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第14話「むしさん」

正直、山舐めてたわ……。

足一本、杖一本でなんとかなるものじゃなかった。

登山家がひょいひょいとストックを使ってデカい山を登っていくのをTVで見てたもんだから、こんな平坦な山くらい片足で行けちゃうんじゃないか、と高を括っていた。


これ山っていうか、殆ど岩じゃねえか! 

岩と岩の間に土が混じり、そこから木が生えているので山のように見えているが、実際は岩がいくつも積み重なって出来ている。 その岩の集合体を登ろうとするなら、山登りというよりは崖登り、また岩移りで移動しなければならない。超危険地帯だった。 しかも、木と木の間には必ず岩があるので脚を滑らせやすい。

安全な道なんて殆ど無いので、俺は何度も必死に木と木にぶつかりながら飛びついていた。もちろん、間違って木から滑り落ちたら、タダではすまない。

最初、四つん這いになって行こうとも思ったが、手を岩にくっつけた瞬間、岩と土の隙間からムカデの足が全部ミミズになってるようなうねうね系の虫が飛び出してきた。もう無理、無理、生理的に受け付けない。手使えない。


まぁ、そんな事を繰り返してたらね。 体力も消耗するよな。でもまぁ、こんなに繰り返したんだから、よくできたほうだよな。 帰ってきたルチアに口裏合わせてもらえばいいしな……。




俺は上出来だと自分を慰めるために来た道を見ようと下を見た。

そう、岩と木の斜面だ。

岩の代わりに雪でも積もっていたらスキープレイヤーは喜ぶだろうな。ハハッ。

頼む!誰か俺をここから降ろして! うん、もちろん、助けなんて来ないよね……。

そもそも、さっきから人影すら見かけない。今考えたら、おかしいと思ったがさっきまでは木に飛び移る事で頭がいっぱいだったんだから気づかなくても仕方がない。

日本語で登山道はこっちです。とご丁寧に書かれてある矢印型の回転式看板がこの岩場を挿していたというのにどうしてだろうなぁ……?


細工したバカ野郎はどこのどいつだああああああぁぁぁ!!!!!!

腹いせに木をぶん殴ると数十匹の毛虫が降ってきた。身体中を振って振って大多数は蹴散らしたが、何匹かが服の中に入ったままだ。

うにょうにょと身体を這う感覚と棘が刺さっていく感覚に同時に襲われて、俺は服を脱ぎ捨て斜め前の木に飛び移った。

「キャアアアアアアアアアア!!!!!!!!」俺の悲鳴だ。

飛び移った時の衝撃でまた降ってきた。そもそも、これが毛虫なのかどうかも分からない。刺々しいというよりは髪の毛の塊が蠢いているみたいで気持ち悪い。ということは毛虫だろうが、毛虫じゃなかろうがどちらにせよ気持ち悪いという事だ。

ブンブン身体を振り回すと、上着を着ていないおかげか殆どの毛虫は除けることが出来た。 が、ズボンの裾からうにょうにょと這い上がってくる。



「イヤァアアァアアアアアア!!!!!!!」もちろん、俺の悲鳴だ。

気がついたときにはズボンを降ろして、また別の木に飛び退いていた。 そうすると、また毛虫が俺めがけて降ってくる。何度も何度もこんなのを繰り返した。





そして、気が付くと俺は何にも履いていなかった。ジャングルの王ですら腰布を巻いて、股間くらいは隠している。こんな所を見られるくらいなら、いっそ死んだほうがマシなんじゃ……

まぁ、見られても死ぬだろうけど、社会的に。 


「君はいい人だね!」


「ひっ!?」


突然、気配もなく、陽気そうな女の声が真後ろから聞こえてきた。

誰にも見つからないように辺りには注意していたにも関わらずだ。言っている意味が分からないが、とにかく驚いて顔を声がした方に向けた。向けてしまった。見てしまった。

唇の端と端が鼻にくっつきそうなくらい、笑っていた。いや、くっついているのかもしれない。それほど、口角を上げているというのに目が見開かれている。しかし、瞳はない。真っ白な眼球が俺を見ている。

赤いワンピースが血のよ……いや、これ所々白……


「全く価値のないゴミだって事がわかったんだね自分が役に立つ事がわかったんだね虫さんの役にたとうなんていいこころがけだね生きてるあいだにごめんなさいがわかってよかったねしんだあとのまずいにくじゃむしさんまんぞくしないかもだもんねいきながらたべてもらおうなんてひとみたことなかったよわたしこいままでしんでるゴミしかあげれなかったからきみみたいなひとがいるってわかってよかったいままでのひとみんなごみのくせにいきたがるんだもんほんらいごみなのにごはんになれるちゃんすなのにどうしてみんなわからないのかなあっごみだからかなわたしはむしさんにごはんあげなきゃいけないからがまんしてるのにみんながしんでくれないからごはんになれないんだよむしさんごめんなさいみんなをだいひょうしてあやまりますほんとうにごめんなさいごみのみんなもきみみたいだったらよかったのにね!!!!!!!!!!!!!!」


女の声をした化物みたいなやつが放った言葉の意味が、もう一度口を開くまで何て言ったのか、わからなかった、わかったあとでも理解が追いつく事は決して無かった。

「早く、虫さんに食べてもらえるといいね!!!!」

そう言い残して、踵を返し俺のいる方とは逆の道……だからおそらく登山道へ向かっていった。

漏らした小便が内ももに引っ掛かって気持ち悪い。

伝えないとやばいだろ……これ。



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