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義歯が取れた

作者: よしたろう

 去年の春、京都に泊まりがけで花見に行ったのだが、京都に着いてすぐに義歯だった前歯が取れてしまった。はめてみたら、そんなには落ちてこなかったので、それ程支障があるわけではなかったが、食事をするとすぐ取れてしまうことを、晩飯を食べた時に俺は学習した。


 翌日レンタサイクルを京都駅八条口で借りて、三十三間堂、博物館を通り過ぎ円山公園でひと休み。知恩院を横に走り、平安神宮の鳥居をくぐり抜け、琵琶湖疎水沿いを進み、南禅寺でまた休憩。永観堂を通り過ぎ、いよいよ哲学の道、白川通りのいちょう並木を進む。進むと、天下一品総本山がある。俺はいつもの京都旅行と同じく、ここで昼飯を食うことにした。


 カウンター席に座る。ひとつだけいつもと違うことがある。


「俺の前歯は食事をすると簡単に取れてしまう」


 ということだ。


 そのことを忘れてラーメンを食べて、義歯を噛んだり飲み込んだりしてしまっては大変だ。だから俺はティッシュを敷き、さり気なくバレないように義歯をそこに置いた。 しかし、それを隣りに座っていた外人のおっさんが、何事かという風情を漂わせて見ていたことに俺は気が付いた。


 まずいことになった。


「ラーメンを食べる前に前歯を取る習慣が、日本人にはある」


 などと勘違いをされたかもしれない。


「そしてその取った前歯の隙間から麺をすするのが日本流」


 などと解釈を飛躍させてしまうかもしれない。


 このような間違えた日本の習慣が、どこかの国で流されていたとしたなら、その原因を作ったのは俺だ。


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