4 荒ぶる魔族-3
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デスペナルティ軍とユアノン軍が決戦に及んでいる一方で、スヴェンソンと朧月夜はレジスタンスの手引きによって、軍隊が蛻の殻となったジーザスシティに踏み込んでいた。そこはデスペナルティの首都ではあったが、スヴェンソンはそもそもからして魔族であるし、朧月夜も外見上は人間とも亜人とも区別がつきにくい為、特に不審がられることはなかった。
「オボロさん、よくレジスタンスに渡りが付けられましたね。こうも簡単に、ジーザスシティに忍び込めるなんて・・・・・・」
「元々、私とシャマスさんはレジスタンスに戦闘指南を施す為に東域へ足を運んだんです。猪ではありませんし、何の伝手もなしに敵地に乗り込んだりはしませんよー」
夜の街に厳然と屹立する主城の外周を丁寧に回り込みながら、朧月夜が答えた。
「でも、プレアデス様はそれが建前で、お二人の真の目的は人材登用にあると仰っていましたよ?」
「うっ・・・・・・。まあ、剣導プラズマさんにはきっぱり断られちゃいましたけれどー。英雄軍の再現まで、道のりは遠いです」
「英雄軍の再現?」
スヴェンソンは朧月夜の言葉に興味を示したが、当の朧月夜が唇の前で人差し指を立て、静かにするよう注意を促した。見れば、ジキル・ド・クラウンが住まう主城の門衛が二人、怖い顔をして見張りに立っていた。
いくら闇夜に紛れているとはいえ、門を潜るには門衛へと姿を晒す必要があった。曲線を描いて立つ外壁の陰からじっと門を睨み、朧月夜はジェスチャーで敵を眠らせようと提案した。スヴェンソンはそれに乗り、むしろ自分がやると前に出た。
スヴェンソンは左腕のみを頼り、慎重に星術を発動させた。接触対象を眠りへと誘う霧が発生し、瞬く間に二人の門衛は倒れ込んだ。あまりの即効性に、朧月夜は唇を尖らせてスヴェンソンへと抗議した。
「・・・・・・その腕、反則じゃないですか?星術の強度が桁違いなように思われますー」
「あ、いや・・・・・・。状態変化の星術はそもそも得意だったりするのですが。・・・・・・<生命力>を消耗しないで星術を放てるのは、とても便利ですね」
二人は無人になった門を易々と通過した。スヴェンソンが出力の高い星術の数々を駆使することで、隠密行動は順調に進んだ。主城の内部は広く、そして相当な高さを誇ったものだが、スヴェンソンには目当ての場所が手に取るように分かった。
(左腕が、そこに向かえと訴えかけてくるかのようだ。行き先は最上階。そこにジキル・ド・クラウンもいる。・・・・・・そう、こいつは僕の腕なんかじゃない。歴とした、化け物の一部なんだ)
スヴェンソンに付いて行く形で、朧月夜はひたすら階段を駆け上った。周囲からは自分たちが透明に見えている筈で、それこそ物音も消してはあったのだが、敵陣を堂々と走り回るというのは身に覚えがなく、緊張が途切れることはなかった。スヴェンソンが元気一杯な点を喜びながらも、それが左腕と<始祖擬体>本体の接近に因る作用であるならば、朧月夜には一つの不安があった。
(スヴェンに移植したのは擬体の左腕だけ。本体が現れたとき、その影響を一身に受けて、スヴェンの精神が破壊されなければ良いのだけれど・・・・・・)
最上階には人の気配がなく、それでいて明かりだけはふんだんに灯されていた。硝子窓から覗く漆黒の空には星々が瞬き、眼下に広がる魔族の営みもまた小さな輝点で表されていた。気流の関係か、時折壁が激しく震え、窓枠をがたがたと鳴らせていた。
その大部屋は、主城の主であるジキル・ド・クラウンが立ち入り禁止と定めており、臣下である魔族の目にすら触れることがない場所であった。室内に照明は見あたらず、天井がステンドグラスで飾られていたので、月明かりが偏光によって不思議な色合いを表現していた。
