の長が、ついに戦闘に参加するのである。


「おらぁっ!!」


 そんな彼は、当たり前とばかりに一人の騎士の背後から不意打ちを仕掛けた。

 男に正々堂々と戦うというつもりなど毛頭なかった。


「ぐっ!?」


 しかし、騎士も王族の護衛に選ばれるだけあって、とっさに反応することができた。

 攻撃を受け止め、弾き返そうとするが……。


「お、押し込まれ……っ!!」

「はっはぁっ!!」


 ギリギリと、ゆっくりと剣が迫ってくる。

 今まで戦っていた山賊たちなら簡単に弾き飛ばすことができたのに、この男だけはそうすることができなかった。


 エリクは彼が手練れだと見ぬいていたように、実際彼はここにいる山賊たちの中で最も高い実力を保持していた。


「お前ら、今だ!やっちまえ!!」

「おうよ!!」


 男は一人で騎士を殺そうとは考えていなかった。

 動けないでいる彼を、部下にやらせようとする。


 数で囲んでいた中の一人が応え、剣を振りかざした。


「ぐぁぁぁぁっ!!」


 背中を切られて地面に倒れる騎士。

 そんな彼の頭を、男はにやぁっと笑いながら思い切り蹴り飛ばす。


 すると、騎士はあっけなく意識を飛ばすのであった。


「ひ、卑怯者が……っ!!」

「あーん?殺し合いに卑怯もクソもあるかよ!こういう騎士道精神やらが嫌で、俺は我慢できなかったんだ」


 ニヤニヤと笑いながら、男は部下たちに他の騎士を襲うように指示する。

 アルフレッドなどは怒りで山賊たちを倒していたのだが、さらなる増援に釘付けにされてしまった。


 結果として、男はデボラまで騎士に邪魔されることのない道を作ることに成功したのだ。


「厄介な騎士どもを除けば、あとは楽な依頼だわな。王族……それも『癇癪姫』なんて、『爆発』さえなかったら簡単に殺せる……が」


 余裕の笑みを浮かべながら歩く男。

 邪魔者がいないはずの道に、一人の男が立ちはだかっているのを見て、ニヤリと笑う。


「お前が俺の邪魔をするのか、勇者さんよぉ」

「もちろんです。私は、デボラ王女の騎士ですから」


 剣を抜きながら、エリクは微笑んで答えた。

 ここに、山賊の長とエリクの一騎打ちが始まるのである。


「(ふふふ……そこそこ痛めつけられそうですねぇ……)」



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