カチカチ山のタヌ子さん
昔々、ある山にお爺さんとお婆さんが居ました。お爺さんは毎日畑作をしていました。しかし、畑の野菜が毎日盗まれるようなり、困って居ました。そこでお爺さんは罠を畑に仕掛けました。すると、盗もうとしていた野菜と一緒に、地面まである長さの鮮血のような紅蓮の赤髪の美女が罠に引っかかっていました。
「犯人はお前か!」
「えへへへ。私タヌ子って言います。よろしくね!」
「ふざけたやつだ!」
お爺さんは、タヌ子を縄で縛り、家まで連れて帰り、台所の納戸に閉じ込めてしまいました。
「反省するまでしばらくこの中に入っていろ!」
そういうとお爺さんはまた畑作に向かいました。
タヌ子は気の優しいお婆さんに助けを求めました。
「反省ししてます!これからはきちんとやります!ここから出して下さい!」
「本当にそう思ってるの?」
「本当です!反省の気持ちとして家の手伝いをします。」
「本当?手伝ってくれるの?じゃあ助けてあげましょう。」
お婆さんはタヌ子を何度から出し、縄を解いて上げました。するとタヌ子はお婆さんの首を長い爪で掻き切ってしまいました。そしてタヌ子は何事もなかったかのように家の中の物を物色して盗んで山に帰っていきました。
しばらくするとお爺さんが帰ってきて血だらけのお婆さんを見てびっくりしました。お爺さんは慌ててお婆さんとお医者さんの所へ行きました。お婆さんは命には別状がないものの二度と声が出ない体になってしまいました。
そんなお婆さんをお見舞いに孫の宇鷺がやってきました。
「お爺さん、一体何があったんだい?」
「タヌ子という紅蓮の赤髪の女にやられたんだ!しかも家財まで盗んで行きおった!」
「その女生かしては置けないな、おばあちゃんの仇討ちは僕が引き受けた!」
宇鷺は山に出かけ、タヌ子を見つけ出しました。
「君がタヌ子ちゃんだね。」
「そうよ。あなたはだあれ?」
「僕は宇鷺。君に珍しいプレゼントをあげるよ。」
「プレゼントってなぁに?」
「贈り物の事だよ。僕は帰国子女なんだ。外国から連れてきた珍しい動物をあげるよ。」
宇鷺は檻に入った獣を見せました。
「まぁ!大きな猫ちゃん!なんて愛くるしいのかしら!」
「サーバルという動物なんだ。檻から出してごらん!!」
宇鷺は離れた所からそう叫びました。
「おーよちよち。おいで~!!」
タヌ子が檻を開けた瞬間サーバルがタヌ子に襲いかかりました。
「きゃあ!!!」
サーバルはタヌ子の顔を何度も何度もひっかき回した後、タヌ子の顔を蹴り飛ばして逃げて行きました。
「傷があああああ!!傷があああ!!私の美しい顔に傷があああ!!!」
「どうやらサーバルは君には懐かなかったみたいだね。」
次の日、宇鷺はまたタヌ子の元へ訪れました。
「タヌ子ちゃん。昨日は悪かったね。昨日あげたのは肉食獣で凶暴な性格だったんだよ。今度はもっと大人しくて大きい動物をプレゼントに持ってきたよ。」
「本当?」
「本当だとも!さぁおいで、ゴリラくん。」
そう呼ばれると茂みの陰からゴリラが出てきました。ゴリラは大人しくて宇鷺になついている様子でした。
「本当ね!大人しいわ!おっきいお猿さんみたい!」
「ゴリラは草食性の強い雑食だから大人しい性格なんだよ。君にあげるよ。」
「よろしくね!ゴリラくん!」
タヌ子がゴリラに近づくとゴリラはタヌ子の顔面に石を投げつけました。
「いった~いん!!!!顔は女の命なのに~!!!」
さらにゴリラはタヌ子にジャイアントスイングをして振り回した。
「やめて!やめて!やめて!やめて!やめて!やめてー!!!」
そして、ゴリラはジャイアントスイングしながら手を放しました。タヌ子は遠心力で吹っ飛んでいき、そばにあった岩に顔面から激突し、ずり落ちてしまいました。
「いやん!私の完璧な美貌が壊された~!!!」
「ゴリラくんはどうやら君には懐かないようだね。」
実は宇鷺は、ゴリラがタヌ子を見たら攻撃するよう訓練していたのでした。
また、次の日、宇鷺はまたタヌ子の元へ訪れました。
「またなにか変なものを持ってきたんじゃないでしょうね!」
「もう動物のプレゼントは止めたよ。それより、これから隣の山へハイキングに行かないかい?」
「ハイキングってなぁに?」
「外国の文化で徒歩旅行の事だよ。お弁当も持っているし一緒にいかないかい!」
「お弁当!行く行く!行くわ!一緒に行きましょう!」
その隣山を二人で登っている途中、宇鷺はタヌ子の背後に回り火打ち石をカチカチと打ちました。
「あら?カチカチと聞こえたけれど、何の音かしら?」
「あぁ…。ここはカチカチ山と言ってカチカチという謎の音が聞こえるんだ。」
「へえ。そうなの。」
しばらくすると、タヌ子の燃えるような紅蓮の赤髪が本当にボーボーと燃え上がりました。
「きゃあ!あつい!あつい!あつい!あつい!あつい!あつい!」
タヌ子は燃えるような赤い髪の毛をゴォーと本当に燃やして走り回りました。
「あーん!!!私の命より大切な長い赤髪があああああああああああああああ!!!!」
タヌ子の髪の毛は真っ黒に燃え尽きてしまい、タヌ子はショックで泣き崩れて気絶してしまいました。
次の日、宇鷺は唐辛子で作ったパックを持ってタヌ子の所に行きました。タヌ子はショックで寝込んでいました。
「タヌ子ちゃん。パックを持ってきたよ。」
「パックってなあに?」
「海外の文化で美容の為に顔にぬる化粧品だよ。」
「そうなの?塗ってくれるかしら?」
「もちろんだよ!」
そういって宇鷺はタヌ子の顔に満遍なく唐辛子のクリームを塗りつけました。
「きゃあああああああああああああああ!!!!ひりひりする~!」
「どうやら日本人の肌には合わなかったようだね。」
タヌ子の顔は真っ赤にはれ上がってしまいました。
そしてまた次の日。今度は気分を変えて二人で海に出かけていました。
「今度は釣りをしようよ!船はもう用意してある!」
そこには丸太でできた小さい船と粘土でできた大きい船がありました。
「私こっちの大きい船に乗りたいわ!」
「そういうと思ったよ。僕はこっち小さい船にのる。」
「一緒に乗りましょうよ。」
「いや、競争したいから別々に乗ろう。」
「分かったわ!じゃあ行きましょう!」
そういって二人は公海に出かけました。しかし、しばらくすると粘土で作った船は溶けて沈んでいくのでした。
「きゃあ!船に穴でも開いてたのかしら!?助けて!」
「断る!お婆さんの声を奪った償いを受けて貰う。」
そう言うと宇鷺は持っていたオールでタヌ子の顔を叩きつけ海中にしずめました。宇鷺は必死に浮き上がろうをとするタヌ子の顔をバンバン叩き、海中に沈めました。そうするうちにタヌ子は浮き上がってこなくなりこなくなりおぼれ死んでしまいました。
「仇は討ったよ。お婆さん。」
その後、タヌ子の墓が建てられ、炎髪のタヌ子の墓と呼ばれるようになりましたとさ。めでたしめでたし。