室内には人影が二つ認められ、静かに入室したスヴェンソンと朧月夜を出迎えた。一人は初老の男で、似合わぬ口髭を忙しなく指でしごいていた。目は血走っており、些か興奮状態にあるようだと朧月夜は冷静に見て取った。
「遅かったな。そこのお前が、アレの左腕を持ち逃げしたユアノンのスパイとやらか?結局のところパーツを持ち寄ってくれたようで、助かるというものだ」
「その顔・・・・・・ジキル・ド・クラウンに間違いない。ならば、この腕の元となりし結晶体を破壊させて貰う!」
「・・・・・・裏切り者だけあって、生意気を言う。<アラヤシキ>、黙らせろ!」
ジキルは言うと、独り小走りで部屋の隅へと寄った。残されたもう一人、軍装の男が、碧眼に愉悦の光を点らせてスヴェンソンと朧月夜を見比べた。紛うことなき神獣<アラヤシキ>であった。
『殺し損ねた相手に再び巡り逢えるとは。ミスター、それに美しいミズ。今度こそ、死ぬ覚悟は出来ているかい?』
「・・・・・・プレゼントした長旅は如何でしたか?実は、とっておきの転移方陣だったのですが」
『ミズ。私で無ければ生還出来なかったろう。それなりに苦労した。だから・・・・・・今回は、最初から全開だ』
<アラヤシキ>は床を蹴り、スヴェンソンらとの距離を一息に詰めた。抜かれた細剣は正確に朧月夜の顔面を狙っており、肉体的に脆弱な星術士では逃れようもないと思われた。
細剣が命中せんとした瞬間、星力の盾が朧月夜の前面を防護し、轟音と共に凄まじい衝撃が室内を伝った。
『なにッ!?』
スヴェンソンが結界剣をシールド展開したもので、神獣の破滅的な攻撃力と擬体の左腕がもたらした強固な防御力とがぶつかり、結果として朧月夜は無傷で生き残っていた。スヴェンソンに守られた朧月夜の反撃は、至近距離からの氷撃の連弾であった。<アラヤシキ>は星力障壁を構築して朧月夜の星術を受け止めるも、勢いに押されて後ずさった。
<アラヤシキ>がその場で細剣を振り抜き、殺意の塊とでも喩えられる強力な星力が込められた剣衝を繰り出すが、それもスヴェンソンが結界剣で防いで見せた。クナイが作った名剣の見せ場であり、スヴェンソンは神獣の驚異的な攻撃力にも耐えうる結界剣を頼もしく思いつつも、その力の源となっている己が左腕に対し薄気味悪さに近い感情を抱いた。
(この腕は・・・・・・何なんだ?無限とも思える星力を供給し続ける結晶・・・・・・。朧月夜さんとノンノ・ファンタズムが言っていた。禁断の星術実験で生み出された、<始祖擬体>の一部であると。僕は左腕に、そんな大それた代物を抱え込んでしまった。今こうして神獣の攻撃を捌いている内は重宝するかもしれないが、僕は・・・・・・)
「スヴェン!気を抜いては駄目です!」
朧月夜の悲鳴に近い声掛けに、スヴェンソンははっとさせられて視界を鮮明にした。<アラヤシキ>の背から黒い翼が生え、それが独立した意思を持つかのように妖しく蠢くや、中空に大きな星術方陣が起ち上がった。細剣による衝撃波は変わらず放たれ続けていて、結界剣による防御はそれへの対処で手一杯となった。
<アラヤシキ>が星術攻撃を追加してくると判断し、朧月夜はスヴェンソンの結界剣だけでは防ぎきれなかろうと、星術の障壁を準備した。だがそれは見当違いであり、<アラヤシキ>が発動させた星術の効果は、新戦力の召喚であった。
「見たことがない・・・・・・霊獣?」
朧月夜の目に留まったのは、亜獣であるところの幽霊種がより醜悪な鬼面を形成した半透明な煙状の魔獣で、都合四匹が<アラヤシキ>を取り囲む形で出現した。
(いけない!これが霊獣クラスの敵なら、手数の差で窮地へと追い込まれる!)
新たに現れた魔獣は、中空を浮遊してスヴェンソンと朧月夜に迫った。そして、それに呼応して<アラヤシキ>も再び接近を図った。
瞬時に距離を詰めた<アラヤシキ>が細剣を振りかぶるのに合わせ、スヴェンソンが結界剣を前に構えるが、神獣の動作はフェイントに過ぎなかった。<アラヤシキ>の黒翼は軟体動物のように伸びてうねり、先端を鏃状に尖らせた。そこから結界剣を迂回する経路をとり、勢いよく朧月夜へと襲いかかった。当の朧月夜は、幽霊種の亜種と思しき魔獣を標的とし、先ほどまで備えていた障壁の星術を風の刃に作り替えていた。
「オボロさん、避けてッ!」
「きゃッ!?」
朧月夜は咄嗟に身を捩って対処するも、黒翼の刺突で背を抉られた。スヴェンソンは結界剣を展開したまま倒れた朧月夜の側へと駆け寄り、神獣や幽霊種を牽制せんと向き合った。
(左手の防御を緩めず、右手で星術を制御出来れば或いは・・・・・・!)
スヴェンソンは、四対一の状況に追い込まれたことで閃いた、新たな戦術を即実行へと移した。それは、左腕から結界剣へ星力を流し込む過程は維持し、残る全身を駆使して別の星術を起動するというものであった。
<アラヤシキ>はスヴェンソンが操る星力の流れを素早く見抜き、涼しい口調で言い放った。
『無駄だよ、ミスター。擬体の腕から生み出されし星力の質と量ならまだしも、いち魔族が当人のみの力で実現した星術など、威力はたかが知れている』
「・・・・・・どうかな?」
スヴェンソンが星力を開放すると、<アラヤシキ>の召喚した幽霊種が一斉に動きを停止させた。これこそが固有星術・共振の妙技であり、<アラヤシキ>は供とする魔獣の不調を見知って目を細めた。
<アラヤシキ>は立て続けに細剣を振るい、結界剣を二度三度と強襲した。盾型の結界剣は炸裂する衝撃波を凌いで見せるが、直ぐにもスヴェンソンの身体に異常が現れた。まるで全ての内蔵が締め付けられているかのような激しい痛みに襲われ、スヴェンソンは防御姿勢を保ちつつも脂汗を流して苦しんだ。
<アラヤシキ>は、星力の無茶な流れから、スヴェンソンの全身に掛かる負荷へと気付き、今の均衡が長くは保たないものと決めつけた。そもそも<始祖擬体>の力をただの魔族が借用すること自体博打に近い行為であり、加えて固有星術で自身の生命力を多量に消費するものだから、スヴェンソンが長い時間立ち回れよう筈もないというのが<アラヤシキ>の見解であった。
もはやスヴェンソンの肉体が悲鳴を上げていた。それでも共振は継続せざるを得なかったし、<アラヤシキ>から休まることなく繰り出される剣撃は、結界剣で防ぐ他に手がなかった。星力の嵐に蝕まれた身体は限界が近付き、スヴェンソンは咳と共にごぼっと青い血を吐き出した。
(まずい・・・・・・痛みで、意識が・・・・・・)
「これは、如何なる事態だッ!?」
戸惑いの声を上げたのは、スヴェンソンが持つ結晶体を追跡してこの場へと駆けつけた竜騎士ザシュフォードとその部下たちであった。彼らが目にした奇異なるものは、室内を漂う四匹の魔獣であり、そして背に黒色の翼を広げた<アラヤシキ>であった。
驚くザシュフォード隊を叱りつけたのは、部屋の隅で縮こまるジキル・ド・クラウンで、「ザシュフォード!良い所に来た!そこな裏切り者を抹殺し、結晶体を回収せよ!」と口角に泡を噴いて怒鳴った。しかしながら、ザシュフォードは騎士として、魔獣をそのまま捨て置けるような常識は持ち合わせていなかった。騎士の矜持が部下たちへと指図し、動かぬ四匹の幽霊種を討つ道を選んだ。
それでも四匹の正体はただの亜獣ではなく、いずれも<アラヤシキ>が厳選した霊獣であったので、ザシュフォード以下七名の剣をもってしても容易に打倒は出来なかった。そうしている内に<アラヤシキ>が細剣を振るって闖入者の排除へと取り掛かった。
『失せよ』
空気を裂く剣衝がザシュフォード隊に襲いかかり、星力による防御が遅れた三名がその場で斬殺された。ザシュフォードは、敵対した黒翼の騎士の力量を高く読み、残る三名の部下に気を抜かぬよう警戒を促した。
「・・・・・・貴様は何奴だ?ここが、ジーザスシティの主城と知っての狼藉か!」
「そいつは・・・・・・神獣だ。ジキル・ド・クラウンと手を組む、最凶最悪の魔獣だ」
ザシュフォードの問いに答えたのは質問された<アラヤシキ>ではなく、傍らでうずくまりながらも結界剣を構え続けるスヴェンソンであった。それを聞いたザシュフォードや騎士たちの顔に狼狽の色が広がり、対照的にジキル・ド・クラウンの表情からは人間味のようなものが無くなった。
『ジキル・ド・クラウン。この者らも、一緒に始末して良いのだね?』
「・・・・・・仕方あるまい。やるからには、一人も逃すな。グリンウェルの二の舞は御免だぞ」
<アラヤシキ>は黙って頷いた。ここで竜騎士団副団長の名が出されたことで、ザシュフォードは動揺を深めた。神獣と称されし眼前の騎士がジキル・ド・クラウンと何事か謀ってグリンウェルを害したものかと考えるだに、ザシュフォードの単純な頭脳は混乱した。<アラヤシキ>はそんな隙を逃すことなく、細剣を前に突き出して前進した。
ザシュフォードは、向かって来る<アラヤシキ>のあまりの速度に回避が間に合わないと見切り、星力を剣に集中して受け止めんとした。その剣が<アラヤシキ>の突進突きに触れた瞬間、爆発でも起きたかのような大いなる衝撃を浴びて、ザシュフォードは派手に吹き飛ばされた。そのまま壁に激突し、建材をも破壊した。
「隊長!?」
ザシュフォードの部下たちは剣を抜いたままの姿勢で、桁違いの攻撃力を見せつける<アラヤシキ>に見入っていた。
「・・・・・・助けを、呼べ・・・・・・」
崩落した壁の瓦礫に埋もれたままの体勢でザシュフォードがそう指示を出すが、部下の竜騎士たちが部屋から脱出しようとするや、<アラヤシキ>がそれを上回る速度で扉の前へ回り込んだ。
『ここから逃げることは出来ない。全員、死んで貰うよ?』
「うわああああああああッ!」
竜騎士の一人が雄叫びを上げて斬り掛かるも、<アラヤシキ>の細剣の一振りで首が胴から離れた。青い血液を迸らせ、頭部を失った騎士が床に倒れた。残る二人も剣を構えて戦意こそ窺わせるが、血の気を失った顔が戦力の不足を如実に物語っていた。
スヴェンソンはザシュフォードらが立ち回っている時間を利用して、痛みに耐えながらも朧月夜の治療を試みていた。朧月夜の長衣は裂かれた背中部分が血で真っ赤に染まっており、決して傷が浅くないことを証明していた。
(オボロさん・・・・・・・せめて、傷だけでも塞いであげないと!)
スヴェンソンは、己が朧月夜の星術で命を繋ぎ止めている経緯もあって、この場で恩人を見捨てることだけはしないと心に決めていた。だが一方で、ザシュフォード隊の残る騎士が倒されれば、神獣は自分たちを放置してはおくまいという最悪の事態も想定していた。
<アラヤシキ>が無造作に細剣を振るった。竜騎士の二人はそれを必死に避けようと動き回るのだが、程なくして暴力的な攻撃に晒され、無惨にも全身を斬り裂かれた。
「<アラヤシキ>!早く、そこの二人にも止めを」
ジキル・ド・クラウンが性急さを窺わせる口振りで促し、血染めの床に平然と立つ<アラヤシキ>は、結界剣を構えたままのスヴェンソンへと視線を向けた。内には肉体が不調を訴えており、外には神獣の脅威が差し迫った。スヴェンソンは絶体絶命のピンチを意識し、何か一発逆転の策はないものかと、己が左腕の使い道を懸命に模索した。
ふと、<アラヤシキ>の碧眼が何の変哲もない部屋の片隅を映した。
『・・・・・・転移』
<アラヤシキ>が呟きを発するのとほぼ同時に、部屋の隅から星力の青白い光が溢れ出し、その場に居合わせた全員の視界を一気に眩惑した。やがてスヴェンソンは、光が晴れたその空間に、桃色の長髪を背に垂らした女と、全身が赤黒い毛に覆われた一本角を持つ青年を発見することになる。
(・・・・・・転移?あの二人は、一体誰なんだ・・・・・・?)
ジキル・ド・クラウンも狐につままれたような顔をしてその光景を眺めており、ただ一人<アラヤシキ>だけが、突如出現した二人組の正体を見知っているのかじっと睨みつけていた。
「・・・・・・西域にいたかと思えば、今度はどこなの?」
桃色の髪をした女が、事情を飲み込めぬといった不愉快さを纏う声音で、傍らの亜人然とした青年へ訊ねた。女の腰には鞘に収められた剣が差してあり、武人であることは間違いないように思われた。一本角の青年は言い訳をするようにして女からの問いに答えた。
『ノンノ・ファンタズムの警告に従い、東域のジーザスシティへと跳んだ。緊急事態ということは承知していたが・・・・・・まさか、神獣<アラヤシキ>と遭遇することになるとは、想像だにしていなかった』
「神獣ですって?・・・・・・どいつがそうなの?」
桃色の髪の女は間髪入れずに剣を抜き、室内で息をしている面子を等分に眺めやった。途中、女は四匹の幽霊種を認めるやきつく睨みつけたが、表立っては何ら行動を起こさなかった。一本角の青年は無言で金髪の騎士を指さした。
<アラヤシキ>はその仕草に反応を示し、迫力のある笑みを浮かべて一本角の青年へと語りかけた。
『<ファンシー>。東域から立ち去らねば処分すると、かつて忠告した筈だね?私は労せずして、君の如き一匹を葬ることが出来るのだよ』
『・・・・・・<アラヤシキ>。これなるは、南域で<アガレス>を討伐せし特定危険敵性体ファラ・アウローラ。そう簡単に排除は出来ぬだろう』
『ほう。しおらしく姿を消したかと思えば、余所に用心棒を頼んで私に対抗しようと?笑止な話だよ』
『今回の事態は既にブレインネットワークに流れている。私がそれを知ることが出来たのも、この地に息づく盟友の御陰だ。如何にお前の力が強大であろうと、易々と<始祖擬体>など生み出させはせぬ』
<ファンシー>は<アラヤシキ>の売り言葉に買い言葉で応じた。ファラ・アウローラ・ハウはそんな掛け合いをつまらなそうに観察し、空いた左手で桃色の髪を梳いた。そして右手で握る火星剣には、しなやかで強靭な星力を這わせた。
「見たところ、第一ラウンドは神獣の圧勝という感じね。青い血で濡らされた戦場なんてぞっとしないけれど、この際文句を言っても始まらないわ」
ファラが戦闘への意欲を語るもので、スヴェンソンはこの飛び入りの二人組が、魔獣と対立する側にある者たちなのだと信じた。そうであれば現在の劣勢を覆す為に自分も改めて参戦を図るべきであると、結界剣を握る手に力を込めた。




